安倍なつみ 年末ライブ直前特集 - 音楽ナタリー 特集・インタビュー (original) (raw)

2004年のモーニング娘。卒業以降、ソロアーティスト活動と並行して、ミュージカルを中心とした女優としての活動にも積極的に取り組んでいる安倍なつみ。今年は「第6回奈良定期演奏会」での関西フィルハーモニー管弦楽団との共演、通算7枚目のオリジナルアルバム「Dreams」のリリースとアルバムを携えてのライブツアー、東京・LIQUIDROOMでのバースデーライブなど充実したアーティスト活動が続いた。現在は初のチャペルコンサート「安倍なつみ Gloria Chapel Concert~Shiny Night!~」とクリスマスライブ「安倍なつみ☃X'mas Special Time~Love Christmas Night~」という、2015年の締めくくりとなる2本の公演に向けて準備が進められている。

音楽ナタリーではライブ開催を間近に控えたなっちにステージへの意気込みを伺うとともに、ボーカリストとしての姿勢とその変化に迫った。

取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / 塚原孝顕

ミュージカルへの向き合い方

──安倍さんは2004年のモーニング娘。卒業後、ミュージカルと出会ったことで歌手としての表現の幅が大きく広がったと思うのですが、あのときなぜミュージカルの道を選んだんですか?

安倍なつみ

ミュージカルの世界に足を踏み入れる、というよりはもっと自然な流れだったんですね。「ミュージカルの道で行くぞ」と決断してそこに行ったのではなくて、いくつかいただいたお仕事の1つという感覚だったんです。そんな中で、本格的にミュージカルというものに関わらせていただいたのが2008年の「トゥーランドット」(宮本亜門演出「祝祭音楽劇トゥーランドット」)ですね。そこからがスタートだった気がします。自分自身の中の何かが目覚めたというか、そういう感覚があって。それまでとは違う歌へのアプローチや表現の仕方に面白さを見つけられたのが「トゥーランドット」でした。

──そこからミュージカルが1つの軸になったと。

はい。軸であり、今の私につながるいろんなことのきっかけを作ってくれたものなのかなあと思います。

──昨年発表されたアルバム「光へ -classical & crossover-」(参照:安倍なつみ「光へ -classical & crossover-」インタビュー)は、ミュージカル女優・安倍なつみの側面が楽しめるアルバムだったのではないかと思います。ミュージカル独自の発声法は、それこそかつての“つんく♂唱法”とはまったく違いますよね。「ザイナマイ」なんて発音はミュージカルには出てこないでしょうし。

あははは(笑)。そうですね。

──ミュージカルの歌を歌うことに、やはり最初はとまどいましたか?

それよりも、自分が与えられた役をしっかり演じたい、期待に応えたいというプレッシャーのほうが大きかったですね。この役を自分のものにしたいという気持ちのほうが上回っていて、もちろん歌の大変さは舞台ごとに大なり小なりあるんですけど、毎回毎回が役と向き合う勝負というか。

──場数をこなすことで少しずつ身に付いてきたのでしょうか。

はい。でもミュージカルの舞台は小さなマイクを付けているだけで、足元に隠れている転がし(フロアモニター)からも自分の歌はほとんど聞こえないんです。テレビやライブ会場とはまったく違う環境の中で、歌もセリフも届けなきゃいけない。そのためにはそれなりの声量も重要視されてくるんですね。自分の体に響かせてから声を届けるという発声法なので、最初はとまどいました。届いてるのかな、聞こえてるのかなって。どのぐらいの滑舌でお客さんの耳に届いているのか。いろんな舞台を観劇して研究しましたね。これぐらいの会場だとこういう響き方なのか……とか。

──なるほど。コンサートなどで学んできたスキルとは別の勝負をしなくちゃいけない。

そうなんです。音楽劇では必ず歌唱指導の先生が1人いるので、その都度学んでいくような感じで。教え方も先生によって全然違うんですよ。前に学んだ方法は1回リセットしなくちゃいけなかったり。

声を後ろに引っ張る

──ちなみに「自分の体に響かせてから声を届ける」というのは、具体的にはどのような方法を取るんですか?

ただ声を前に「あ」と出すだけじゃなく、実は後ろの引っ張りも大事なんです。……後ろに引っ張るってわかりにくいですよね(笑)。声を後ろにも響かせながら前にも響かせる、そのバランスがとっても大事で。滑舌も、英語や韓国語などは母音をしっかり発音するから歌に乗りやすいんですけど、日本語はミュージカルとして歌やセリフで表現するのが難しいんです。でも発音がはっきりしすぎちゃうと、それはそれで不自然なものになっちゃうし。いろんな舞台を観に行ったり、先輩から学んだり……大変だけどすごくやりがいがありますね。

──なるほど。すごく大変だとは思うんですけど、モーニング娘。出身の人たちはみんな苦難に対する根性がすわっているようにも思うんですよね。

うふふふ(笑)。やっぱり習得していく面白さや発見の喜びはありますね。学ぶべきことはまだまだたくさんあるんだなあって。

安倍なつみ(アベナツミ)

安倍なつみ

1981年生まれ、北海道出身の女性歌手、女優。1997年にモーニング娘。のメンバーに選ばれ、翌1998年にシングル「モーニングコーヒー」でメジャーデビュー。「なっち」の愛称で人気を博す。同グループ在籍中からCMやテレビドラマ出演など、ソロ活動を開始。2004年1月にモーニング娘。卒業を機に、本格的にソロデビューを果たした。ソロシンガーとして活動する傍ら、「祝祭音楽劇トゥーランドット」「三文オペラ」など数々のミュージカルや舞台でも活躍している。ソロデビュー10周年を迎えた2014年10月には、国内外の名曲をクラシカルなアレンジでカバーしたアルバム「光へ -classical & crossover-」をリリース。2015年6月には通算7枚目のオリジナルアルバム「Dreams」を発表した。同年末には「安倍なつみ Gloria Chapel Concert~Shiny Night!~」「安倍なつみ☃X'mas Special Time~Love Christmas Night~」と2本の異なる内容のライブを行う。