PE'Z「JumpUP!」インタビュー - 音楽ナタリー 特集・インタビュー (original) (raw)

PE'Zが、新作アルバム「JumpUP!」の全曲フリーダウンロード配信を期間限定でスタートさせた。

2011年9月発表の「向日葵-Himawari-」、2012年2月発表の「OH! YEAH! PARTY!!」でも、“合法ダウンロード”と称してアルバム無料配信を実施してきた彼ら。「1人でも多くの人々に音楽を届けたい」という意気込みと｢多発する違法ダウンロードへのアンチテーゼ」という問題提起をはらんだ試みは音楽シーンでも大きな話題を集めた。そして第3弾となる今作で、その試みは終了。この作品が“最後の合法ダウンロード”作品となる。

また、2012年7月にバンドのリーダーがOhyama（Tp）から航（Dr）へと交代した彼らにとって今作は、新体制での初となる作品。ジャズバンドのフォーマットでさまざまな音楽を吸収してきたPE'Zの自由な発想と勢いを、奔放な演奏を活かし、さらに風通しよく形にしたアルバムになっている。

アルバムについて、そしてバンドの今について、新リーダーの航とヒイズミマサユ機（Key）に語ってもらった。

取材・文 / 柴那典 インタビュー撮影 / 上山陽介

フリーダウンロードはネット上のストリートライブ

左から航（Dr）、ヒイズミマサユ機（Key）。

──いい意味でPE'Zというバンドのイメージを裏切られる、新しい挑戦が形になったようなアルバムという印象です。

航 ありがとうございます、それはうれしいです。

──今回の作品にはいろんなトピックがありますが、まずはフリーダウンロードという形態でリリースしたことについて訊ければと思います。昨年のアルバム「向日葵-Himawari-」からこの試みを始めて、今回は3回目となるわけですが、まずはどういう思いでフリーダウンロードを始めたんでしょう？

ヒイズミ PE'Zは昔からストリートでやってきたので、やっぱり人に聴いてもらってナンボという感覚があるんですね。聴く予定のなかった人まで「なんだ？」と思わせて、耳を惹き付ける。そこに快感とかやりがいを持ってバンドをやってきたようなところがあって。今の時代にそういうことをやるなら「違法ではなく合法ダウンロードですよ、皆さんどうぞ」というやり方で音源を発表してしまうのが面白いのではないかと。だから、最初は「やっちゃえ！」という感じでした。

──違法ダウンロードが横行していることへのアンチテーゼのような意識もあったんじゃないかと思うんですが、その辺はどうですか？

航 まあ、それもありますが、僕としてもマサユ機が言うように、とりあえず聴いていただいて、ライブで楽しもうぜっていう気持ちがあって。そこが原点なんですよね。

──なるほど。元々路上でライブをやっていたバンドであるというアイデンティティが大きいわけですね。

航 そこですね。今はストリートで自由にライブをやるようなことが厳しくなってきているんですけど、むしろフリーダウンロードはネット上のストリートライブみたいな意識があるんですよ。

「お、なんだ？ すごい！」を重視する

──フリーダウンロードアルバム第2弾の「OH! YEAH! PARTY!!」はダウンロードされた数も格段に増えて、最終的に10万に達したとのことですが。

航（Dr）

航 ありがたいことに、ガーっと増えましたね（笑）。

──反響や反応から見えてきたことはありました？

航 ライブの反応は如実に違いましたね。期間を区切ってフリーダウンロードをやったら、その後のライブに来たお客さんは、みんな音を聴き込んできた感じがあって。最初から新曲で完璧に盛り上がれた。そこは大きかったです。

──今回の「JumpUP!」は最後の合法ダウンロードという位置付けですが、これはどういうところから決めたんでしょうか？

航 僕らが“合法ダウンロード”と銘打ってやっていたことのひとつの問題提起の気持ちが伝わったのか、違法ダウンロードの規制が法制化されたということがあって。そういうことがきっかけというのはあります。

──元々ストリートでやっていたPE'Zのスタンスとして「来る者は拒まず」というのはあるけれど、今回は3部作の形でひとつの試みが終わるという捉え方でいいんでしょうか？

ヒイズミ そうですね、基本的にPE'Zは「お、なんだ？ すごい！」っていう、瞬時に盛り上がれるようなパワーを重視しているんですよ。で、ネットがこれだけ広がって「違法ダウンロードだ」なんて騒がれていた時代に、そういう要素を伝えやすい方法を考えた結果これだったという感じなんです。

「JumpUP!」完全版 / 2013年3月6日発売 / [CD2枚+DVD] / 完全限定生産3000セット / 6000円 / apart.RECORDS / APPR-6004～6006

DISC1 収録内容
DISC2 収録内容
DVD 収録内容

※全国ツアー「EN-MUSUBI 2012」全会場およびPE'Zオフィシャルファンクラブにて先行予約を実施。

「EN-MUSUBI 2012」

2012年12月21日（金）福岡公演～
12月30日（日）東京公演 全8公演

「EN-MUSUBI 2012」会場先行予約特典
PE'Z （ぺず）

2000年に結成された5人組ジャズバンド。ライブハウスやクラブに加え、渋谷などでストリートライブを定期的に開催する。2001年に初のミニアルバム「pe'z」をインディーズレーベルからリリース。翌2002年にはメジャーデビューも果たし、同時にイベントや野外フェスへの出演を通して知名度を獲得する。海外でのライブも積極的に行い、世界をまたにかけロック魂あふれるジャズサウンドを響かせている。結成10周年を迎えた2009年には、彼らの楽曲を他のアーティストがカバーする初のトリビュートアルバム「NOT JAZZ!! BUT PE'Z!!! ～10TH ANNIVERSARY TRIBUTE TO PE'Z～」が発表された。2011年9月にアルバム「向日葵-Himawari」を全曲無料配信する“合法ダウンロード”企画を実施し、大きな話題を集める。2012年2月に無料配信アルバム第2弾「OH! YEAH! PARTY!!」を、同年12月に第3弾となる「JumpUP!」を発表した。