ビリー・ジョエル来日公演記念特集|著名人7名が愛してやまない世界的“ピアノ・マン”の楽曲 - 音楽ナタリー 特集・インタビュー (original) (raw)

ビリー・ジョエルが1月24日に東京・東京ドームでライブを開催する。彼の来日公演は2008年の東京ドーム以来、実に16年ぶりとなる。

1970年代から90年代にかけて世界的ヒットを連発したシンガーソングライター、ビリー・ジョエル。90年代末以降は新作をほとんど発表せず、ライブパフォーマーとしての活動をメインとしながらも、彼はクラシックの素養と親しみやすさを感じさせるピアノ演奏、そして情感豊かな歌声で今なお世界中で愛され続ける“ピアノ・マン”だ。今年で発売50周年を迎えた「Piano Man」をはじめ、「Just the Way You Are」「Uptown Girl」など彼の代表曲は多くの人が耳にしたことがあるはず。

来日公演開催を記念し、音楽ナタリーでは特集を展開。小島秀夫、小関裕太、Jean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION)、TETSUYA(L'Arc-en-Ciel)、冨田ラボ、ハラミちゃん、ビッケブランカというビリー好きの著名人7名の選曲とコメントを掲載する。実際に聴いて確かめられるよう音源も併せて掲載しているので、再生してその美しいメロディと参加者たちの熱い言葉を味わいながら、長きにわたり人々を虜にするビリーの世界に浸っていただきたい。

構成 / 湯澤穂波

小島秀夫

小島秀夫

選んだ楽曲

  1. The Stranger(Album Version) / ストレンジャー(アルバム・ヴァージョン)
  2. Honesty / オネスティ
  3. She's Always a Woman / シーズ・オールウェイズ・ア・ウーマン
  4. Just the Way You Are / 素顔のままで
  5. Pressure / プレッシャー

テーマ:ビリー・ジョエルから香るNY

高校生の後半にUK音楽にハマるまで、よく聴いていたのが、ビリー・ジョエルです。当時は、誰もがラジオを聴きながら勉強していた時代。そこでビリーと出会い、まずは、エアチェック、その後、LPを購入、CDへの買い替えを続けてきたど真ん中のビリー世代です。実は、ビリー・ジョエルに精通した理由は、もう一つあります。高校の時にイギリスから来た非常勤の英語教師がテレコ(テープレコーダー)を持ち込み、毎回“ビリー・ジョエルの歌を聴く”という変わった授業を行っていました。彼女が帰国する直前には、みんなの前で“好きな曲を1曲歌う”と単位が貰えました。それもあって、ビリー・ジョエルの曲は、ほとんど歌えるようにもなりました。勿論、前回の来日公演である2008年の東京ドームのLIVEにも行きました。

1. ストレンジャー(アルバム・ヴァージョン)
中学生の頃、ラジオから流れてきて、鳥肌がたった曲。おそらくビリー・ジョエルの名前を、僕が初めて認知した瞬間だったと思います。イントロの気だるいピアノからの口笛(当初は別の楽器で演奏するはずのパートでしたが、プロデューサーのフィル・ラモーンの勧めで口笛をそのまま採用)、続いて格好いいギターラインが!最高に格好良かったのを覚えています。ラストにもう一度、口笛がかかるアルバム・ヴァージョンが好きです。「ストレンジャー 40周年記念デラックス・エディション」とかも買っています。この「ストレンジャー」が、いちばん好きなアルバムです。

2. オネスティ
日本では猛烈に流行った曲。後にCMでも使われました。実は高校のクラス会で仲間と一度だけのバンド(4ピース)を結成、この曲を披露しましたが、集まっての練習を一度もしなかったため、散々な結果に終わるという苦い経験をしました。カラオケに行くと、必ず歌う曲でもあります。この曲が収録されている「ニューヨーク52番街 40周年記念デラックス・エディション」も持っています。
ニューヨークと聞くと、真っ先にビリー・ジョエルが浮かびます。
そのイメージをつくったのは、この曲や「ニューヨーク52番街」というアルバムタイトルや、「ニューヨーク物語」(「さよならハリウッド」も収録されている)などの影響でしょう。

3. シーズ・オールウェイズ・ア・ウーマン
ビリー・ジョエルのバラード曲の中では、いちばん好きな曲です。掴みどころがなく、魅惑的で、ビリーを翻弄する女性(当時の奥さん)を歌いあげたこの歌詞も、感受性の強い当時の僕には、深く刺さりました。

