店長たちに聞くライブハウスの魅力|新宿LOFT (original) (raw)
店長たちに聞くライブハウスの魅力 第20回[バックナンバー]
若手とベテランが混ざり合う、楽しさが詰まった老舗
2022年12月28日 17:30 17
全国のライブハウスの店長の話を通して、それぞれの店の特徴や“ライブハウスへ行くこと”の魅力を伝える本連載。第20回は東京・新宿LOFT店長の柳沢英則氏にご登場いただき、店長に就任した経緯や思い入れのあるアーティスト、コロナ禍での営業方法などについて聞いた。
取材・文 / 小林千絵 撮影 / 大城為喜
チャージバックシステムは新宿LOFTが作った
「僕はもともと渋谷屋根裏で働いていて。そこを辞めてからしばらくはライブハウスの仕事から離れていたのですが、やっぱりライブハウスで働く楽しさがずっと忘れられなくて、その後、下北沢GARDENで働くようになりました。ライブハウスで働きながらバンドを今もやっているのですが、バンドマンとして当時の新宿LOFTの店長に面倒を見てもらっていて。それで『この人と一緒に働きたい』と思って、新宿LOFTでアルバイトとして働き始めました。それが2014年。僕が32歳のときでした」
「そもそも新宿LOFTができたのは1976年。フォーク喫茶をやっていた会長(株式会社ロフトプロジェクトの平野悠氏)が『ライブハウスを作ろう』と言って、西荻窪ロフトを皮切りに、荻窪ロフト、下北沢ロフトを次々と作った流れで、1976年10月に新宿区の小滝橋通りに作ったのが新宿LOFTです。今の歌舞伎町に移転したのは1999年。移転してから今年で23年ほどが経ちます。小滝橋のときからニューロティカやG.D.FLICKERSなどは出演しています。当時はまだライブハウスというものが日本にあまりなく、チケットのチャージバックシステムなどは新宿LOFTが作ったと聞いています」
ベテランと若手が仲よくなっていく姿を見るのが好き
「新宿LOFTは歴史が長いこともあって、“この箱だから”という理由で出演しているアーティストが多いんですよね。そういう、人のつながりや絆が感じられるライブハウスだなと思っています。だからと言って昔から出てくれているアーティストのライブだけやっていても、ただみんながおじさんになっていくだけ。だから、長年出演しているバンドと若いバンドが一緒にライブできるのが新宿LOFTのよさなのかなと思っています。店主催のイベントでは特に、お客さんが入る入らないに関係なく意識的にそういう対バンを組むようにしていて。打ち上げでベテランと若手が仲よくなっていく姿を見るのがすごく好きです」
「あとはジャンルレスであることも代々の店長から言われていること。せっかくのこのキャパ(ライブフロアにはオールスタンディングで約500人収容可能)の場所を、いろいろな人に楽しんで使ってもらいたいという思いがあるので、ジャンルには特化しないようにしています。おかげで、ハードコアバンドのライブの次の日にアイドルがイベントをやっていたりして、思わず『どうなってるんだ!』とツッコみたくなることもありますが(笑)、そこが新宿LOFTのいいところ。僕たちとしてはどのジャンルの方々にも気持ちよくライブをしてほしいと思っています」
新宿LOFTに300回出演したニューロティカ
「店長になってから特に印象的だったライブは、ニューロティカの日本武道館でのライブ(2022年1月3日に開催された『ニューロティカの『心燃会』~俺たちいつでもロックバカ!!~』)。ニューロティカは、2021年1月3日に武道館ライブを発表して、1年かけて新宿LOFTでイベントをやりながら、新宿LOFT出演300回を経て、キャリア初の武道館ライブをしたんです。当日の舞台スタッフはうちのスタッフたちも担当させてもらって。新宿LOFTにある大きな時計も武道館に飾って、床は新宿LOFTと同じ市松模様にしてくれました。この1年間はすごくいい思い出です。ニューロティカと打ち合わせをしているときに『楽しいことをしたい』と言うんですよね。50歳、60歳で『まだまだ楽しいことをしたい』なんて、なかなか言えない。生きる活力を一緒に味わわせてもらったような感覚でしたね」
「ライブハウスの入口には、2019年に移転20周年を迎えた際、マンガ家の高橋ヒロシさんにお願いして描いてもらったイラストを飾っています。実は、僕が新宿LOFTの存在を知ったのはマンガ『クローズ』なんです。小学生のときに『クローズ』を読んでいて、その中によく新宿LOFTが登場していた。当時はもちろんまだ音楽もやっていなかったから、ただただ『クローズ』によく出てくるライブハウス、という認識で。バンドを始めるまではずっと、新宿LOFTを含めてライブハウスはめっちゃ怖い場所だと思っていたので、なるべく近付きたくなかったです(笑)。でも自分がバンドを始めてからは、逆に『なるべく怖そうなライブハウスに行ってみよう』と思ってとあるライブハウスに行ったら、階段にモヒカンの人たちがいっぱいいて『すげー!』と思いました(笑)」
