WOWOW「INVITATION/DA PUMP」収録現場レポート|m.c.A・T、AK-69、Crystal Kayとのコラボで見せたグループの現在地 - 音楽ナタリー 特集・インタビュー (original) (raw)
「INVITATION」にとって初めてのダンス&ボーカルグループの登場だ。1997年にデビューしたDA PUMPは、J-POPの中で新しいシーンを切り拓き、その後のダンス&ボーカルグループの活躍の先駆けとなった。その彼らが、今年でデビュー25周年を迎える。今回の「INVITATION」は、オリジナルナンバーはもちろんカバーやコラボも満載で、にぎやかな収録となった。「25周年という機会でもあったので、今のDA PUMPを一番わかりやすく表現することと、一緒に歌いたかった人と歌うというのを真っ先に考えました」とISSA。
いつもは楽器隊がステージを埋め尽くすのが当たり前の「INVITATION」の収録風景だが、この日は勝手が違っていた。サポートミュージシャンはキーボードの斉藤アリア1名のみ。DA PUMPのメンバー6人が自在にパフォーマンスできるよう、フロアはすっきり整えられている。リハーサルもサウンドチェックではなく、メンバーの動きとカメラワークの確認がメインで、いつもとは進行も雰囲気も異なっていた。しかし面白いもので、チェックにかかる時間には大差がない。スタッフはサウンドチェックするのと同じくらい入念に、メンバーとカメラの位置を確かめていく。番組の中盤で披露された「U.S.A.」と「Dream on the street」はメンバー全員でのパフォーマンスとなった。2018年にDA PUMPが放った大ヒット曲「U.S.A.」に対して、「Dream on the street」は昨年リリースされ、グループ初のチャート1位を記録した曲。ISSAの言う「今のDA PUMPを一番わかりやすく表現する」2曲だ。メンバーたちの華やかなステップが、広々としたフロアに映える。
コラボゲストの収録もスムーズに運ぶ。Crystal Kayがスタジオに入り、バラードナンバー「All My Love To You」を歌唱。ISSAとCrystal KayのデュエットにYORIとU-YEAHがコーラスを付けるという、DA PUMPとしては異色のセッティングだ。
ISSA Kayちゃんはひと言で言うと、あったかい歌声の持ち主。「All My Love To You」は絶対似合うだろうなと思って選曲したんですけど、Kayちゃんも納得してくれて。……でも本当は一緒に踊りたかったみたいね(笑)。
YORI Kayさんはソウルフルな歌い方だから、ISSAさんとはちょっとジャンルが違う気がしてたんですよ。しかもそこに自分たちのコーラスが入る。なので「どうなるんだろう?」ってドキドキしてました。でもリハで2人が歌ってるのを聴いて、普通に感動しちゃって(笑)。今までは歌い手さんがいて僕たちが踊ることはあったんですけど、歌い手さんと僕たちが一緒に声を出すことはなかったから、2人のハーモニーに自分たちのコーラスを乗せたときに感慨深くなりました。自分で言うのもなんですけど、すごくいい感じに聴こえて、ただただ一生懸命歌ってました。
U-YEAH 楽しかったですし、貴重な体験をさせていただいたという気持ちでいっぱいですね。
初めてコラボするCrystal Kayとのセッションは、DA PUMPの新しい魅力を引き出した。普段ならダンスをするYORIとU-YEAHがスタンドマイクの前から動かずに集中して歌う姿は、ファンにとってもDA PUMPの歴史にとっても非常に貴重なシーンと言えるだろう。収録後にCrystal Kayが「みんなと踊りたかった」と笑顔で残念がっていたのも、このコラボが成功した証だった。
さらに貴重なコラボが続く。日本を代表するヒップホップMCのAK-69は、真っ白なファーをまとって登場。同い年のISSAとAK-69が仲良しなのは周知の事実だが、音楽の現場でコラボするのは今回が初めてとなる。まさにINVITATIONならではの夢の実現だ。しかもパフォーマンスするのはAK-69の代表曲「START IT AGAIN」で、振り付けと演出を任されたTOMO、KENZO、KIMIの3人は興奮を隠さない。
TOMO AKさんは純粋に俺の中で地元の先輩という立ち位置で、名古屋でやってるときからずっと見ていたので、自分がコラボするというのは想像できなかった。「START IT AGAIN」はAKさんが1回ライブを絶ってニューヨークに行ったときに作った曲で、AKさんはもちろん、ファンの方にとっても大事な曲だと思うんですよ。それを僕たちとコラボして、振り付けもやらせてもらえるということで、本番はもう大緊張でした。DA PUMPのTOMOとしてより、いちファンとして、不思議な感覚になりましたね。しかもAKさんはこの曲を今年の武道館ライブのタイトルに掲げている。10年くらい前の曲なんですけど、それをもう一度掲げるって、相当思い入れが強いんだなと思ったし、だからこそこのタイミングで「START IT AGAIN」を一緒にできて、すげえうれしかったです。