4. 素顔のままで
これもアルバム「ストレンジャー」からのシングル・カット曲。人生でいちばん聴いてきた曲かもしれません。“I love you just the way you are”のセンテンスが好きでした。また“just the way you are”を“素顔のまま”でと訳している邦題も、センスあり!と感じていました。まだまだ中坊でしたから。このバラードも歌いやすいので、カラオケではよく歌います。

5. プレッシャー
すでにUKロックにどっぷり浸かっていた大学時代に出会った曲。この曲が収録されている「ナイロン・カーテン」までは、ビリーのLPを買い続けていました。アナログシンセを前面に、80年代に流行ったニューウェーブを意識しての曲作り。心のどこかで、ビリーも流行に迎合している?と揶揄しつつも、ニューウェーブのフォロワーであった僕には、うってつけの曲でした。80年代に隆盛したMTVにも倣って作られたこの曲のSF風の凝った映像にもキュンとなりました。それまではピアノを弾き語りするビリーの映像を普通に編集したPVでしたから。仕事で“プレッシャー”を受ける際には、この曲をよく聴いて、凌いでいます。

小関裕太

小関裕太

選んだ楽曲

  1. Honesty / オネスティ
  2. New York State of Mind / ニューヨークの想い
  3. Baby Grand / ベイビー・グランド
  4. The Longest Time / ロンゲスト・タイム
  5. Vienna / ウィーン

テーマ:琴線に触れる一曲たち

①Honesty
この曲がなければ僕はBilly Joelに出逢っていませんでした。知るきっかけをくれた曲。
父がよくカラオケで歌っており、Billy Joelが気になり小学生の頃にレンタルショップでCDを大量に借りてウォークマンに入れて聴きはじめました。
英語が喋れる父を見て、英語が喋れるようになりたいと思っていたこの時期。
スローなテンポで言葉が追いやすく心に響くメロディーと歌詞。この曲の歌詞の和訳をノートに書いては消してを繰り返していました。

②New York State of Mind
次にはずせないのは、僕がBilly Joelの曲の中で最も好きだと言えるこの曲、「New York State of Mind」。
ジャズの美しさに目覚めた曲です。濁った和音、憂鬱に響くピアノ音、僕の琴線に包み込むように触れ一瞬で虜になりました。
妹がやめて寂しく置かれていたピアノを開き、この曲を練習しはじめました。
この頃からでしょうか、ニューヨークへの憧れを抱きはじめました。そして19歳の頃にようやく一人旅で訪れました。マンハッタンの中心にあるデパート1階にグランドピアノが置いてあり、誰もいないところでこの曲を1人で弾いたドキドキ感を今でも覚えています。

③Baby Grand
次いでこちらはブルース。
Billy Joelをきっかけに80's musicに没入し、「We Are The World」を中心に様々なアーティストを聴くようになりました。その中でもとびきり光り輝いていたRay Charlesとのデュエット曲があると知って無我夢中で再生。想像以上の聴いたことないサウンドが流れてきました。80'sサウンドを聴きはじめて間もない僕には鳥肌ものの、これまた新しい音楽体験でした。

④The Longest Time
メロウな選曲が続いたので、どの曲に絞るか悩んだ中でも、アップテンポなこの楽曲。
例えば僕が舞台などで朝発声をしているときに、「The Longest Time」を「ウォー♪」と歌っていると、Billy Joel好きが自然と集まってきて合唱になる不思議な曲です。
思わず指でクリップしたくなって、ワクワクします。まだ聴いたことない方には楽しい気分になりたいときにピッタリだと思います。そして僕がもし歌っているのが聞こえたら一緒に合唱してください(笑)。

⑤Vienna
最後はまたメロウな曲になりますが、僕がリラックスしたいときにこのメロディーが沁みていました。
メロディーだけでなく歌詞もまたグッとくる。
高校生の頃に感覚的に好きになりましたが、改めて諦聴してみると、僕も含めた急ぎすぎている現代の人々に強く背中を押してくれる大事な曲です。
時代を超えても様々な年代に響く力を持っています。

Jean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION)

MAN WITH A MISSION。右から2番目がJean-Ken Johnny。

MAN WITH A MISSION。右から2番目がJean-Ken Johnny。

選んだ楽曲

  1. Piano Man / ピアノ・マン
  2. She's Always A Woman / シーズ・オールウェイズ・ア・ウーマン
  3. We Didn't Start the Fire / ハートにファイア

テーマ:出会イノ曲好キナ曲

絞ルノガ大変デシタガビリー・ジョエルトノ出会イノ曲カラハジマリ好キナ曲ヲ3曲ホドアゲサセテイタダキマシタ。
人生ノ様々ナ情景ヲ叙情的ニカツ鮮明ニ描クビリー・ジョエル。
ソシテ一番凄イト感ジルノハソノ情景カラ浮カビアガリ溢レテイル底知レヌ人間愛デス。

