アイドルネッサンス ラストアルバム「アイドルネッサンス」特集|彼女たちがいた風景 (5/5) - 音楽ナタリー 特集・インタビュー (original) (raw)

それぞれが考えるアイドルネッサンス像

男性陣コメント

頃安祐良(映画監督)

頃安祐良

結果として最後のMVになった「前髪」のMV作成の依頼が来て、アイデアを考えてるときにおそらく無意識に、本当に無意識に脳みそのどこかの細胞の1つくらいで「このMVが最後になるかもしれない」って意識があったのかも。と、今になって感じている。
でもそれは初めてライブを観たときから感じてたことでもあって。
それくらいあの真っ白な衣装で歌い踊る彼女たちの姿は透明で儚い存在だった。

アイドルネッサンスとはなんだったのか?
MV監督としての感覚でまとめるなら、サプライズや、ワンカットアカペラ、フィルムと縦動画のミックス、など、一緒にいろんな映像に挑戦させてくれる存在。
オタクとしての感覚でまとめるなら、白昼夢。
アイドルネッサンスの音楽を聴きながら街を歩いてると、どこかにあの人見知りで緊張した面持ちで笑う彼女たちが立ってるんじゃないかとベタに思ったりしてる。

石野理子がツーショットで写真を撮らせてくれないこと。
南端まいながMV撮影の待ち時間のとき、ほかのメンバーが全員寝てる中で1人、カメラを持って楽しそうにロケ地を探検してる姿。
新井乃亜に「箱推しだから」って伝えても絶対信じてくれなかったこと。
比嘉奈菜子が「YOU」のサプライズ映像を撮ったあとに「本当にありがとうございました」と大泣きしながら伝えてくれたこと。
百岡古宵がラストライブ後の挨拶で「頃安さんが作るMVがすごい好きでした」と、大泣きしながら伝えてくれたこと。
宮本茉凜が「太陽と心臓」のMV撮影のときに緊張から泣いてしまったこと。
原田珠々華が「頃安さんに弟子入りしたい」と冗談で言ってくれたこと。
野本ゆめかの期末テストの英語の点数が低すぎて笑ったこと。

どうでもいいことの方が、覚えてます。なんでだろ。なんかそれくらい自然に近くにいて、近くにいることが当たり前だったんだな。いなくなって初めて気付きました。

今頃どこでどうしてるのかな。目に浮かぶ照れた後ろ姿に会いたいな。

※特集公開時、頃安祐良監督のコメントに一部記載漏れがあったため追記しました。

サクライケンタ(Maison book girlプロデューサー)

サクライケンタ

「それでいいの」

僕がアイドルネッサンスさんの解散を知ったのは、とある仕事の帰りのタクシーの中でした。
いつものようになんとなく自宅に帰るタクシーの中でTwitterのタイムラインを見ていると、「アイドルネッサンス解散」の文字。

僕は毎日のまいなちゃんのおやすみ動画を楽しみにしていたり、普段から曲を聴かせていただいたり。本当に普通のファンでした。
ハマったきっかけは「二丁ハロ(現・二丁目の魁カミングアウト)」に僕が提供した楽曲「耳をすませば」を名曲ルネッサンスでカバーしたい、というお話を照井さんからいただき、その後実際に披露しているライブ映像を観て、「なんだこれは!! めちゃくちゃいい!」というところからで。

実際には僕のプロデュースしているMaison book girlのメンバーが大ファンということも一因でもあり、「この日はアイドルネッサンスさんの生誕イベントがあるからどうしてもスケジュール空けて下さい!」と言われスケジュール空けたりして笑。そんなにいいのかー、とかブクガメンバーがかぶっている「ル」のキャップかっこいいなあとか。そんなさまざまな理由で興味を持ち始め、ほかの曲、オリジナル曲もめちゃくちゃ聴き始め、自分もただただファンになっていったのです。

