海蔵亮太×aoiroインタビュー|それぞれが歌う理由 - 音楽ナタリー 特集・インタビュー (original) (raw)

海蔵亮太が2ndアルバム「僕が歌う理由(わけ)」をリリースした。

カラオケの世界大会「Karaoke World Championships」で2連覇し、テレビ朝日系「今夜、誕生!音楽チャンプ」やテレビ東京系「THEカラオケ★バトル」でも優勝を勝ち取るなど、歌うことにひたむきに向き合ってきた海蔵。今作にはそんな彼が自身の“歌う理由”に迫るべく作詞に初挑戦した表題曲をはじめ、NiziU「Make you happy」のアカペラカバーや、3人組コーラスグループ・aoiroが参加した「Everyday Heroes」アルバムバージョンなど計14曲が収録されている。

音楽ナタリーでは海蔵とaoiroの4人による座談会を実施。親交の深い両者ならではの柔和で朗らかなムードの中、歌うことに対する真摯な姿勢を見せてくれた。

取材・文 / 高岡洋詞 撮影 / 曽我美芽

日本語の響きって美しい

──海蔵さんとaoiroのお三方はとっても仲良しだそうですね。

松浦航大(aoiro) (食い気味に)仲良しです!

オノシュンヤ(aoiro) 早かったね(笑)。

海蔵亮太 いつもふざけてるんですよ。(aoiroに)今日はわちゃわちゃしましょ。

──お二組はどんなきっかけで知り合ったんですか?

海蔵 まずSNSで航大くんと知り合って、それからaoiroさんのことを知ったんですけど、楽曲を聴いたら、それぞれの個性が立っているのに、3人合わさるときれいに1つにまとまるのがすごく素敵で。以来ずっと「いつかご一緒できたらいいな」と思っていたんです。

織田智朗(aoiro) 海蔵さんが抜群の歌唱力でカラオケの世界大会まで出ているのは、以前から僕ら3人とも知っていました。僕らのことを知ってくれたのは航大がきっかけで、海蔵さんがラジオ番組(FM NACK5「海蔵亮太 Communication!」)で僕たちの「負けてたまるか」という曲をかけてくれたのをファンづてに知ったんですよ。そこから連絡を取り合うようになりました。

左から海蔵亮太、織田智朗、オノシュンヤ、松浦航大。

松浦 親しくなってからYouTubeでコラボをお願いしたり、レコーディングに立ち会ったりしてきましたけど、海蔵さんは発声面も技術面もほかの歌手とは別次元で、声量っていうか響きがすごくいいんです。人気の理由はこれか!と思いました。あとは「THEカラオケ★バトル」(テレビ東京系)に出たときの動画がYouTubeに上がってるんですけど、コメント欄がですね、あの……(笑い出す)。

海蔵 なんで笑ってんの? 言って言って!

松浦 「クラスの友達を出席番号で呼んでそう」とか「患者のことを病名で呼んでそう」とか、「○○そう」大喜利みたいになってるんですよ(笑)。

海蔵 めっちゃ覚えてるじゃん!

松浦 愛されるのは人柄のおかげもあるんだろうなって。ただ1つ気になるのは、僕きっかけでほかの2人と知り合ったはずなのに、今となってはとんちゃん(織田)と遊んでるんですよね。

海蔵 ちょっと(笑)。タイミングだから!

オノ 海蔵さんほど聴いていて日本語がそのまま入ってくる歌手ってなかなかいないと思うんです。うまい人はたくさんいるけど、個人的には日本語も洋楽っぽく歌う人とか、めちゃめちゃ技術ブチ込んでくる人はあんまり好きじゃなくて。海蔵さんの歌はそのまま染みわたってくるので、飽きずに聴いていられます。寝る前に聴きたい声ですね。

海蔵 日中は聴けないってことですね。

オノ (笑)。

松浦 日中に聴いてもめっちゃいい声ですよ!

──素人なのでつい「うまいなあ」で一緒くたにしてしまいますが、うまさにもいろいろあるんですね。

松浦 その中でも卓越してると思います。ピッチに当てるスピードがめちゃくちゃ速くて移動が鋭いし、抑揚もすごいし、テクニシャンなのに感情がいやらしくなく、しっかり無駄なく響いてくるんです。

織田 大絶賛! その通りだけど。

海蔵 (松浦に)今度一緒に遊びましょう。

松浦 埋め合わせですか?(笑)

──確かに海蔵さんの発音は明瞭で、歌詞を見る必要が一切ないんですよね。そういう歌い方を心がけているのか、自然とそうなるのか、どちらでしょうか?

