アナログフィッシュ - 音楽ナタリー 特集・インタビュー (original) (raw)
「ESSENTIAL SOUNDS ON THE WILD SIDE. ~ THE BEST & HIBIYA YAON LIVE.」はベスト盤とライブ盤のコンボパック。しかし歩みを総括するものではなく、アナログフィッシュの現在を刻印した作品と言える。また、昨年リリースの力作「荒野 / On the Wild Side」が起こした波をさらに拡大させる機能も持っている。結成から数えて12年、現在の顔ぶれになってそろそろ10年。苦難を乗り切りながら音楽的な変化を重ね、歌に込める感情とメッセージ性はリアルになる一方のアナログフィッシュ。その3人の「今」の生の声である。
なお本特集の最後には、「重力ピエロ」「アヒルと鴨のコインロッカー」「ゴールデンスランバー」などで知られる人気作家・伊坂幸太郎から寄せられた、「聴く文学」とも評されるアナログフィッシュの音楽についての推薦文も掲載している。
取材・文 / 青木優 撮影 / 中西求
ベストヒットを集めるのは今じゃなくていいな
──まず、この作品を出すことになったいきさつから話してもらいたいんですが。
下岡晃(Vo, G) ベスト盤を出さないかって話自体は、どういうつもりで始まったのかは、俺たちは知らないけど(笑)。だけど俺たちとしては、とにかく作品を出したいという気持ちがあるし、「どうせだったら10月10日(日比谷野外大音楽堂)のライブ盤も一緒に入れちゃわない?」って話になって、「ああ、それは面白い」と。ライブ盤と出せるんだったら、一番新しいアナログフィッシュが入るということじゃないですか。だったらコンセプトとして、そこに行くまでのアナログフィッシュの歩みみたいなものを「荒野」っていう目線でピックアップしよう、みたいな感じ。
──なるほど。ということは、その選曲にはどんなふうに取り組んだんですか?
下岡 選曲に関しては、ベストを出すという時点で、自分は絡む気なくて、完璧に他人にやってもらおうと思って。櫻木さん(レーベルA&R)とか、信頼してるスタッフの人たちにお願いして。
佐々木健太郎(Vo, B) ほんとに大まかなものは客観的な人が決めてくれて。そこに「こういう曲があったらいいな」というのは、ちょっと言ったりしましたけど。選曲に関しては、ほとんど任せましたね。
下岡 でもそれに関しては、バンドの中では健太郎がすごくやってくれた。
斉藤州一郎(Dr) 一番やったよね。僕は出てくるものを「あ、これでいいです」って言ってただけです(笑)。
──つまり佐々木くんがバンド側のアイデアを?
佐々木 そうですね。今回は最初から、ベストヒット的なものというコンセプトじゃなくて。わりと1つの軸となるテーマがあったので、そのテーマに沿ったものを集めたような感じになったと思うんですけど。
下岡 まあベストヒット自体がないんだけど。俺たち(笑)。
──まあ、そうは言わずとも(笑)、ファンが愛してる曲はいっぱいあるじゃないですか。
下岡 そうそう。それで「BGM」とか「スピード」を入れて、「アンセム」を、「Hello」を入れて……っていう選曲ってさ、きっと考えるのも楽しいと思うし、そうすることで聴いてくれる人もいると思うし。だけど「それは今じゃなくていいな」という気がすごくしてて。それはもしかしたら、自分たちに、ほんとにベストヒットができたときでもいいかもしんないし。何かのときでいいかなと思って。
今は俺の曲を健ちゃんが歌える感じになってる
──この中には、CD初収録のものが3曲ありますが。
下岡 「最後のfuture」に関しては、配信オンリーでリリースしていたから、この機に入れてみようという話があって。で、実際入れたのを聴いてみたら、曲順のおかげで全然違う聴こえ方をしたので、「あ、こりゃいい」と思いましたね。
──「確率の夜、可能性の朝」では前野健太さんと共演していますが、アナログフィッシュは彼の「トーキョードリフター」(同名アルバムに収録)に参加していましたよね。これはそのお返し的な感じなんでしょうか?
下岡 そうですね。去年「TOWN MEETING」ってライブをやったときに前野くんにゲストで出てもらって、みんなでライブ録音したんですよ。一緒にやってみてすごく良かったから前野くんがいいなと思って。そのあとに「ドリフター」を一緒にやらせてもらって、今度は俺たちの曲で前野くんに参加してもらった。だからお返しし合ってるみたいな感じかもしんない。
──「Na Na Na」は? これは下岡くんの曲だけど、佐々木くんがリードで歌ってますよね。
下岡 そうですね。俺の曲を健ちゃんが歌うとか、健ちゃんの曲に自分が歌詞書くとか、そういうことを次はもう少しやりたいなっていう気持ちがすごくあるんですよ。で、「Na Na Na」は俺がライブで何度か自分で歌ったことがある曲で、このドライブ感からして健太郎に歌ってもらったら、めちゃくちゃハマるんじゃないかな?と思って。
佐々木 シンガーソングライターが2人いるんで、そういうことをやっても面白いんじゃないかなって。今はそういうことをできる感じになってるんですよね。
DISC1
- 荒野
- Light Bright(New mix)
- 確率の夜、可能性の朝(Feat.前野健太)
- 曖昧なハートビート
- 最後のfuture
- PARADOX(New mix)
- ガールフレンド
- アンセム
- Living in the City
- ナイトライダー2
- Hello
- のどかないなかのしずかなもぐら
- バタフライ
- Na Na Na(new)
- Hybrid
DISC2
- TEXAS
- SAVANNA
- LOW
- ロックンロール
- TOWN
- UNKNOWN
- No Way
- 平行
- 戦争がおきた
- 風の中さ
- PHASE
- Fine
アナログフィッシュ
ボーカリスト2人を擁するロックバンド。1999年に佐々木健太郎(Vo, B)と下岡晃(Vo, G)がデモテープ作りを始めたのをきっかけに結成される。2001年よりサポートドラマーを迎えて都内でライブ活動開始。2002年に斉藤州一郎(Dr, Vo)が加入し、3人編成となる。2003年にアルバム「世界は幻」とミニアルバム「日曜日の夜みたいだ」を発表。これが好評を得て、2004年6月に2作を1枚にまとめたアルバム「アナログフィッシュ」をリリースする。その後もクオリティの高い作品を連発。「FUJI ROCK FESTIVAL」をはじめとする夏フェスにも多数出演してきたが、2008年3月にドラムの斉藤が病気を理由にバンドを脱退。同年7月、総勢7名のゲストドラマーを迎えたアルバム「Fish My Life」をリリースした。2009年10月に新木場STUDIO COASTで開催した結成10周年ライブ「10×10×10」で、斉藤が再びバンドに復帰。2011年9月には最新アルバム「荒野/On the Wild Side」をリリースしている。