rieco「信じて」インタビュー - 音楽ナタリー 特集・インタビュー (original) (raw)

7月でデビュー1周年を迎えたシンガーソングライター・riecoが、3rdシングル「信じて」をリリースする。20代後半でようやくつかんだデビューだったが、その先に待ち受けていたのは想像もしなかった苦悩や葛藤……。今作は、そんな日々を乗り越えた彼女のたくましさが描かれた、リアルで力強いナンバーとなっている。この1年の間に彼女が経験した思いを紐解きつつ、楽曲の制作秘話に迫った。

取材・文 / 川倉由起子 撮影 / 上山陽介

自分をしっかり立たせておくことが難しくなっていた

──新曲「信じて」は、爽快に突き抜ける歌声が印象的なアップチューンですね。どんな思いから生まれたんですか?

rieco

去年7月にデビューして、ずっと自分を信じながらやってきたんですけど、理想と現実のギャップに苦しんだり、葛藤を抱えたりすることも多くて。地元の福岡にいるときはいつもの環境の中で自分を保っていられても、月の半分は東京に来て新しく知り合う人たちと交流していく中で、だんだん自分をしっかり立たせておくことが難しくなってきたんです。

──なるほど。

メジャーデビューできたからって、周りがすべてキラキラするわけじゃなかったですしね。で、そういう自分の弱さに真っ正面からぶつかったときに、一度ズドーンと落ちてしまって。渋谷の街を泣きながら歩いたこともありました(笑)。でもそれがあったからこそ支えてくれる周りの友達やスタッフさんの大切さに改めて気付けたし、落ち込んでも絶対に人は這い上がれるんだっていう自分のたくましさにも出会うことができて。今回は、その“一歩先に進めた自分”を書いてみたいと思って、曲を作りました。

──ちなみに、riecoさんが当時抱えていた葛藤の具体的な内容とは?

率直に言ってしまうと、自分が一生懸命作ったものがあまり届かなかったもどかしさや、もっと伝わってほしいのにっていう思いですね。もちろんインディーズ時代と比べたら出会えた人の数は大きく違うんですけど、そのぶん、結果も出していかなきゃいけないし。このままメジャーでやっていけるだろうか?と心配になったり、他人と自分を比べることも多くなって、けっこう厳しい精神状態でした。

──理想と現実の差に苦しんでいたと。riecoさん自身では、当初はどうなっていくと予想していたんですか?

下積みが長いのでいきなりドーンとは売れないだろうし、これからも地道な活動になるとは思ってたんですけど……。やっぱり自分の音楽はまだまだ伝わってないんだなっていうのは痛感しました。

──中にはもちろん伝えられた人もいたと思うのですが、正直、自分ではもうちょっといけるかなと?

そうですね(笑)。でもやっぱり、デビューしてからが本当のスタートだなって思いました。

「デビューの可能性は0.01%。それでも諦めないんだったらやれ」

──楽曲の話に戻りますが、そういうある種の洗礼を浴びてできた曲だけに、今回の歌詞はすごく説得力があるんですよね。

rieco

ありがとうございます。この曲は私と同じアラサー女子にもぜひ聴いてもらいたいと思ってて。たぶんその時期って多くの人が揺れ動いたり、葛藤を抱えたりすると思うんです。まさに私のように(笑)。年齢的に何か新しいことを始めるならこれが最後のチャンスって思う人も多いだろうし、今までの仕事をリセットしたいと考える人もいるかもしれないけど、周りはどんどん結婚してくし、なんの保障もないところに飛び込む勇気もない……みたいな。

──すごくわかります。焦る時期ですよね。

そうなんです。でもアラサーだってまだまだ夢は追いかけられるし、自分らしい歩幅で進んでいけば、その先に絶対夢が待ってるよってことを伝えたかったですね。私自身も「その年齢でデビューは無理」とか言われてたし、お世話になっていた音楽塾ヴォイスの先生には「(デビューの)可能性は0.01%。それでも諦めないんだったらやれ」とか、かなり厳しい現実を突き付けられてました。でも、そこでめげずに自分を信じ続けたから道が開けたと思うし、歌詞はそういう経験も踏まえて書きました。

──それにしても、このタイトルはすごくストレートですね。

あははは(笑)。やっぱり、曲作りのときに最初にパッと降りてきたフレーズをタイトルにしたいと思ったので。1stシングル「Shining」、2ndシングル「ONE」のときもそうだったんですけどね。