スカパー!で「2ヶ月連続 磯村勇斗に痺れるッ!」特集放送、その魅力を紐解く“磯村勇斗論”を考える - 映画ナタリー 特集・インタビュー (original) (raw)

スカパー!では7月8日21時より、日本映画専門チャンネルの特集「2ヶ月連続 磯村勇斗に痺れるッ!」を放送。これは、磯村勇斗が主演を務めた映画「ビリーバーズ」の7月8日公開を記念して行うもので、磯村の関連作7本と特別番組が2カ月にわたって放送される。

第75回カンヌ国際映画祭でカメラドール スペシャルメンション(特別表彰)を受けた「PLAN 75」など話題作に次々と出演し、活躍が目覚ましい磯村。映画ナタリーでは、磯村の魅力を、映画ライターの細谷美香の解説によって紐解いていく。さらに特集放送の中から注目作品をピックアップし、見どころを紹介。

この夏は、スカパー!で“磯村勇斗”の世界に浸ってみよう。

文 / 細谷美香、尾崎南(作品解説)

観る者に揺さぶりをかけてくる俳優、磯村勇斗

磯村勇斗

磯村勇斗

磯村勇斗の魅力やイメージを、包括して語ることはあまりにも難しい。ただ1つ確かなことは、作品ごとに表情やたたずまいを驚くほどがらりと変え、観る者を翻弄し続けている俳優であるということだ。作品選びから感じられる果敢な姿勢と、ジャンルを横断しながら硬軟自在に幅広い役柄に命を吹き込む確かな演技力ゆえに、若き俳優たちにとってはジェラシーと憧れを抱かせる存在かもしれない。

第45回日本アカデミー賞では半グレ集団のリーダーを演じた「ヤクザと家族 The Family」、歳上の恋人を翻弄する小悪魔、ジルベールに扮した「劇場版『きのう何食べた?』」で新人俳優賞を受賞。カンヌ国際映画祭で話題を呼んだ「PLAN 75」では高齢者が生死を選択するプランの申請窓口職員の揺らぎを伝え、映画初主演作「ビリーバーズ」では信仰心と本能と欲望がせめぎあうさまを生々しく体現している。今年はさらに「異動辞令は音楽隊!」「さかなのこ」とバラエティ豊かな公開作が待機中。映画出演作のみに目を向けても、彼が自身のイメージを更新し続けていることは明らかだろう。

キャリアの初期にはドラマ「仮面ライダーゴースト」、連続ドラマ小説「ひよっこ」と若手俳優の登竜門をくぐり、少女マンガが原作の「ういらぶ。」をはじめとする青春映画でも存在感を示してきた。ドラマ「今日から俺は!!」、映画「東京リベンジャーズ」といったヤンキーもので強烈なキャラクターを演じ分けられるのも彼の強みだろう。人気ジャンルを網羅する王道ともいえる歩みだが、そのルーツには高校時代に地元の劇団に入団して稽古を重ねた地道な日々がある。旅番組「磯村勇斗のぶらり男子2人旅 ~しずおか 沼津に里帰り~」でも訪ねた故郷での鍛錬は、実力派俳優となった彼を支える礎になっているはずだ。

そしてもう1つ、磯村を語るときに欠かせないのは、短編映画「ヌマヅの少女ハイジ」を自主制作した中学時代から彼のなかに芽吹いていた“作り手の視点”。昨年はWOWOWのプロジェクト「アクターズ・ショート・フィルム」に参加し、アンドロイドが進化した近未来社会が舞台の短編「機械仕掛けの君」で監督を務めた。限られた枠のなかでカメラワークにもこだわりながらSFに挑むチャレンジングな姿勢と、現代社会へのメッセージを鮮やかに伝える手腕が同居したこの短編には、彼のクリエイターとしての可能性が詰まっている。監督を手がけた経験はさらなる視野の広さと、作品づくりにおける“俳優部”としての意識の高まりをもたらしてくれたことは、想像に難くない。ドラマ「演じ屋」に続く主演作が増えていくと思われる今後、この経験は座長として現場を率いる際にも生かされるのではないだろうか。コロナ禍で活動がままならない状況下で自ら仕掛けたのは、インスタ生配信短編映画「コロッケを泣きながら」。インスタライブからフィクションの世界へと移行していくサプライズ的な演出には、磯村の作り手としての遊び心とフットワークのよさ、何よりも俳優としての探究心が感じられる。

ドラマ「サ道」への出演をきっかけにサウナにハマり、いまやすっかりサウナ好きとして知られる彼にとって、「サ道 ~2021年冬 東京の空の下、少し離れてととのう~」は新たな代表作の1本だ。演じることともの作りへの惜しみない愛情をベースにした献身は、受け手の心を大きく弾ませ、動かしていく。彼はそのことを今、もっとも感じさせてくれる俳優かもしれない。1作ごとに色合いと温度を変え、何者にでもなれることを証明してきた彼は今年、30代を迎える。領域を拡大しながら一層一層丁寧に積み上げてきたレイヤーを財産に、観る者に揺さぶりをかけてくる俳優、磯村勇斗。進化と深化を遂げていくに違いない彼の活動を、これからも見続けていきたい。

注目の放送作品をピックアップ!

