SHISHAMO10周年を記念した武道館公演をレポ (original) (raw)
SHISHAMOのワンマンライブ「SHISHAMO NO BUDOKAN!!! ~10YEARS THANK YOU~」が1月4日に東京・日本武道館で開催された。
2013年11月にアルバム「SHISHAMO」でデビューしたSHISHAMO。彼女たちは「僕に彼女ができたんだ」や「恋する」「夏の恋人」など恋愛をテーマにした楽曲を多数発表し、恋に悩める男女に寄り添ってきた。そんなSHISHAMOが日本武道館でワンマンライブを行うのは2016年1月4日、2017年3月31日に続いて3回目。SHISHAMO初の日本武道館公演からちょうど7年が経った今回はデビュー10周年を記念して行われ、約8000人のオーディエンスがバンドの節目と言えるライブを目に焼き付けた。また公演の模様はU-NEXTで生中継され、会場に足を運べなかったファンも記念すべきワンマンを見届けることができた。
SHISHAMOを象徴するレッドカラーに彩られたメインステージ。花道の先にあるサブステージには「SHISHAMO 10th」のロゴが大きく描かれている。メンバーが敬愛するTheピーズの楽曲が流れる中、開演時刻を迎えると「恋する -10YEARS THANK YOU-」のミュージックビデオの特別バージョンが会場のスクリーンにて上映された。スタイリストの見習いとして働くSHISHAMOファンのシホは、男友達のタケシに思いを寄せている。シホは勇気を振り絞ってタケシを「SHISHAMO NO BUDOKAN!!! ~10YEARS THANK YOU~」に誘い、日本武道館の入り口でタケシの到着を待つ。そんな2人の様子を見守っていた観衆の気付かぬ間に、このオープニングムービーは会場からの中継映像に切り替わっていた。場内の2階席後方の扉が突然開くと、シホとタケシが会場に現れたのだ。2人が日本武道館に入場したところで、宮崎朝子(G, Vo)、松岡彩(B)、吉川美冴貴(Dr)がメインステージに登場。吉川の力強いドラミングをきっかけに、SHISHAMOらしい甘酸っぱいラブソング「恋する」でライブをスタートさせた。続く「ねぇ、」では瑞々しいサウンドに乗せて、オーディエンスが心地よさそうにハンズアップした。
メンバーを代表して宮崎が新年の挨拶をすると、「正月早々にお越しいただきありがとうございます。今日は仕事初めでしょ? しかも平日にこんなにたくさんの人に集まってもらえてうれしいです」と声を弾ませる。そして、SHISHAMOの楽曲史上最長タイトルである「君の目も鼻も口も顎も眉も寝ても覚めても超素敵!!!」ではMVに登場する恐竜をモチーフにした映像が流れ、疾走感あふれるハツラツとしたサウンドが場内に響きわたった。ライブの定番曲「きっとあの漫画のせい」の披露後には、宮崎が「こんなに(SHISHAMOを)続けるつもりはまったくなくて」と口を開き、「高校を卒業したらバンドを辞めるつもりだったんだけど、皆さんのおかげで10周年イヤーに突入しました。ベストを入れたらアルバムを8枚も出してますよ。すごくない?」とファンに同意を求める。松岡は「SHISHAMOに加入して8年になるんですよ。その前からSHISHAMOの音楽を聴いてきたので、SHISHAMOに出会って10年目という感じです。10周年イヤーに入ったばかりだけど、皆さんが『おめでとう』って言ってくれて、『やり遂げたぜ!』という気持ちが日に日に増しています」と素直な思いを述べ、吉川は「私はホントにうれしい。朝子とは軽音楽部が一緒で、そのときから考えたら12年ぐらい経ってるわけでしょ。感謝の気持ちでいっぱいです」とにっこり笑った。「あんまりしゃべりすぎると……終電がある人もいるから」と言う宮崎のひと声で3人はライブを再開。ハードなギターリフが印象的な「狙うは君のど真ん中」や、ブラックミュージックのムードが漂う失恋ソング「メトロ」を披露した。
バンドの歩みをプレイバックする映像が流れたあと、メンバーは360°客席に囲まれたサブステージへ。各々が向き合うように持ち場に着くと、ブレイクのきっかけとなった「僕に彼女ができたんだ」で骨太なロックサウンドを奏で、同じく初期のナンバー「バンドマン」もパフォーマンスして観客を大いに沸かせた。さらにサブステージでは、小気味のいいギターカッティングで始まる「生きるガール」も演奏され、熱気がほとばしるステージングが繰り広げられた。サブステージでのパートを終えてメインステージへと戻った宮崎、松岡、吉川。「君の大事にしてるもの」では刺激的な歌詞の世界観とは裏腹に心地よいグルーヴを生み出し、「二酸化炭素」では3人の織りなす豊かなハーモニーとバンドサウンドが場内を温かく包み込んだ。
