フィッシュマンズ プレイリスト企画|U30世代(井上花月、北村匠海、崎山蒼志、鈴木真海子、高橋響)が選ぶ名曲 - 音楽ナタリー 特集・インタビュー (original) (raw)
フィッシュマンズが2025年2月18日にバンド史上最大規模のワンマンライブ「Fishmans『Uchu Nippon Tokyo』」を東京・東京ガーデンシアターで開催。また翌19日には、茂木欣一(Dr)企画・監修のもと、1987年のバンド結成初ライブをはじめとするデビュー前の貴重な音源、ラジオ出演時の同録、未発表ライブ音源やデモテープをカセットテープ、DAT、マルチテープなどから2年をかけてデジタルアーカイブ化したアンソロジーアルバム「HISTORY Of Fishmans」がリリースされる。
2018年8月に各種ストリーミングサービスで楽曲配信がスタートして以降、世代を超えて新たなリスナーを獲得しているフィッシュマンズ。昨今のライブでは、ここ数年で彼らの魅力に目覚めたであろう10~20代の若きリスナーの姿も多く見受けられるようになった。音楽ナタリーでは、ワンマンライブの開催およびアンソロジーアルバムの発売を記念してプレイリスト企画を実施。フィッシュマンズの名曲「新しい人」になぞらえて、“新しい人”=U30世代の5人のアーティストに、フィッシュマンズのフェイバリットソングを選曲してもらった。
構成 / 望月哲ヘッダーイラスト / 大橋裕之
井上花月(Laura day romance)
「フィッシュマンズとわたしの距離」
コメント
わたしより音楽が好きそうな母のCDラックをよく漁っていた頃、「MELODY」や「Neo Yankees' Holiday」を見つけた。食器棚の上に置かれたCDプレーヤーに盤をのせるため、木製の丸椅子に登るのが大好きだった。再生すると、廊下とキッチンふた手に分かれた小さなスピーカーから音が流れ出す。高校生になってからはコピーバンドばかりしていて、自分がちゃんとコピーできる楽曲となるとフィッシュマンズは難しくてすこし離れてしまった。大学の、楽器の上手い先輩たちはフィッシュマンズをふつうに演奏していて、それはそれは格好よかった。周りの音楽好きの多くはフィッシュマンズを聴いていた。わたしも真似して聴いていた。18歳から23歳までの恋人といるとき、退廃的などうしようもない気持ちになるほど、フィッシュマンズの音楽をぴったり重ねて、夏の夜ベッドの中で、明け方電車に座って、大学の帰り道に聴いた。卒業してだいぶん経った最近、「むらさきの空から」がよいよと教えてもらい、ちゃんとはまった。また近くに行けたような気がした。大きな存在すぎて考えたこともなかったけれど、もう人生の半分くらいは聴かせてもらっている。
北村匠海(DISH//)
「いかれちまった、連れてかれちまった。海、宇宙。」
コメント
フィッシュマンズに出会った時、心地のいい寂しさと、どこまで覗いても底の見えない海を目の前にしてるみたいな感情になりました。
選んだ楽曲は僕がいつまでも好きな曲たちですが、僕の中での名盤はいつまでも「宇宙 日本 世田谷」なのです。
ずっと心の中で泳いでいるような音楽。こんなアーティストに僕もなりたいものです。
崎山蒼志
「日々と、フィッシュマンズ」
コメント
上京した事で、それまでどこか記号的であった“世田谷”というワードだったりがぐっと近くなった。
自分の好きな人たちがフィッシュマンズの曲を歌ったり、かける。
これからも僕の日々はフィッシュマンズの音楽と共にあるんだろうなと感じた。
プロフィール
崎山蒼志(サキヤマソウシ)
2002年生まれ。静岡県浜松市出身のシンガーソングライター。2018年5月に出演したインターネット番組をきっかけに注目を浴びる。同年12月に1stアルバム「いつかみた国」を弱冠16歳でリリース。2021年1月にアルバム「find fuse in youth」でメジャーデビューを果たした。最新アルバムは2023年8月発表の「i 触れる SAD UFO」。音楽活動と並行して雑誌で執筆活動を行うなど、独自の言語表現で文芸界からも注目を浴びている。
崎山蒼志 official (@soushiclub) | X
鈴木真海子
「結局フィッシュマンズ」
コメント
中高生のとき。1時間半かかる通学時間は、ひたすら音楽を聴くか本を読んでいた。兄のおさがりのiPodもボロボロになり、そのうち自分のiPhoneをゲットして今度はネットを使いながら音楽を漁っていた。SoundCloudで、なんでもいいからとにかく音を流していたときに「こんな変な音楽があるのか!」と衝撃を受けたのがフィッシュマンズの「BANANAMELON」だった。DJ dooooさんが毎夏に出しているミックステープにこの曲が入っていて、自分の発想になかった音が面白くてかっこよくて、それからフィッシュマンズの音楽をひたすら漁った。サンキューサンキューフォーマライフ。なんでか、フィッシュマンズを聴くと幼稚園くらいのときを思い出すんだよな~。その時は全く知らないし聴いたこともないのに、懐かしいとも違くて、あったかいけど少し寂しくて、でも一番落ち着く音がする。それが私のフィッシュマンズ!
