「BAUS」甫木元空、青山真治から引き継いだもの語る (original) (raw)
映画「BAUS 映画から船出した映画館」より、監督・脚本を担った甫木元空(Bialystocks)のインタビューが到着した。
東京・吉祥寺の文化的な拠点として親しまれつつも2014年に閉館した吉祥寺バウスシアター。本作では1925年に吉祥寺に初めてできた映画館・井の頭会館まで歴史をさかのぼり、時代に翻弄されながらも劇場を守り続け、娯楽を届けた人々の長い道のりが描かれる。主演の染谷将太が、成り行きで井の頭会館に勤めることになる主人公サネオを演じたほか、活動弁士の兄ハジメに峯田和伸(銀杏BOYZ)、サネオの妻ハマに夏帆が扮した。
本作は、青山真治の企画を甫木元が引き継ぐ形で制作された。青山が書いた脚本を初めて読んだ際のことを、甫木元は「大火で燃えてしまった『吉祥寺』の周辺に住んでいた人々が、別の場所に新たに『吉祥寺』という町を作った、ストレンジャーたちの物語でした。人々が流れ着いた先で、鉄道が通ったり戦争が起きたり、その中に映画というものもあって。それらが平等に描かれていることと、町そのものを描こうとしていることが面白いなと思いました」と振り返る。
脚本を執筆するにあたり、甫木元は「『青山さんならこうするだろう』という想像や中途半端に意図を汲み取っても意味がないと思ったので、自分はどのような側面から90年間のパッチワークのような話に1本の流れを作ることができるのかというところから考えていきました」と述懐。時空を超えて登場するキャラクターに関しては「この映画は『老人の回想録』です。記憶というものはあいまいだし、嘘か本当かわからない、いい加減さがあります」と話し、「老人の記憶のあいまいさを平成生まれの自分がはりぼての昭和史を描くことと重ねてみたらどうだろうと思いました」と語った。
撮影を担当したのは、「はだかのゆめ」「ナミビアの砂漠」の米倉伸。甫木元は「活動写真に感動する兄弟 / MEGで映画に感動する少年タクオとか、時代や場所が違っても、アクションでつなぐ・反復することで見えてくるものがあると思っていたので、動きも含めて細かく打ち合わせをしました」と回想する。また大友良英が手がけた音楽は、甫木元が青山から聞いていた“ニューオリンズの葬儀”というイメージをもとに、ブルースミュージシャンであるドクター・ジョンの映像なども参考にしたという。
甫木元は本作を通して「最近の映画館はノイズや摩擦のようなものが起きにくい場所になっていますよね。列になってチケットを買うとか、開映を待つとか、そういった余白のような時間も減ってしまっているなと感じました」とコメント。そして「吉祥寺バウスシアターは、落語も演劇もライブもやっている文化の交差点で、みんな映画館だと思っているけれど、簡単には定義できないような場所。そんなわからなさも含めて、数少ないあいまいで貴重な場所だったんだなと思います」と表現した。
「BAUS 映画から船出した映画館」は全国で公開中。
※記事初出時、人物名に誤りがありました。お詫びして訂正いたします
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