僕が一番好きなアイドルネッサンスさんの曲「前髪」

“決まらない前髪をまた風が乱してゆく”という歌い出し、
“自分になりたいと焦れば焦るほどひとりぼっちが迫って来ていじわるな世界”
というAメロの歌詞にも垣間見える少女性。
そして、シンプルなコード進行に乗った綺麗なメンバーの歌声のセンチメンタルなメロディ。耳に痛くない声を生かしたアレンジ。
さらにそれを「決まらない前髪」と捉えてしまう感性。
僕は単純にファンになっていたのでした。

そんな最中の突然の解散発表。

腐っても同じアイドル業界の1人として、ただただ、なんで? どうして? 新曲まだ聴きたいよ? やめないでよ。という熱い思いから僕は気付いたら(感情的になった余計な)ツイートをしていました。
(140文字ではうまくまとめられませんでした。。。。この場を借りて謝罪させていただきます。その節は申し訳御座いませんでした。。。)

だけど、その中にも、「大切な物は突然なくなる」ことの方が多かったりするところに純粋な少女性を感じてしまったり。
アイドルに限らず、自分の大切な人だったり。「今」を、大切にしてほしいという誰もが見て見ぬ振りをしがちなメッセージをアイドルネッサンスは最後にまた教えてくれた気がします。

“きこえなくなった音。もう会えなくなった子のこと。さみしく思っても 何もあきらめないで”
という言葉を今でも心のどこかで信じています。

最後に、このたびはラストアルバムにしてベストアルバム「アイドルネッサンス」発売本当におめでとうございます!

戻らないこと、風景、温度、体温、空気、「ねぇ、おやすみ」ってまた聴かせてください。

タカハシヒョウリ(オワリカラ)

タカハシヒョウリ

アイドルネッサンスとは、呪いです。
青春という呪い、音楽という呪い、アイドルという呪い。
誰もが縛られ、無意識に弄んでしまう、そんな呪いに彼女たちは真正面から向き合っていました。
音楽の歴史は、呪縛の歴史です。
音楽の中に時代が、感情が、システムが呪縛されます。
時代の中に、感情の中に、システムの中に、音楽が呪縛されます。
そんな入れ子構造を、僕たちはポップミュージックと呼んでいます。
彼女たちの小さな体を通過した音楽たちは、赤子のようにたおやかでした。
カバーしていただいた自分の曲も、そうでした。
彼女たちは特異な環境の中で(もしかしたら本人たちの知らぬ間に)、呪いを扱う存在になりました。
僕たちが、アイドルネッサンスの中に見た光は何でしょうか。
ルネッサンスという言葉は、「暗黒時代からの再生」を意味します。
呪いの中にありながら、そこから立ち上がってくる輝くものがルネッサンスです。
つまり、アイドルネッサンスとは、祝福でした。

追伸、
浄化されたこれらの音楽が、彼女たちの中に、何の残留物質も残していないと、誰が断言できるでしょうか。
今もって彼女たちは“特別"です。
これからのそれぞれの活動が楽しみです。

ナカG(イラストレーター)

ナカG

アイドルネッサンスを知ったのはTIF2014からなので結構はじまりから見れたのではと思っています。
始めて見たアイドルネッサンスのライブは輝きが凄くて一瞬で大好きになりました。
彼女たちのひたむきな歌声とパフォーマンスを見ると「僕も仕事がんばろう!」という気持ちにさせてくれるので、締め切りが結構厳しい時にもササっとライブを見に行ってやる気をもらって、帰って仕事の続きをしたりしていました。

そんな私の熱い想いが通じまして、公式にTシャツやバッジなどのグッズも作らせていただきました。
アイドルネッサンスを1番上手く描けるのは俺だ!と思っていたのでもうグッズを作る事が出来ないのは残念でなりません。
解散しても各メンバーのみんながグッズが必要になった時は是非ナカGに声をかけて欲しいなと思っています。