「ういらぶ。」

「ういらぶ。」

「ういらぶ。」

監督:佐藤祐市 脚本:高橋ナツコ 原作:星森ゆきも
出演:平野紫耀(King & Prince)、桜井日奈子、玉城ティナ、磯村勇斗、桜田ひよりほか
初回放送:2022年7月3日(日)19:10~21:00

幼なじみ同士の恋模様を描く

King & Princeの平野紫耀扮するドSのふりをする“超こじらせ男子”・和泉凛と、桜井日奈子演じる彼の恋心に気付かない幼なじみ・春名優羽の恋を描くラブストーリー。磯村は凛と優羽の幼なじみ・藤蛍太役で出演し、ひと筋縄では行かない2人の恋を応援する“オカン系”男子を演じた。磯村のフレッシュな制服姿も見どころだ。

©︎2018 『ういらぶ。』製作委員会 ©︎星森ゆきも/小学館

「演じ屋」

「演じ屋」ビジュアル

「演じ屋」

監督・脚本:野口照夫
出演:奈緒、磯村勇斗、笠原紳司、青山倫子ほか
初回放送:2022年7月8日(金)23:20~26:15

客から依頼された役になりきる職業“演じ屋”

ドラマ「演じ屋」では、痴漢の冤罪で仕事も婚約者も失い自殺を決意したトモキが、客から依頼された役になりきる職業“演じ屋”のアイカと出会い、物語が展開。奈緒がアイカ、磯村がトモキを演じ、ダブル主演を務めた。トモキはやがて演じ屋の仕事に魅了され、仲間とともに家庭内暴力などの社会問題に立ち向かっていく。

©︎ 2021 WOWOW INC.

「サ道 ~2021年冬 東京の空の下、少し離れてととのう~」

「サ道 ~2021年冬 東京の空の下、少し離れてととのう~」ビジュアル

「サ道 ~2021年冬 東京の空の下、少し離れてととのう~」

監督:長島翔 脚本:根本ノンジ 原作:タナカカツキ
出演:原田泰造、三宅弘城、磯村勇斗ほか
初回放送:2022年7月8日(金)26:15~27:10

コロナ禍のサウナライフを考える

2019年に放送されたドラマ「サ道」。そのスペシャル版第2弾となる本作では、サウナ好きの3人組がコロナによって大きく揺らいでしまったサウナライフの楽しみ方を前向きに模索するさまが描かれる。磯村はレギュラーメンバーである“イケメン蒸し男”役で出演。コロナ禍ならではの作法で、“ととのい”ながら、サウナトークを繰り広げる。

©︎「サ道」製作委員会

アクターズ・ショート・フィルム「機械仕掛けの君」

「アクターズ・ショート・フィルム」メイキング写真

「アクターズ・ショート・フィルム」メイキング写真

監督:磯村勇斗 脚本:伊藤靖朗
出演:泉澤祐希、潤浩、川口和空、和田光沙、三河悠冴、夏子、葵揚、磯村勇斗、長尾卓磨ほか
初回放送:2022年8月12日(金)21:30~22:10

監督・磯村勇斗の才能が光る

5人の俳優が短編映画を制作するWOWOW開局30周年記念プロジェクト「アクターズ・ショート・フィルム」。磯村が監督を務めた「機械仕掛けの君」は、アンドロイドが進化した近未来のディストピアを舞台にしたSF作品だ。泉澤祐希を主演に迎え、ある秘密を抱えた兄弟と旧式アンドロイドの少年のはかない友情がつづられる。

©2021 WOWOW INC.

インスタ生配信短編映画「コロッケを泣きながら」

「コロッケを泣きながら」

「コロッケを泣きながら」

監督:近藤啓介
出演・撮影:磯村勇斗
初回放送:2022年8月12日(金)22:10~22:35

放送事故風の“インスタライブムービー”

2020年5月にサプライズ企画として制作された“インスタライブムービー”。インスタライブ配信を実施した磯村だったが、配信終了ボタンが押せておらず、「お母さん、コロッケ送ってくれた?」とプライベートな電話の内容がさらされてしまう。のちに“放送事故風”のフィクションであることが明かされ、多くの反響を呼んだ。

©BLUE LABEL

「キミの墓石を建てに行こう。」

「キミの墓石を建てに行こう。」

「キミの墓石を建てに行こう。」

監督・脚本:宮嵜瑛太
出演:磯村勇斗、白石聖、志田未来ほか
初回放送:2022年8月12日(金)22:35~23:40

磯村勇斗のテレビドラマ初主演作

高校生を対象とした脚本・演出家才能発掘プロジェクト「ドラマ甲子園」の第5回グランプリに輝いた脚本をドラマ化した作品。磯村は、自分に活力を与えてくれた少女・朝田梨花の「自分のお墓を建ててほしい」という願いを叶えようと動き出す青年・片瀬奏を演じた。梨花を慕う後輩・石川奈々に白石聖、梨花に志田未来が扮する。

©︎フジテレビジョン

特別番組「磯村勇斗の開封」

磯村勇斗

出演:磯村勇斗
初回放送:2022年7月8日(金)21:00~21:30

ファン必見の特別番組

磯村の魅力を紐解く特別番組が放送される。インタビューとだけ聞かされてスタジオに足を踏み入れた磯村が、7月8日公開の初主演映画「ビリーバーズ」の劇中に登場する「ニコニコ人生センター」から届いた箱を開封。箱に入った思い出の品や、過去の出演作に関わるアイテムから、これまでの活動を振り返るトークを繰り広げる。