KENZO 今回の振り付けと演出はTOMOくんと2人で考えたんですけど、TOMOくんは名古屋出身で、AKさんのことが大好きなんですよ。僕もAKさんはすごい方だと思っていたけど、大好き度合いではTOMOくんには絶対に勝てない。なので、振り付けするにあたってAKさんのことを研究していたら、僕も大好きになっちゃいました(笑)。DA PUMPだけでリハーサルをして、本番のときにAKさんが入ってくる。そのときに化学反応が起きましたね。その場でしか生まれないインプロビゼーションとか即興力っていうのをすごく感じた。もちろん僕らは振りを踊ってるんですけど、AKさんがいることでそこに命が入ってくる。コラボさせていただいて、自分にとってすごくいい経験になりました。
KIMI ISSAさんとAKさんという同い年同士のコラボにずっとワクワクしてました。本当に特別じゃないですか。AKさんから自分の代表曲を一緒にやろうと言っていただいたのには、すごく深い意味があると思うんですよ。なおかつメンバーが振り付けして一緒にパフォーマンスする。同い年のボーカルとして、どこか深くでつながっている2人でしか感じられない心意気があるのかなって。今日、それを感じられてうれしかったですね。
そんなメンバーの思いと、AK-69&ISSAの心意気が反応し合って、「START IT AGAIN」はストリート感あふれる濃厚なテイクとなった。
そしてDA PUMPとは深い縁のあるm.c.A・Tとのコラボも素晴らしかった。m.c.A・Tはデビュー時からDA PUMPのプロデュースを担当し、現在に至るまで師匠と弟子の関係が続いている。
ISSA m.c.A・Tさんは僕らと切り離せない存在です。言葉のチョイスのセンスがものすごいと思ってます。一見、歌詞に意味がないように感じられるけど、韻を含めて意味がちゃんと込められている。もう言葉のマジシャンですよ。今回のコラボ曲「ごきげんだぜっ!~Nothing But Something~」のタイトルのインパクトもハンパない。普通、タイトルってもっとカッコつけて洋楽みたいな感じにするじゃないですか。それがもろに日本語で、「ごきげんだぜっ!」ですよ(笑)。それでいて、めちゃくちゃ踊れて自分たちもハッピーになれる。もう1曲の「if...」(作詞:m.c.A・T / 作曲:富樫明生)は、こんなメロウな楽曲があるんだってDA PUMPのイメージを変えてくれた。だから今回はこの2曲を一緒にやりたいなと思ってました。純粋に楽しかったです。好きなようにやってくださいよって感じで、師匠も楽しそうでしたし。もし師匠がDA PUMPに入りたいと言うんなら、もともと人数が柔軟なグループなので、1人増えても大丈夫だと思います(笑)。
3月23日にリリースされたばかりの、DA PUMPにとって17年ぶりのオリジナルアルバム「DA POP COLORS」から、「DA FUNK」と「Lean Back ~俺たちのキーワード~」の2曲が披露された。リード曲でもある「DA FUNK」は80年代前半のダンスグルーヴを現代にアジャストさせたナンバーで、DA PUMPのエンターテイナーとしてのセンスの高さを見せつけられる。一方の「Lean Back ~俺たちのキーワード~」は力強いメッセージを掲げた曲で、「DA POP COLORS」の核の1つになっている。この曲では、ディープなリズムに合わせてキレキレのダンスが披露されるのと同時に、ヘビーなグルーヴに乗せてとても大切なことが歌われる。作詞はm.c.A・Tだ。「ほらほらほら次第に元気になった みんな知らずに笑顔になった Yeah! Lean Back! 寄りかかれよ」というフレーズは今の時代の気分を的確に映し出していて、2022年を代表するリリックになるだろう。「あんなアンダーグラウンドな曲にああいう歌詞を乗せるって、m.c.A・Tにしかできないと思います」とISSA。メンバー入魂のパフォーマンスが、楽曲の深さと広さを十分に表現していて、この日のベストテイクになった。
収録の最後は、いつものように古舘伊知郎とメンバーとのトークセッションが繰り広げられた。毎回盛り上がるトークセッションだが、今回は特にメンバーたちが心から会話を楽しんでいるように見えたのが印象的だった。「音楽番組なんですけど、お話の振り幅が本当に広くて、僕たちにはない視点や違う角度からお話をしてくださる。古舘さんは下調べが9割とおっしゃっていたんですけれども、それ以上に僕たちのことを知ってくださってる感じがしたので本当にうれしかったです。素敵な時間でした」とU-YEAH。DA PUMPの始まりから現時点までを網羅したセットリストは、「INVITATION」史上、屈指のものだった。