入江悠・大友啓史・品川ヒロシがハマる「イコライザー THE FINAL」とは?最終章は9秒で悪を完全抹消! - 映画ナタリー 特集・インタビュー (original) (raw)
元CIAトップエージェント、ロバート・マッコールの暗躍を描いた「イコライザー」シリーズ。その3作目にして最終章となる「イコライザー THE FINAL」が10月6日に全国で公開される。本作ではアメリカ・ボストンから遠く離れたイタリアに舞台を移し、シリーズ最大のスケールで物語が展開。マッコールの怒れる正義が一線を越え、衝撃のクライマックスを迎える。
デンゼル・ワシントンがマッコールを演じたほか、本作で初登場となった謎のCIA捜査官エマ・コリンズ役でダコタ・ファニングが出演。監督はシリーズ全作を手がけてきたアントワーン・フークアが務めた。
映画ナタリーでは、ひと足先に本作を鑑賞した入江悠、大友啓史、品川ヒロシのコメントを掲載。さらに映画評論家・森直人によるレビューで、進化し続ける本シリーズと主人公マッコールの魅力に迫る。
文 / 森直人(レビュー)
映画評論家・森直人 レビュー
大人の成熟と洗練で魅せる、デンゼル・ワシントン最大の当たり役
デンゼル・ワシントン演じるロバート・マッコール。
やっぱり最高だ、ロバート・マッコール! CIAトップエージェントを引退し、いまは穏やかな市民生活を送る静かなる男。しかし、ひとたび理不尽な抑圧を加える“悪”に出会うと、彼の中の“正義”が発動し、ケタ外れに高性能な戦闘能力で瞬く間に成敗する──。名優デンゼル・ワシントンの最大の当たり役(彼が同じキャラクターを続けて演じたのはこれが唯一)となったマッコールの魅力は、大人の成熟と洗練にある。テーブルの上の食器やナプキンをきっちり整えねば落ち着かぬほど几帳面で、かつ物腰は柔らか。そんな紳士が殺人マシーンとして爆発した時のギャップ。誰よりもエレガントな佇まいの“闇の仕置人”が、またスクリーンに帰ってきた。
シリーズ前二作同様、アントワーン・フークア監督が手掛ける「イコライザー THE FINAL」は三作目にして完結編となる。元々は1985年~1989年の同名テレビシリーズ(邦題「ザ・シークレット・ハンター」)が「イコライザー」のベース。だが映画版は独自に再創造し、主人公像には人格者として名高いデンゼル・ワシントン自身の持ち味が色濃く反映された。そんなロバート・マッコールの履歴書を簡単におさらいしてみよう。
「イコライザー THE FINAL」メイキング写真。左からデンゼル・ワシントン、アントワーン・フークア。
「イコライザー THE FINAL」場面写真
舞台は米・ボストンからイタリアへ!進化を続けるシリーズの魅力
2014年の「イコライザー」では、ボストン郊外のホームセンターに昼間は勤務。夜は近所のダイナーに出向き、亡き妻に薦められた「死ぬまでに読むべき100冊」のリストに沿って、紅茶を飲みながら小説を読み進める。彼が制裁するのはロシアン・マフィアの売春組織だ。武器を携帯せず、その場にあるものを即興的に活用して秒殺。パズルでも組み立てるように展開する、ミニマム志向(=思考)の頭脳的なアクションデザインは華麗な衝撃をもたらした。
2018年の「イコライザー2」では表の職業はタクシー運転手。CIA時代の仲間が惨殺された事件をきっかけに、皮肉な相手との対決に乗り出す。作風の基本線はそのままに、趣向をそれぞれ変えてくるのがシリーズの特徴だ。
「イコライザー THE FINAL」場面写真
「イコライザー THE FINAL」場面写真
今回は明確にスケールアップし、全編の舞台をイタリアに移した。まずシチリアの葡萄園で瀕死の大怪我を負ったマッコールは、アマルフィ海岸沿いの田舎町に流れ着き手厚い介抱を受ける。このコミュニティの心優しき住人たちは、よそ者のマッコールを温かく迎えてくれた。しかし不穏な勢力が目につく。暴力で人々を恐怖に陥れるマフィアの存在だ。ナポリやローマも含む美しいロケーションの裏で広がる血塗られた世界。「ゴモラ」(2008年)や「シチリアーノ 裏切りの美学」(2019年)などのギャング映画にマッコールが迷い込んだような趣もある。
「イコライザー THE FINAL」場面写真
マッコールの宿業と内省…そして怒りが一線を越える!