Piano Man
記憶ガ正シケレバ、多分僕ガ一番最初ニ、アーティストヲ認識シタ上デ聞イタ洋楽楽曲ノ1ツ。
ビリートノ出会イモコノ曲。一番最初ニ聞イタ洋楽ハ?デ答エル楽曲デショウカ。
場末ノバー、日常ニ疲レタ人々。オソラク自身ノ人生ニモ葛藤ヲ感ジテイルピアノ演奏者ト
ソレニ耳ヲ傾ケル人々ノ様々ナ人生模様ガ垣間見エル珠玉ノ1曲デス。

She's Always A Woman
自由奔放、自立モシテイルガ時折情緒不安定、癇癪モ起コスシ振リ回サレッパナシ、デモ僕ニトッテハ最高ノ女性ナンダ。
モノトーンダガ鮮明ニ様々ナ表情ヲ魅セル日常風景ノソノ女性。
ソレヲタダタダ愛情ト優シサデ眺メテイル男性ノ視線ノ映像トイウカ情景ガ聞クタビニ浮カビマス。
小悪魔的ナ女性ニ翻弄サレル恋ヲ歌ッテルト思ワレガチダガ、
様々ナ問題ヲ抱エナガラモ人生ト世界ニヤラレテタマルカト気丈ニフルマウ女性ニ恋ヲシテ、
ソシテ去ラレテモナオ愛シテイルコトヲ歌イアゲテイルヨウニ感ジマス。

We Didn't Start the Fire
時代ヲ振リ返リナガラ歴史トイウ大キナ渦ト炎ノ無常感、
人ノ無力感モ歌イ上ゲナガラソレデモ闘ッテイク強サヲ感ジサセルクロニカル的要素ヲ持ツ最高ノロックアンセムダト思イマス。

TETSUYA(L'Arc-en-Ciel)

TETSUYA(L'Arc-en-Ciel)

選んだ楽曲

  1. Honesty / オネスティ
  2. Pressure / プレッシャー
  3. Uptown Girl / アップタウン・ガール
  4. Tell Her About It / あの娘にアタック
  5. The Stranger / ストレンジャー

テーマ:MY FAV

僕がはじめて自分で買ったレコードがBilly Joelの“An Innocent Man”でした。
“Uptown Girl”がお気に入りの曲です。

その前のアルバム“The Nylon Curtain”収録の
“Pressure”のメロディーに衝撃を受けて虜になりました。

僕が綺麗なメロディー、美メロを創るのが得意なのは多分Billy Joelの影響だと思います。

冨田ラボ / 冨田恵一

冨田ラボ / 冨田恵一

選んだ楽曲

  1. She's Always a Woman / シーズ・オールウェイズ・ア・ウーマン
  2. Tell Her About It / あの娘にアタック
  3. Allentown / アレンタウン

テーマ:強い曲

“強い曲”とは曲の骨子―テーマと曲調、歌詞とメロディ、メロディと和音それぞれの関係―の強度が高いことを指しています。昔からビリー・ジョエルには優れたアメリカン・コンポーザーとのイメージを持っていましたが、選曲した3曲はどれも本当に強い曲です。
1.は6/8拍子を中心にしながら変則的な拍数を挟み、サビ中での転調が美しい曲です。ジャズの技法によらない美しい転調はクラシックっぽいですね。BJの特徴のひとつです。
2.は60年代のコーラス・グループを模すというコンセプトが素晴らしいです。1983年に“引用”は新鮮な手法でした。それでいて意表をつくサビの転調など音楽的工夫も楽しめます。
3.ではAメロ、サビとも似たフォルムのメロディを保ちながら、サビの最後にイヤー・キャッチなメロディを配置、しかもそれは語尾部分でスキャットのように聴かせるという大変効果的な手法を使っています。このアプローチにもクラシックの影響を感じます。
以上3曲は私もカヴァーしたことがありますが、どうアレンジを変えようと良い曲のままでした。曲の強さとはそういうことだと、そのとき実感しました。

冨田ラボ / 冨田恵一

プロフィール

冨田ラボ(トミタラボ)/ 冨田恵一(トミタケイイチ)

音楽家、プロデューサー。冨田ラボとして今までに7枚のアルバムを発表している。2022年6月に細野晴臣、AAAMYYY、早見沙織、吉田沙良(モノンクル)、磯野くん(YONA YONA WEEKENDERS)、TENDREらを迎えた3年ぶりのアルバム「7+」を発表。2023年6月に活動20周年を記念したアルバム「冨田恵一 / 冨田恵一 WORKS BEST 2 ~beautiful songs to remember~」をリリースした。音楽プロデューサーとして多数のアーティストに楽曲を提供する傍ら、オーディエンスを前に楽曲を作り上げる「作編曲SHOW」や「Red Bull Music Academy」でのレクチャーなども実施。自身初の音楽書「ナイトフライ -録音芸術の作法と鑑賞法-」は横浜国立大学の入学試験問題に採用された。

