映画「ブラックナイトパレード」主題歌担当・Eve×原作マンガ家・中村光インタビュー - 音楽ナタリー 特集・インタビュー (original) (raw)

Eveの新曲「白雪」が配信リリースされた。

「白雪」は中村光の原作マンガを実写化したコメディ映画「ブラックナイトパレード」の主題歌。12月23日に公開されるこの映画では、世界中の子供たちにプレゼントを配るサンタクロースハウスにて激務をこなす“ブラックサンタ”たちの奮闘が描かれる。主題歌を書き下ろしたのは、アーティスト名から明らかなように、クリスマスに縁の深い“Eve”だ。

音楽ナタリーではEveと中村にインタビュー。互いの印象や作品のイメージを聞くと、クリエイティビティを刺激し合う2人の姿が見えた。

取材・文 / 倉嶌孝彦

Eve初のクリスマスソング

──中村さんがEveさんを知ったきっかけは？

中村光 SpotifyのCMで聴いたのが最初の出会いでした（参照：Spotifyが今年の再生回数ランキングを発表、Eveが出演するCMのオンエアも決定）。その後に調べてみたら「呪術廻戦」のオープニングテーマを手がけている人と一緒であることを知って、どんどんEveさんの曲にのめり込んでいって。ミュージックビデオに出てくるキャラクターデザインもすごくよくて、とても素敵な世界観の音楽を作っている方だなという印象でした。

Eve 僕は書店に行ったときに「ブラックナイトパレード」の1巻の表紙を見かけたことをすごく覚えていて。そこに描かれている“顔のないサンタクロース”のイラストが僕のMVに登場する「ZINGAI」と雰囲気が似ていたんですよね。それにビビッときて、ついコミックスに手を伸ばしたのが、「ブラックナイトパレード」との出会いでした。まさか自分が映画の主題歌を作るとは、そのときまったく思っていなくて。

「ブラックナイトパレード」1巻書影 ©中村光 / 集英社

中村 私も、まさかEveさんとご一緒できるとは思ってなくて。よく「廻廻奇譚」をカラオケで娘と一緒に歌っていたんですよ。だから映画の主題歌がEveさんに決まったときはすぐ娘に自慢しました（笑）。

──Eveさんはこれまで何度もアニメのテーマ曲を手がけてきましたが、「ブラックナイトパレード」のような実写映画の主題歌を担当するのは珍しいですよね。

Eve はい。実写映画の主題歌を担当した経験はなかったので、オファーをいただいたときは驚きました。でも“Eve”という名前がクリスマスを連想するものですし、何よりも「ブラックナイトパレード」の物語やキャラクターに惹かれていたので、不安よりも楽しみな気持ちのほうが大きくて、新曲を提供させていただきました。

中村 私、Eveさんの曲の中で「白銀」が大好きなんですよ。だからEveさんが「ブラックナイトパレード」の雰囲気に合わせて冬の曲を書いてくれたのが本当にうれしかったです。

Eve 「ブラックナイトパレード」にはコメディの要素が入っていますが、設定や伏線の中にはちょっと影のある要素もあって。楽曲のアプローチとしては、もうちょっと“闇深い曲”にすることも考えていましたが、監督からお話を伺う中で、もっとクリスマスに振り切った僕なりのクリスマスソングを書いてみたくなったんです。作品の題材がクリスマスですし、それこそクリスマス直前の12月23日に公開される映画とお聞きしたので、老若男女いろんな人たちがクリスマスに思いを馳せて映画館を出られるよう、キラキラしたイメージで曲作りをしていきました。

映画「ブラックナイトパレード」©2022「ブラックナイトパレード」製作委員会 ©中村光 / 集英社

映画「ブラックナイトパレード」©2022「ブラックナイトパレード」製作委員会 ©中村光 / 集英社

中村 Eveさんにとっても初めてのクリスマスソングだったんですね。

Eve はい。もともと曲を季節に結び付けて書くことが好きですし、その中でもクリスマスって普遍的で愛される曲が多いですよね。僕はEveという名前なのもあって、毎年クリスマスに生配信をしているから、クリスマスには縁があるほうですし、いつかこの大きなテーマで曲を書いてみたいとは以前から考えていました。

冬の“独特な匂い”を楽曲に

中村 私、「どのキャラクターに合うかな」と考えながら音楽を聴くのが好きで。「白雪」は、なんとなくクネヒト（劇中で“顔のない黒いサンタクロース”として描かれている登場人物。主人公が務めるサンタクロースハウスの社長）のことが思い浮かんだんですよ。そうしたらEveさんが「クネヒトのことを考えて書いた部分がある」とおっしゃっていて。その気配が楽曲から感じられて面白かったです。

映画「ブラックナイトパレード」©2022「ブラックナイトパレード」製作委員会 ©中村光 / 集英社

Eve うれしいですね。先ほどお話したような“闇深い”イメージで描いた最初のデモがクネヒトのことをイメージして作ったもので、そこから何度かやりとりをするうちに、クリスマスっぽさをもっと強く打ち出したほうがいいんじゃないかという話になりまして。その結果、皆さんに聴いていただいている「白雪」が完成したんですが、この音源から中村先生がクネヒトのことを感じ取っていただけるとは思っていませんでした。

中村 Eveさんは冬を表現するのがすごく上手ですよね。

映画「ブラックナイトパレード」©2022「ブラックナイトパレード」製作委員会 ©中村光 / 集英社

Eve 僕、冬には“独特な匂い”があると思っているんですよ。温かい部屋から外に出たとき、ちょっと鼻にツンとするような感覚。例えばこの曲を聴いた人が、毎年冬になって、冬の匂いを感じ取ったときに「白雪」という曲のこと、「ブラックナイトパレード」を観に行った日を思い出してほしいと思って、なるべく季節に寄り添う形で書いてみました。僕自身、学生の頃に聴いていた音楽を聴くと当時のことを思い出すし、懐かしい土地を訪れたら当時聴いていた音楽を思い出すんですよね。特にクリスマスは1年に1度の大切な日だから、クリスマスを過ごす人たちに寄り添える楽曲になっていたらうれしいですね。