「お引越し」「夏の庭」4Kリマスター版が劇場公開 (original) (raw)
相米慎二の監督作品「お引越し」「夏の庭 The Friends」の4Kリマスター版が、12月27日よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、新宿武蔵野館ほか全国で順次公開される。配給はビターズ・エンド。
1993年に公開された「お引越し」は、両親の別居から家族の危機に揺れる小学6年生の少女・レンコを描いた作品。父ケンイチが家を出て、母ナズナとの2人暮らしが始まったレンコは、 始めは家が2つできたと喜ぶが、次第に自身を取り巻く変化の大きさに気付かされていく。レンコを本作がデビューとなった田畑智子、ケンイチを中井貴一、ナズナを桜田淳子が演じる。
第46回カンヌ国際映画祭では、ある視点部門に選出された。リマスター版は2023年、第80回ヴェネツィア国際映画祭クラシック部門に出品され、最優秀復元映画賞を受賞。その後フランスで劇場公開されるや、当初の数館から50館以上に公開拡大されたほか、台湾やアメリカ、オランダ、スイスでも上映された。
一方の1994年に公開された「夏の庭 The Friends」は、少年たちがある老人との交流から「死」と「生」を考えさせられていく、ひと夏の成長譚。湯本香樹実の同名小説を原作に、三國連太郎、坂田直樹、王泰貴、牧野憲一、戸田菜穂、笑福亭鶴瓶らが出演した。こちらのリマスター版は相米の特集が組まれた夏季の香港国際映画祭にてワールドプレミア上映を果たしている。
「お引越し」の田畑と中井、「夏の庭 The Friends」戸田、両作を含む多数の相米作品に出演した笑福亭鶴瓶からは公開決定に寄せてコメントが到着。全文は下記に掲載した。
田畑智子(「お引越し」レンコ役)コメント
「お引越し」は私自身のデビュー作であり、思い入れしかない、宝物のような作品です。
小学生だった私は、まさか30年経ってもまだこの仕事をしているなんて思ってもいませんでした。
相米監督に出会って私の人生が変わった。あの夏はそのぐらいの出来事でした。
それが今、またスクリーンで観られる!
みなさんがどういう感想を持ってくださるのか、すごく興味が湧きます。
改めて観る方も、初めての方も、現代だからこそ響くところがきっとあるし、相米監督のつくる世界をいろんな方に楽しんでもらいたいです。
中井貴一(「お引越し」ケンイチ役)コメント
相米監督との出会いは、人見知り合戦からスタート。お互い、人見知りで、「東京上空いらっしゃいませ」の顔合わせが進まず、トイレから帰って来た相米監督が、突然、「中井、ゴルフやる? ゴルフ行こう」と。
その一週間後、ゴルフをラウンドしながら、打ち合わせ、顔合わせとあいなった。そこからの、お付き合い。
「お引越し」は、一ヶ月、京都ロケ。しかも、お盆時期。インバウンドの盛んな今ほどではないが、実際の大文字山をバックに撮影などとは、車量、人の数からして正気の沙汰ではない。
それを、平然と実行するのが、相米組の凄さ。
まだまだ、話すエピソードの尽きぬ、思い出の映画である。
最も敬愛し、最高の友人でもあった相米慎二の凄さを、再び体感してほしい。
笑福亭鶴瓶(「お引越し」木目米役、「夏の庭 The Friends」葬儀屋役)コメント
相米監督には「東京上空いらっしゃいませ」からずっと出演させてもらったのですが、その時は別に何とも思わなかったですね。ただウマが合って、僕と相米監督と安田プロデューサーと中井貴一で“あほの会”というのを作って月に一回ご飯食べに行ったりしてましたね。
いま番組で色々な監督と出会う機会が多いのですが、“相米さんはどうやった”とずっと聞きはるんですよね。若い監督が相米慎二の事を神さんみたいに尊敬しててそんな監督の作品にずっと出してもうてた僕までもがなんか羨ましがられて…。改めてすごい人やったんやなと実感してます。
ただ人間的には無茶苦茶ですよ。それでも人に好かれていて不思議な人ですね。
あの偉大さを今ようやくわかったというか、ただの友達と思ってましたがすばらしい監督ですね。
戸田菜穂(「夏の庭 The Friends」近藤夏子役)コメント
私の映画デビュー作は、相米慎二監督の「夏の庭 The Friends」で、三國連太郎さん淡島千景さんの孫の役だったと話す時、とてもとても誇らしい気持ちになります。
「わあ、虹きれい」このセリフ、何度やってもオッケーがもらえず、「ダメ」「ダメ」「違う」と言われ続けました。
静まり返る現場で一人ぼっち、頼れるのは自分しかいない。これがプロの厳しさだと教わりました。本当に虹がきれいだと思ってセリフが言えるまで、延々と繰り返されたこの尊い経験がいつも私の根底にあります。
あの夏の神戸、小さな家、庭、コスモス。今はもう会えない相米監督。。。
あの少年たちはいくつになったのかなあ。
あの夏に行ける! もう一度映画館で!
試写室から出てきた相米監督の目には光るものがあり、それはとても優しい目でした。