昆夏美「ISOtone」インタビュー (2/3) - 音楽ナタリー 特集・インタビュー (original) (raw)

赤ちゃんのような感覚で

──すごくいいタイミングで巡り合いがあったんですね。

そうですね。デビューしてから2年後には、高校生のときから憧れていた「レ・ミゼラブル」のエポニーヌ役のオーディションに合格できて、これもいいタイミングで出会えたものだと思います。

──「レ・ミゼラブル」の現場ではどんなことを学んだんですか?

今まで客席で観ていた作品に出られるっていうのは、本当に夢見心地な気分っていうか。憧れていたキャストの方と同じステージに立つことができて、自分はもっとちゃんとしないといけないって思ったし、実力のなさも痛感しました。けれど実力のある先輩方と一緒に仕事をできるからこそ、自分も上がっていけるんだなって思って。本当にいい環境でしたね。

──そういった先輩方から教わったことや印象に残っていることってありますか?

「こんな言葉をかけられた」っていうことよりも、先輩方の舞台での居姿やバックステージでの皆さんへの気の遣い方が一番勉強になりました。素晴らしい役者さんって、人間性も素晴らしいって思うんです。例えば森公美子さんはオフのときでもエンターテイナーというか、みんなを元気付けられるようにおいしい差し入れをくださったりだとか、心遣いがすごい。そういった姿を見ていると、「だからこそ成功しているのかな」って思います。

──そうなんですね。では昆さんが思うミュージカルの面白味って、どんなところでしょう?

昆夏美

これは自分がアーティストとしてデビューしたことで、ミュージカルとの違いに気付いたことなんですけど……ミュージカルは役の中で、役の心情を歌うじゃないですか。私はそれがミュージカルの魅力だと思っていて。ステージの上には“役者”は誰もいなくて、例えば「レ・ミゼラブル」だったら、舞台上にエポニーヌはいるけど昆夏美はいない。自分じゃない人を生きるっていうことが面白味だと思うし、そういった部分が私はすごく好きですね。

──今のお話にもありましたが2013年にアーティストとしてデビューされます。デビューが決まったときの気持ちを振り返るとどうでしょう?

本当に想像してなかったことというか。びっくりしましたけど、でも私は歌うことが好きなので……たくさんの方が支えてくださっていますし、アーティストとしてもがんばっていかないとなって。私、レコーディングをすることすら初めてだったんですよ。なので赤ちゃんのような感覚でした。まず最初は、言われたことをちゃんとやる、っていうことしかできなかったですね(笑)。曲をどう調理して、自分の色を付けて……っていうことは考えられないくらい、初めての畑に足を踏み入れる感覚でした。

──これまで発表された4作品はすべてアニメソングですが、アニメにはなじみがありましたか?

小さいときにはよく観ていましたけど、大人になってからアニメにどっぷりとハマったっていう経験はなかったんです。だからテレビアニメで自分の歌を聴くっていうのは、自分で「これ私!?」って思うくらいに新鮮な感覚でした。

自分の色ってなんだろう?

──「昆夏美」として楽曲を発表することに対して、戸惑いや不安はなかったですか?

そうですね……昆夏美として歌うっていうのが初めてだったので、まず「自分の色ってなんだろう?」って悩んでいました。「いや、色が付かないほうがいいのかな?」とも考えたし。でもそうやって考えて、最終的に「何色にも染まるような歌声で表現したいし、豊かな感覚の持ち主でいたいな」っていう思いに行き着きました。

──アーティストとしての活動を始めて新鮮だったことは?

昆夏美

まず、アニメのイベントのミニライブなど、皆さんの前で歌うことがあるんですけど、緊張しちゃうんですよ(笑)。役になりきって舞台に立つっていうのが自分の基本だったので、昆夏美として……素の自分で歌うとなると緊張しちゃって。こんな感覚を味わうなんて思っていなかったですね。あとはミュージカルだとお客様は静かに観ていらっしゃるんですけど、ライブになると騒ぎながら観てくれる。それが本当に楽しいです。なんか、皆さんの盛り上げで緊張が和らぐ感覚がありますね。

──ミュージカルで培ってきたスキルの中で、アーティスト活動に役立っているものはありますか?

緊張はするけれど人前で歌うことに関してはド素人じゃないので、舞台度胸みたいなものは備わっているかなって。ミュージカルとアーティスト活動の間にそれほど隔たりはないと思うけどやっぱり別物なので、ミュージカルでの歌唱法がすべて生かされるわけではないんですよ。なので、舞台度胸があるってことがステージに立つ上での自分自身の助けになってます。

昆夏美(コンナツミ)

昆夏美1991年6月28日生まれのミュージカル俳優、アーティスト。2011年9月ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」のヒロイン・ジュリエット役でプロデビュー。その後も「ハムレット」「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」など、多数のミュージカル作品に出演する。2013年4月にテレビアニメ「銀河機攻隊マジェスティックプリンス」のオープニングテーマ「私は想像する」でアーティストデビュー。その後も「銀河機攻隊マジェスティックプリンス」第2期オープニングテーマ「PROMPT」、テレビアニメ「一週間フレンズ。」のオープニングテーマ「虹のかけら」をシングルリリース。2015年8月にテレビアニメ「ケイオスドラゴン 赤竜戦役」のオープニングテーマである「ISOtone」を表題曲とした作品を4thシングルとして発表する。