“還暦目前”怒髪天、笑いあり涙ありの一夜 (original) (raw)

怒髪天がライブツアー「エリア1020 TOUR」の“ザ・ファイナル”公演を、2月11日に東京・Spotify O-EASTで行った。

「エリア1020 TOUR」は怒髪天が最新アルバム「残心」を携えて、昨年5月より全国のライブハウスで展開していたツアー。月末にトークライブを含む3日間にわたる“沖縄編”が残されているものの、拠点である東京に帰ってきたメンバーを出迎えるべくO-EASTには多くのファンが集まり、大入りに。文字通り笑いあり、涙ありのライブが2時間にわたって繰り広げられた。

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怒髪天はクレイジーキャッツ!?

暗転と同時に出囃子「男祭」が爆音で流れ始めると、「待ってました!」とばかりに席から立ち上がり、手拍子を打ち鳴らすオーディエンス。その興奮した空気を浴びて現れた増子直純(Vo)は、「よっしゃー!」とひと吠え。約10カ月にわたる旅を終える日にふさわしい、「ただいま! おかえり!」のコール&レスポンスで始まる「エリア1020」でライブの幕を開けた。

「皆さんの要望にお応えして、今日は最高級の椅子を用意しました!」と自ら同様に歳を重ねたファンのため、フロアに椅子を用意したことをアピール。「寝てなければいいです!」と冗談めかしながら、前日のライブに高見沢俊彦(THE ALFEE)と音楽評論家の伊藤政則が足を運んでいたことを明かす。そして、ヘヴィメタルに造詣の深い伊藤から終演後に「(怒髪天は)クレイジーキャッツみたい」という評価を賜ったと語り、フロアをドッと沸かせた。

爆笑する観客の一方で、「けっこうギター、がんばったんだけど……」と寂しそうだったのは上原子友康(G)。少し曇り気味の表情とは裏腹に、この日の彼はジャケットの下に昭和アイドルさながらの光沢感あふれる衣装を着用しており、これをライブの最後まで増子にいじられ続けることに。ライトが当たるたびにギラギラとした光を放ちつつ、卓越したプレイでギタリストとしての存在感を見せつけた。

桜色のステージで披露されたあの曲

「銃刀法違反」「明日をブン殴れ!」「俺達は明日を撃つ!」とタイトルだけを見やればなんとも物騒だが、曲の根底にあるのは市井の人たちを鼓舞する人間讃歌としての側面。増子が額に血管を浮かび上がらせ熱唱する横で上原子は豊かな音色を奏で、背後で坂詰克彦(Dr)がスティックを軽やかに振り下ろし、サポートの寺岡信芳(B / 亜無亜危異)はいぶし銀のプレイと音色で3人を支える。全身全霊を懸けてパフォーマンスを繰り広げる還暦間近のメンバーを前に、観客は体を揺らし、ときには大声で歌い、熱狂的でありながらもしみじみとした空気を会場に生み出した。続いて、やたらとムーディなギターの音色に導かれるように、寺岡を含む全員が「喰うために働いて生きるために唄え!」をアカペラで歌い出すと、やんややんやの大喝采が会場に沸き起こった。

ノスタルジーをこれでもかと打ち出した「青の季節」「207」、中年のリアルすぎる心情を軽快に歌った「先細りのブルーズ」「はじまりのブーツ」で観客の胸を打ったブロックで、真打ちとばかりに響いたのは「雪割り桜」。まだ寒いこの季節にぴったりすぎるこの曲が始まるとステージが淡い桜色に染まり、観客は拳を突き上げ、増子やメンバーとともに力強く歌声を重ねる。増子は感極まった様子で何度か目元を掌で拭いながら、ステージにしゃがみ込み、観客と同じ目線で自らがつづった歌詞を噛み締めた。

温度差が激しすぎるセットリスト

「もうね、またグッときてしまいました」と照れ笑いした増子は、「曲はいいし、みんながこの曲を愛してくれて、一緒に歌ってくれるし、感無量ですよ!」と素直な思いを叫ぶ。「亜無亜危異のようなパンクバンドに憧れていたはずが、思ってる形と違ってしまった」「60になってもロックバンドをやってるとは思わなかった」と自虐気味に口にする増子だったが、その表情は晴れやか。「60代になってからは想像がつかない。でも楽しいことを1つでも作っていくのが我々の政党ですから」と先日終わったばかりの衆院選に引き合いに笑いをとった。

お笑いコンビ・錦鯉が出演するバラエティ番組「錦鯉が行く!のりのり散歩」のために書き下ろした「ライフ・イズ・ビューティフル」でやたらと牧歌的な空気を作った直後に、「プレイヤー1」「決意の朝に」「つきあかり」で人生の悲喜こもごもを表現した怒髪天。観客の感情を振り回すセットリストであることはメンバーも自覚しているようで、増子はライブの終盤で「俺じゃなかったら死んでるよ。よく言えばバリエーションがある。悪く言えば温度差が激しい。俺の精神が寒暖差で崩壊してしまう! 寒暖差で風邪をひく!」と思わず叫んだ。

増子直純の目に涙

上原子が目と衣装を輝かせながら「やりたいことが尽きない。バンドって終わりのない、ゴールのないものですね」と語り、2年前にO-EASTの2階席にいた寺岡が今では怒髪天のサポートメンバーとしてステージに立っているという数奇な縁が明かされ、尻をかきながらトークを始めた坂詰が増子に容赦なくツッコまれるなど、感慨と笑いが混じるMCを挟み、いよいよライブは佳境へ。増子の「ここから皆さんが椅子で蓄えていた体力を削る時間です。初めて来た人が、『サンバか?』と思うくらい熱狂してください!」という煽りから、日本マクドナルドのテレビCMソングとして話題の「オトナノススメ~還暦上等!~」になだれ込む。

熱量がさらに増したステージで「オトナはサイコー!」と叫ぶ4人に合わせて、「サイコー!」と笑顔で叫ぶ観客たち。大半が人生の後半戦に差しかかった“オトナ”たちが大いにハシャギ、叫び、踊り、歌い、お祭り騒ぎを繰り広げる。喜怒哀楽の感情すべてを煮詰めたこの日のライブは「yallow magic orchestra」でフィナーレへ。カリビアンテイストの陽気なアンサンブルに乗せて、増子はマイクと魔法のステッキを手に“音楽の魔法”を会場にかけた。「60を超えてどうなるかわからないです。でも間違いなく楽しい」と「エリア1020」が流れる中で明言した増子。メンバーを代表して最後に「生きてまた会おうぜ!」と叫んだ彼の目尻にはうっすらと涙がにじんでいた。

なお「エリア1020 TOUR」を完走し終えたあとも怒髪天は「還暦上等!生涯現役スタミナ街道」と銘打って、ライブ三昧の日々を継続。当初は還暦にちなんで60公演を予定していたが、増子いわく公演数は順調に膨れ上がっているという。

セットリスト

「エリア1020 TOUR」2026年2月11日 Spotify O-EAST

01. エリア1020
02. ホトトギス
03. GREAT NUMBER
04. 銃刀法違反
05. 明日をブン殴れ!
06. 俺達は明日を撃つ!
07. 喰うために働いて生きるために唄え!
08. ロックスターロック
09. 青の季節
10. 207
11. 先細りのブルーズ
12. はじまりのブーツ
13. 雪割り桜
14. ライフ・イズ・ビューティフル
15. プレイヤー1
16. 決意の朝に
17. つきあかり
18. オトナノススメ~還暦上等!~
19. yallow magic orchestra

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怒髪天のTV・ラジオ出演情報

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