本当はおのれの牙を剥くことは避けたいマッコールだ。しかし怒りが一線を越えた時、苛烈なアクションが火を噴く。「イコライザー」シリーズは、法や警察が介入できない“悪”に私刑執行を下す──そんなヴィジランテ・ムービー(自警映画)の派生形や応用形に属するが、しかしマッコールは積極的な暴力の行使者ではない。前作「イコライザー2」でも“正義”への懐疑という批評的視座が見られたが、マッコールは「血を血で洗う」戦いへと踏み込む時、自らの危険な闇と向き合うことを余儀なくされる。今回特に見られる彼の宿業や内省は、9.11以降のアメリカという国の揺らぎと重なるのが興味深い。彼が理想とする世界のイコライズ(平衡化)とは、“正義”の鉄槌を下すことではなく、負の連鎖を終わらせることなのだ。
また今回、マッコールと秘かに連絡を取り合い、物語のキーパーソンとなるCIA捜査官の新人エマ・コリンズをダコタ・ファニングが演じる。彼女が9歳の時に出演したトニー・スコット監督の「マイ・ボディガード」(2004年)以来、デンゼル・ワシントンとは19年ぶりの共演という感涙の展開! そして従来のマッコールは、19秒で相手を完全抹消することで知られていたが、今回は「9秒で終わらせる」と宣告。よりシャープ&ハイボルテージに、活劇の愉楽もレベル更新だ。
左からエマ・コリンズ役のダコタ・ファニング、ロバート・マッコール役のデンゼル・ワシントン。
「イコライザー」愛あふれるコメントが到着!
※五十音順で掲載
入江悠
大好きな「イコライザー」シリーズが帰ってきた。
故郷を離れてシチリアの地で“寅さん”化したデンゼル・ワシントンが、“健さん”のように耐えて、耐えて、ついに悪を撃つ。“必殺仕事人”の精神はいつのまにか世界へ広まっていたのだ。何を言ってるかわからない? 古き昭和の日本映画を愛する人にこそ全力でお薦め、ということです。「THE FINAL」なんて言わないで、どこまでも世界中を旅して不正な悪をやっつけちゃってよ。貴方こそ僕らの時代のヒーローだ。
プロフィール
入江悠(イリエユウ)
1979年11月25日、神奈川県生まれ。2009年に監督作「SRサイタマノラッパー」がゆうばり国際ファンタスティック映画祭のファンタスティック・オフシアターコンペティション部門でグランプリを受賞し、一躍注目を集める。そのほか主な監督作に「ジョーカー・ゲーム」「太陽」「22年目の告白ー私が殺人犯ですー」「ビジランテ」「AI崩壊」「聖地X」「映画 ネメシス 黄金螺旋の謎」などがある。現在、大泉洋主演の大型時代劇を2024年末以降の公開に向けて撮影中。
大友啓史
ストイックで強靭なアクション描写が冴えわたる。それは、物語の舞台となる端正で美しいイタリアの景観と、デンゼル・ワシントンの円熟を極めた感情表現によって研ぎ澄まされ、新たな次元に昇華される。
爛熟するアクション作品群の中で、“省略の美学”による、まるでかつての任侠映画のようなこのシリーズのシンプルさは極めて新鮮だ。
最終作にして最高傑作というのは只の謳い文句ではない。
プロフィール
大友啓史(オオトモケイシ)
1966年生まれ、岩手県盛岡市出身。連続テレビ小説「ちゅらさん」シリーズや大河ドラマ「龍馬伝」などの演出を担当し、2009年に「ハゲタカ」で映画監督デビューを果たした。そのほか「るろうに剣心」シリーズや「プラチナデータ」「秘密 THE TOP SECRET」「ミュージアム」「3月のライオン(前・後編)」「億男」「影裏」を手がけたことで知られる。2023年1月には、木村拓哉と綾瀬はるかを迎えた監督作「レジェンド&バタフライ」が公開された。
KEISHI OTOMO(大友組) (@TeamOTOMO) | X
品川ヒロシ
パート1、パート2の派手過ぎないんだけど、決して地味じゃない。渋すぎるアクション。そして圧倒的に強い。その魅力を残しつつきちんとスケールアップされている。街の人との何気ない雑談。現役CIAとのやりとり、マフィアとの駆引。過去作もかなり大好きだったけど、シリーズ最高。にしてもあんなに親切で優しいのに悪党には躊躇なく瞬殺。強ええ。あとはイタリアの景色が最高過ぎた。
「イコライザー THE FINAL」ビジュアル