海蔵 んー、どうなんですかね……日本語が大好きで、「日本語の響きって本当に美しいな」と感じる機会が多かったのが1つあるのと、聴いてる人が日本人だけじゃないということは常に意識してます。言葉の壁はありますけど、音楽には時にそれを超えちゃう力があると信じているので、いろんな国の人に「素敵だな」「日本語って素晴らしいな」と思っていただけるように心がけて歌った結果かもしれません。

──面白いですね。海外を視野に入れた場合に外国語で歌うのではなく、日本語ごと伝えようとする人にはあまり会ったことがないかもしれません。

海蔵 でもほら、日本の人も外国の曲を聴いたとき、意味がわからなくてもいいなって感じるじゃないですか。その逆も絶対にあると思うんです。なので僕は相手の言葉に合わせることは、歌に限ってはあまりしないですね。

aoiro (口々に)すごい。素晴らしい。

海蔵亮太は雰囲気作りの天才

──今作に収録されている「Everyday Heroes」のアルバムバージョンは、海蔵さんとaoiroのコラボレーションによる初の音源なんですよね。

海蔵 はい。シングルバージョンをリアレンジして、コーラスワークを作ってもらって、aoiroさんにコーラスを入れていただきました。僕も一緒にやりたくなって参加しちゃいましたけど。

──レコーディングは3人別々に?

オノ そうです。ほかの人の歌にコーラスを入れるのって自分たちの曲とは感覚が違って、自分を出しすぎてもよくないし、かといって出さなすぎたらaoiroの意味がないので、さじ加減がめちゃくちゃ難しかったですね。

織田 コーラスグループってきれいに1つにまとまってるイメージをされてる方が多いと思うんですけど、僕らの場合はハモりもガンガン自分の声で歌っちゃって、個性がぶつかり合いつつまとまって聞こえるというのが強みなのかなと思うので、自分たちの色を消さないように心がけました。海蔵さんが温かい雰囲気を作ってくださって、やりやすかったです。

オノ 雰囲気作りの天才なんですよ。

松浦 そのために、僕らが一所懸命曲を聴いてるときもたくさん話しかけてくれました(笑)。

海蔵 集中させない環境作りを心がけたんです。

オノ 僕らのレコーディングってめちゃくちゃ緊張するんですけど、そうならないようにすごく気を遣ってくれて、ありがたかったです。

海蔵 僕、レコーディングをピリピリの雰囲気でやったことがないんですよ。

松浦 確かに俺らの現場って硬いよね。音源も。

織田 衝撃的だったのが、YouTubeで海蔵さんと「愛のカタチ」をコラボさせてもらえることになって、航大の家に海蔵さんが来たんです。僕とシュンヤは海蔵さんと会うのがそのとき初めてで。めちゃくちゃポップでフランクでふわふわしてるイメージだったんですけど、「歌録りまーす」って言ってからすぐ2、3テイクで終わらせちゃったんですよ。

松浦 2時間ぐらいだったんですけど、海蔵さんは一瞬で終わって、あとはずっとしゃべってました(笑)。

海蔵 そうだっけ? ビアードパパのシュークリームをもらったことぐらいしか覚えてない。

──アルバムには海蔵さんの多重コーラスが聴ける曲が2曲ありますね(「Believe in you」とNiziUのカバー「Make you happy」)。

海蔵 はい。実は「Make you happy」が多重録音です。

松浦 とおるすさんがアレンジされたんですよね。

海蔵 そう。1人で多重録音することのよさももちろんあるんですが、やっぱりaoiroさんみたいな、それぞれの個性が引き立つコーラスグループには憧れがありますね。大学時代にアカペラをやっていて、当時の楽しかった記憶が今もずっとあるので、聴くと「一緒に歌いたい!」って思っちゃうんです。

織田 僕らはソロで活動してた3人が集まったグループなので、最初はあんまりコーラスに自信がなかったんですよ。

オノ 僕ととんちゃんはハモりの経験がなかったので、最初の頃は路上ライブ中に音を外しては航大ににらまれてました。顔を見れないんですよ。 でも見られてるのはわかるんです(笑)。

松浦 気付いてほしくて。あとで「あそこズレてたよね」「うん、ズレてた」って反省会していました。

織田 3人で声を重ねていくうちにグループのよさを感じるようになりました。1人で戦っている海蔵さんはやっぱりすごいと思います。

海蔵 僕はやっぱりグループに憧れちゃうな。大変なこともあると思うんですけど、一緒に何かをやっていく、歩幅を合わせるってことに青春(アオハル)を感じます。

松浦 そこ、読みは“アオハル”でいいんですか?

海蔵 若い子はアオハルだから。

オノ 若い子って、2つ3つしか変わらないじゃないですか(笑)。