冨田ラボ – Tomita Lab

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冨田恵一 (@tomitalab) | Instagram

冨田恵一の記事まとめ

ハラミちゃん

ハラミちゃん

選んだ楽曲

  1. The Stranger / ストレンジャー
  2. Honesty / オネスティ
  3. Just the Way You Are / 素顔のままで
  4. Piano Man / ピアノ・マン
  5. Uptown Girl / アップタウン・ガール
  6. New York State of Mind / ニューヨークの想い

テーマ:私と母の想い出

ビリー・ジョエルは母の影響で好きになりました。
テンポ感、歌唱力は最高に素晴らしくミュージック・ビデオも好奇心を掻き立てられ楽しかったと母から聞きました。
当時はVHSもなかったそうでTVから流れるミュージック・ビデオに釘付けになり洋楽の番組をくまなく観ては楽しんだそうです。

「ストレンジャー」の魅力はピアノで始まる前奏に泣けると思ったら口笛が始まり想像力がますます掻き立てられるところ。そして前奏が終わったところで別の場面に切り替わり、聴く者をこんなに気持ち良くドッキリさせられるのかと思うばかりです。まさしく曲名通りの「ストレンジャー=別の顔」になる曲だと思いました。ピアノでしか表現出来ない哀愁の曲で、ピアニストとしては驚きの連続ですし、コード進行や転調も素晴らしいです。
「僕らはみんな、別の“顔”を持っている、ずっと隠している顔を誰にも見られていない時だけ、露(あら)わにする」。この歌詞は何度も聴いてもドキッとさせられます。

「ピアノ・マン」は、ストリートピアノでこの曲を演奏させていただいた動画が378万回再生されている思い出深い曲でもあります。コロナ前、観光にいらしていた外国のお客様にも大変喜んでいただいて、ビリー・ジョエルはやはり世界のトップアーティストなんだと改めて実感しました。ピアノを弾いていて私自身もステキな気持ちになるし、イントロが始まっただけでお客様の体も揺れ、一度聴いたら耳から離れない中毒性のある楽曲です。

「Just the Way You Are(素顔のままで)」は王道ラブソング。国境も時代も超える素晴らしい曲だと思います。真偽のほどは分かりませんがポール・マッカートニーが好きな曲という事で最初はそこから興味がわきました。勿論家族も大好きな曲です。ビリー・ジョエルの世界観に惹き込まれて気付いたらこの曲の沼にハマっていました。

ビッケブランカ

ビッケブランカ

選んだ楽曲

  1. Root Beer Rag / ルート・ビアー・ラグ

テーマ:特別な思い入れのある一曲

リードピアノだけでここまで楽しい気分にさせてくれることに衝撃を受けました。
自分が担当していた番組のオープニングソングにも使っていたのでとても思い入れが強く、メロディ、リズム、ピアノの可能性をたくさん学べる一曲です。


ビリー・ジョエル ライブ情報

「ONE NIGHT ONLY IN JAPAN BILLY JOEL IN CONCERT」ビジュアル

ONE NIGHT ONLY IN JAPAN BILLY JOEL IN CONCERT

2024年1月24日(水)東京都 東京ドーム

公式サイト

プロフィール

ビリー・ジョエル

1949年5月9日生まれ、アメリカのニューヨーク州サウス・ブロンクス出身のシンガーソングライター。ポップなメロディと都会的なコンテンポラリーサウンドに加え、現代に暮らす人々のありふれた苦悩や葛藤、生きる喜びなどをリアルな筆致で切り取った歌詞が特徴で、1970年代後半から1990年代前半にかけて世界的ヒットを連発した。これまでに6つのグラミー賞を受賞したほか、トニー賞、ガーシュウィン賞、ASCAPのセンテニアルアワード、ケネディ・センター名誉賞など数々の賞を獲得。全世界で1億6000万枚以上のレコードセールスを記録しており、アメリカでのレコード総売上第6位のアーティストとなっている。はっきりとした発音の歌唱スタイルと、哀感を帯びた美しく親しみやすいメロディからなるビリーの作品はここ日本でも時代と世代を超えて愛され続けている。代表曲は「Piano Man」「Just the Way You Are」「Uptown Girl」「The Stranger」「Honesty」など。

ビリー・ジョエル | ソニーミュージックオフィシャルサイト

ビリー・ジョエルの記事まとめ