「まさか自分がそんなライブハウスで働くことになるとは。でもライブハウスって、本当に楽しいんですよね。だって、毎日酒を飲める環境じゃないですか(笑)。スタッフと飲んで、出演者と飲んで。最近は体を壊さないように、出勤前にジムに行くようにしています(笑)。飲みの場では、いろんなアーティスト同士がつながっていきます。先日新宿LOFTでやった、どぶろっかーず、LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS、好き好きロンちゃんというスリーマンも、お酒の席で『一緒にやりたいね』という話になって実現したもの。そうやってストーリーがあるライブを作れるのもいいところですよね」
コロナ禍で面白いものを作りたい
「コロナ禍でのライブハウス営業はすさまじく大変です。特にコロナが流行り始めた頃はスケジュールも全部飛んじゃったし。その間、僕と社員の2人は、やるかわからないライブのチケット販売のために毎日ここに来ていたんです。でもいつもは当たり前に鳴っていた音楽が鳴っていない。ずっと『何をやってるんだろう?』という気持ちでしたね。最初は配信ライブをやって、そのあとは20人くらいだけお客さんを入れて……と模索しながら、最近は少しずつ戻ってきていてよかったです。現在は感染対策として、入場時に検温と消毒を行っていて、お客さんにはマスクの常時着用をお願いしています。あとはサーキュレーターを4台回して換気をしていたり。アイドルの特典会のときは飛沫カーテンも設置します」
「今年の4月にはロフトプロジェクトの系列店4店舗(新宿LOFT、LOFT HEAVEN、下北沢SHELTER、Flowers Loft)合同で『ATTACK FROM LIVEHOUSE』というイベントをやったんです。各店舗で4日連続、合計16公演のツーマンライブを企画して。さらに新宿LOFTでは、その後11月にも『ATTACK FROM LIVEHOUSE ~loft special night~』と銘打って石野卓球と八十八ヶ所巡礼のツーマンライブも行いました。各所で、ライブハウスからは頼んでいないのに勝手にコラボパフォーマンスを披露していたりして(笑)、やってよかったですね。コロナ禍で、ライブハウス含め、エンタテインメント業界はどうしても暗くなってしまいました。だから面白いものを作って、少しでも話題にしたいなと思っています」
楽しい場所であってほしい
「今、推したいアーティストは、999999999(キュウ)。九州発の4人組ハードコアバンドです。森洸大(Dirty Workers Studio Japan、 millennium parade、PERIMETRON)くんとのコラボ曲なんかも配信しています。演奏もうまくてカッコいいですよ。ロフトのレーベル・LOFT RECORDSから作品もリリースしています。推しているというか、もはや営業ですね(笑)。もちろん新宿LOFTでもライブをよくやっていますので、ぜひライブを観てもらいたいです」
「もちろんライブハウスはライブをやる場所、観る場所なんですが、僕的には……酒が飲める場所(笑)。自分で好きなライブを組んで、それを酒飲みながら観られるなんて、最高じゃないですか。もちろんアクシデントが起きて大変だったことはたくさんありますけど、つらかったことはないですね。ずっと楽しい。同様に、出るバンドや観に来てくれるお客さんにとっても、楽しい場所であってほしいです。ライブをしていく中で、バンド同士で仲よくなって、お客さんも含めて、バンドがどんどん広がっていく。そのきっかけの場所がライブハウスであって。わざわざお金や時間をかけてライブハウスに来ているんだから、ケンカなんてしていても無駄じゃないですか。ただただ楽しくやればいいんですよ。まあ、何よりもせっかく自分が働く場所なんだから、楽しくやったほうがいいなって、それだけです。……って、カッコいいこと言っちゃいましたね(笑)」
店舗情報
住所:〒160-0021 東京都新宿区歌舞伎町1-12-9 タテハナビルB2
アクセス:JR各線・新宿駅東口から徒歩7分、西武新宿線・西武新宿駅から徒歩3分
営業時間:公演により異なる
定休日:なし
ロッカー:あり
駐車場:なし
再入場:公演により異なる
キャパシティ:500人(オールスタンディング時)
ドリンク代:600円
フリーWi-Fi:あり
貸切:あり