高橋響(Cody・Lee(李))
「I'M FISH. I'M STILL SWIMMING.」
コメント
フィッシュマンズの音楽はまるで、淡々と続いていく生活。
大きく広い歌の中でコードがひとつ変わったり、スネアのタイミングが変わったり、それはまるで、生活の中で生まれた心のさざなみをキャッチしているようだ。
大学生の頃、バイトをしていたレコードショップでよく先輩が「空中キャンプ」を流していた。それがフィッシュマンズとの出会いだった。
バイトの帰り道、池袋駅東口の喫煙所でよく「ナイトクルージング」を聴いた。池袋PARCOのデジタルサイネージはちかちかとうるさくて、東京の湿っぽい匂いがしたのを覚えている。
ホワイトデー、彼女に「MELODY」のレコードを貰った。彼女の1番好きな曲は「MELODY」らしい。じゃあ僕の1番好きな曲も「MELODY」だ。
フィッシュマンズの音楽はまるで、淡々と続いていく生活。
綺麗な歌の中のグロテクスなバイオリンは、極彩色のリバーブは、それはまるで、綺麗な事ばかりではない生活みたいで、自分だけのもののように感じた。
公演情報
フィッシュマンズ「Fishmans『Uchu Nippon Tokyo』」
2025年2月18日(火)東京都 東京ガーデンシアター
FISHMANS are
茂木欣一(Dr, Vo) / 柏原譲(B) / HAKASE-SUN(Key) / 木暮晋也(G) / 関口“dARTs”道生(G) / 原田郁子(Vo)
Special Guests : UA / マヒトゥ・ザ・ピーポー(GEZAN)
プロフィール
フィッシュマンズ
1987年に佐藤伸治(Vo, G)を中心に結成。1991年に小玉和文(ex. MUTE BEAT)のプロデュースのもと、シングル「ひこうき」でメジャーデビューを果たす。当時のメンバーは佐藤、茂木欣一(Dr, Vo)、柏原譲(B)、ハカセ(Key / のちのHAKASE-SUN)、小嶋謙介(G)。ライブではZAKがPAで加わるなどして、徐々に独自のサウンドを作り上げていく。ハカセ、小嶋の脱退を経て、1996年にアルバム「空中キャンプ」をリリース。レゲエを軸に、ダブやエレクトロニカ、ロックステディ、ファンク、ヒップホップなどの要素を取り入れた、独特の世界観で好評を博す。その後も木暮晋也(G / Hicksville)、ダーツ関口(G / ex. SUPER BAD)、HONZI(Key, Violin)をサポートメンバーに迎え、音源リリースやライブ活動を展開する。1998年末をもって柏原がバンドを脱退し、その後の動向が注目される中、1999年3月に佐藤が急逝。これによりバンドは活動休止を余儀なくされるが、2005年夏に「RISING SUN ROCK FESTIVAL」で、ゲストボーカルを迎える形で復活を果たした。その後も単独ライブやイベント、フェスなどで不定期にライブを実施。2025年2月18日に東京・東京ガーデンシアターで単独ライブ「Uchu Nippon Tokyo」を開催。翌19日にはアンソロジーアルバム「HISTORY Of Fishmans」が2025年2月19日に発売される。