今敏とのアニメ作りを本田雄・小西賢一・安藤雅司が回想 (original) (raw)

第3回新潟国際アニメーション映画祭のレトロスペクティブ特集にて、本日3月16日に新潟のシネ・ウインドで今敏の監督作「千年女優」が上映。彼と仕事をともにしてきたアニメーターの本田雄、小西賢一、安藤雅司がトークに登壇した。

「千年女優」では、かつて一世を風靡し姿を消した大女優・藤原千代子が、30年ぶりにインタビューに応じ、現実と虚構を交じえながら半生を語るさまが描かれる。本田がキャラクターデザイン・共同作画監督を担い、小西は原画と共同作画監督で参加した。

今に対する印象を問われた本田は「マンガ家として知っていて『ワールドアパートメントホラー』の絵が好きだった。一緒に仕事をすることになったとき、自分の机にわかりやすくその単行本を置いていたら、隣の席の今さんから『なんの嫌がらせなの?』と聞かれた。そこから飲みにいくようになったのが初期ですね」と振り返る。小西は「『機動警察パトレイバー』で存在を知りました」と述べ、「パプリカ」のキャラクターデザイン・作画監督を務めた安藤は「マンガ家として知っていて、絵のうまい方というイメージでした」と口にした。

MCのアニメ評論家・藤津亮太から“絵が描ける監督との付き合い方”を聞かれた本田は「今さんは『ある程度自分でやる』というスタンスでしたね。レイアウトは全部直すという感じでやってくれた。勉強になったんですが、そのスピードに追い付くのが大変でした」と話す。続けて「『千年女優』の劇中に出てくる映画のポスターの絵面とかは、いつの間にかどんどんできあがっている。レイアウトや原画のチェックをしたあとに、家で作成していたと思うんです。点数がすごいんですが、デジタルで着彩し始めた頃だったから、すごく楽しんでやっていたんだろうな」と分析した。

小西は「(キャラクターデザインなどで参加した)『東京ゴッドファーザーズ』のときは、すでに今さんのイメージイラストがあったんですが、もうセル調で色が付いてて『俺は何をやればいいんだ?』と(笑)。そう思いながら、そのイラストをもとにキャラクター表を作りました」と裏話を披露する。安藤は「『パプリカ』の前にテレビアニメ『妄想代理人』に携わったのですが、最初にシナリオを読ませてもらって、ファーストインプレッションを絵にしたものを面白がってもらえたんです。その流れで2作ともけっこう自由にやらせてもらいました」と語った。

今が手がける作品の特徴に話題が及ぶと、本田は「画力があるのと、(今がアシスタントとして付いていた)大友克洋さんに絵の整え方が似ている。ああいうまとめ方をする方はアニメの現場でそんなにいない。最低限の線の量で効果的な画面を作るのにすごく長けている人でした」と話す。続けて「今さんはアニメでは意外と『ガンダム』が好き」と言うと、安藤が「『パプリカ』の頃に、みんなで集まってお酒を飲みながら『ガンダム』の劇場版の上映会“ガンダムナイト”をやりました」と懐かしみ、本田も「『千年女優』のときも夜中から朝までぶっ通しでやりました。今さんは『ここでこのセリフがくる』と先に言っちゃうんです」とほほえんだ。

今の作品で印象に残っていることを問われると、本田は「瓦礫の描き方がすごくうまいんですよね。『AKIRA』でも描いていたのですが、もとが何だったのかわかる瓦礫にいつも感心しますね。真似したいけどできない」としみじみ語る。安藤は「『PERFECT BLUE』を観たときはショックを受けました。演出ではなく、カット割りやシーンのつなげ方で“ケレン”を出していくのが衝撃的でした」と述懐した。

最後に「今敏がアニメ業界に与えたものは?」という質問が投げかけられた。本田は「よくも悪くも、すごくお手本になるものを残されたなと。もし今さんの作品がなかったら、もっとこの業界はゆるかったかもしれない(笑)。ひざに石を置かれたような感じ」と表現し、小西は「今さんと一緒にやることで画力に影響を受けて、自分も手に入れるぞという意識が強くなりました。それが自分の中ではジブリ(での経験)とともに基礎になっています」と伝える。安藤は「レイアウトの影響は大きいですよね。業界にある程度の足枷を作ったなと(笑)。存命だったら、あの演出力と画力で何を作っていたのか気になります」と思いを馳せ、イベントを締めくくった。

第3回新潟国際アニメーション映画祭は、3月20日まで新潟市民プラザほかで開催中。