「君の名は。」配信記念特集 成田凌、テッシーに寄り添った日々語る - 映画ナタリー 特集・インタビュー (original) (raw)

新海誠が監督を務め、約250億円の興行収入を記録した「君の名は。」が、auの動画配信サービス・ビデオパスで配信されている。新海が描き出す美しい光や風景、ロックバンドRADWIMPSによる主題歌と劇伴、主演を務めた神木隆之介や上白石萌音の演技などが多くの人々に支持された。

映画ナタリーでは、本作の特集を3回にわたって展開。第1弾では、ヒロイン・三葉の同級生である勅使河原克彦を演じた成田凌にインタビューを実施した。オーディションからアフレコ現場まで制作の裏側を語ってもらったほか、俳優としての信念も明かしてもらった。

取材・文 / 伊東弘剛 撮影 / 入江達也
ヘアメイク / 宮本愛 スタイリング / 伊藤省吾

新海監督に会える日が来るなんて想像もしてなかった

──成田さんは「君の名は。」に勅使河原克彦役で出演されています。出演の経緯を教えてもらえますか?

成田凌

オーディションです。新海監督に会えるのが本当に楽しみでした。普段のオーディションは合格するぞという気持ちで行くんで、自分としては珍しく、今回は難しいかもと思いながら会場に向かっていたのを覚えています。当日、Vコンテの一部を見せてもらったんですけど、それがもう面白そうだったんですよ。

──オーディションのとき役は決まっていたんですか?

僕は何も知らなかったんですけど、「この坊主の男の子のオーディションです」と現場で知らされて。そのテッシー(勅使河原)の絵を見てより自信がなくなったんです。自分と似てなくて。けどいざ演じてみたら、ハマったというか、何よりすごい楽しかったんです。

──Vコンテのシーンに合わせて演じたんですね。

「君の名は。」より勅使河原克彦。

はい。会場には新海監督をはじめスタッフの方々がズラッと並んでいて、その中で演じたんです。そうしたら僕の演技を新海監督やスタッフさんが「いいね」って褒めてくださって。テッシーが三葉や早耶香と下校している場面で、三葉と早耶香が地元・糸守の悪口を言いまくっている中、テッシーが「お前らなあ」って注意するところをやったんですけど。その言葉のあと、三葉と早耶香に「何!」って返されたときのテッシーの反応を少しふざけた感じで演じてみたんです。そうしたら新海監督から「その反応は想像になかったですね」と言ってもらえて。本番でもその返しが残っています。あとテッシーが2人と自販機の前でしゃべってるシーンもやりましたね。

──普段からオーディションでアドリブを入れていくんですか?

アドリブというかリアクションは大切にしています。本や資料をしっかりと読んで臨むことと同じぐらい。俳優をやっている分、仕事の中でリアクションを取ることが多いんです。「君の名は。」のオーディションのときも俳優として声優のオーディションを受けていたから、その反応が返せたのかもしれません。

──新海監督がそこにいたからその反応が出たんだと思いますか。

そうですね。会場を出るとき新海監督が声をかけてくださって、すごいうれしかったです。まず新海監督に会える日が来るなんて想像もしていませんでしたし、声をかけていただけるなんて。あとこれは収録が終わったあとなんですけど新海監督が「オーディションで成田さんに出会えたことが、この作品の1つの大きなジャンプだったかもしれません」と言ってくださって、その言葉もすごくありがたかったです。

ボロ泣きしたVコンテは何回観たかわからない

──新海監督を知ったきっかけはなんだったんですか?

初めて観たのは「言の葉の庭」ですね。劇場で観たんですけど、面白くって、そこから過去の作品も観ていきました。「言の葉の庭」は劇場で3回は観ました。

──「言の葉の庭」は2013年の公開作ですね。

観たときの僕と主人公のタカオくんが年齢的に近かったこともあり、感情移入できて。2人の関係にも共感できましたね。あと歳上好きとしてもたまりませんでしたし、新宿御苑行きてーと思いました(笑)。

──そんな新海監督の作品への出演が決まったとき、どう思われたんですか?

成田凌

待っている間、なかなか結果が決まらないみたいな話を小耳に挟んで。けっこう焦らされましたね(笑)。そのあと、僕に決まったと連絡がきて「よしよし」と(満足げな顔で)。オーディションが終わったタイミングで「よしやろう!」って演じる気満々だったので。

──決まったあと台本を読んだんですよね?

読んでみたら、とんでもないものができあがりそうだなと。そのあと新海監督と監督の奥さんが声を当てているVコンテが届いて。もうボロ泣きでしたね、本当によくって。

──台本を読んだときの印象を超えていたと。

はい。もうこれはヤバいと。新海監督の演技がまたうまいんですよ。ちゃんと三葉の気持ちになっていたりして。

──それは観てみたいです。

僕の宝物です。しかも4種類ぐらいあるんですよ。徐々に画がきれいになったり、音が追加されたりしていくんですけど。アップデートされるごとに完成が近付いていることが実感できて、モチベーションがどんどん上がっていきました。それもあってVコンテは何回観たかもうわからないです。特に自分のところは本当に信じられないくらい観て練習しているので、映画館で観たときも無意識にブツブツとセリフを言っちゃってましたね。