ライブが折り返しを過ぎた頃、メンバーは年末年始をテーマにトークを展開。宮崎は「今日のために準備をしてたから、お正月感なかったよね。でも実家に帰って信じられないくらい食べたわ」と話し、吉川は「実家に帰って初詣に行って、おみくじは末吉だったよ。仕事運に関しては『高望みするな』って書いてあった(笑)」と明かした。松岡は「生まれて初めてやってしまったことがあって」と切り出し、「自我が芽生えてから初めて、年を越すときに寝てた。朝起きたら新年なんですもん!」と嘆く。そんな松岡に対して吉川は「私は年末とお正月が大好きだから考えられない!」と声を張り上げた。ここで「季節外れですが、夏の曲をやります」と言う宮崎の言葉をきっかけにパフォーマンスされたのは、昨年7月にリリースした「ハッピーエンド」。叙情性あふれるアンサンブルで観客を惹き付けたメンバーは「天使みたい」で夢の世界へと誘い、「夏の恋人」でノスタルジックなムードを演出した。
会場が切ない余韻で満たされる中、SHISHAMOのライブではお馴染みの「吉川美冴貴の本当にあった○○な話」のコーナーへ。吉川は「自分の人生って挫折ばっかりで」と話し始め、「ホントはサッカー選手になりたかったんだけど周りに上手な人がたくさんいることがわかってあきらめて、今度は絵を描くのが好きだったからデザイン科のある学校に行ったんだけど才能を持ってる人がたくさんいて、これもダメだと思って何度も挫折したんです」と過去を振り返り、「卑下してるわけでも、謙遜してるわけでもないんだけど、自分にはドラムの才能もないなって気付いたんです。特別な才能がない凡人だなって。劣等感を抱えながら活動してきて、自信を失ったり悔しい思いをしたりつらいことがたくさんありました。未だにしんどいなと思うことがたくさんあります。でも、最近やっとわかったことがあるんです。『好き』と『楽しい』はイコールじゃない。どれだけつらくても自分がSHISHAMOが好きという気持ちは絶対なくならない。これからもきっと悩みながら活動を続けていくと思いますが、皆さん、そばで見守ってくださったらうれしいです!」と、SHISHAMOへの深い愛情を表現した。吉川の話を聞いていた宮崎は「吉川さんは努力の仕方が人並みじゃないんですよ。努力も才能のうちですから。このコーナー、普段は面白い話をするところなんですけどね(笑)」と説明。するとオーディエンスは3人を称えるように拍手を送った。
ライブ終盤に突入すると、SHISHAMOのキャリアを彩ってきた人気曲が次々と披露されていく。「君と夏フェス」「君とゲレンデ」に合わせて観客がリズミカルにハンズアップしたあと、「タオル」ではオーディエンスが肩にかけていたタオルを手にし、軽快なロックサウンドに合わせて勢いよく振り回した。その後、赤とシルバーのテープが宙に放たれると、3人は「明日も」「明日はない」というライブではおなじみの流れで本編を終えた。アンコールでは3人が「ブーツを鳴らして」で美しいハーモニーを重ね、聴衆の心を大きく揺さぶる。深い余韻に浸るオーディエンスを前に松岡は「今日のライブをすごく楽しみにしていたし、実際に楽しめたし、すごくいい年明けになったなと思います。ここから10周年イヤーを駆け抜けて、また皆さんと同じ場所に集まって同じ時間を共有していけたらいいなと思います」とコメント。吉川は「あっという間に終わってしまって、一瞬で時が経ってしまいました。今日は忘れられない日になりましたし、私は皆さんに生かされてるなと思いました」とあふれる思いを伝える。宮崎も「感謝の気持ちでいっぱいです。正直、武道館に強い思い入れはなかったんですけど、今日の武道館公演は本当に特別なライブになったなって。これからいろんな場面できっと今日を思い出すだろうなと思います。10周年イヤーはまだまだ続くので、私たちに着いて来てくれるとうれしいです」とSHISHAMOを支えるすべての人々へ、投げキッスをプレゼントした。ライブの締めくくりにふさわしい「またね」で約3時間の公演を終えたメンバーは声をそろえて「ありがとうございました!」と叫び、惜しみない感謝を伝えた。
日本武道館公演を成功に導いたSHISHAMOは、2月4日にコンセプトアルバム「恋を知っているすべてのあなたへ」をリリース。3月4日には大阪・大阪城ホールで単独公演「SHISHAMO NO OSAKA-JO HALL!!! ~10YEARS THANK YOU~」を行う。
「SHISHAMO NO BUDOKAN!!! ~10YEARS THANK YOU~」2023年1月4日 日本武道館 セットリスト
01. 恋する
02. ねぇ、
03. 中毒
04. 君の目も鼻も口も顎も眉も寝ても覚めても超素敵!!!
05. きっとあの漫画のせい
06. 狙うは君のど真ん中
07. 量産型彼氏
08. メトロ
09. 僕に彼女ができたんだ
10. バンドマン
11. 生きるガール
12. 君の大事にしてるもの
13. 二酸化炭素
14. 忘れてやるもんか
15. ハッピーエンド
16. 天使みたい
17. 夏の恋人
18. 夢で逢う
19. 君と夏フェス
20. 君とゲレンデ
21. タオル
22. 明日も
23. 明日はない
<アンコール>
24. ブーツを鳴らして
25. またね
SHISHAMO NO OSAKA-JO HALL!!! ~10YEARS THANK YOU~
2023年3月4日(土)大阪府 大阪城ホール
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