yonawo、バンドの新たな一面が垣間見える2ndアルバム「遙かいま」完成|メンバーインタビュー+8組の表現者からのコメント - 音楽ナタリー 特集・インタビュー (original) (raw)
昨年末に初のワンマンツアーを成功させ、今年は「FUJI ROCK FESTIVAL '21」を含む大型フェスに出演するなど、着実に活動の規模を広げるyonawo。そんな彼らが現在のモードを詰め込んだニューアルバム「遙かいま」をリリースした。
アルバムには初のプロデューサーとして冨田恵一(冨田ラボ)を迎えたスローバラード「哀してる」や、亀田誠治とタッグを組んだダンサブルなナンバー「闇燦々」など、yonawoの新たな一面が垣間見える12曲が収録されている。音楽ナタリーではメンバー4人に、冨田や亀田との制作エピソード、各楽曲の魅力、荒谷翔大(Vo)が綴る独特な歌詞世界について話を聞いた。
また特集の後半には冨田や亀田といったプロデューサー陣や、君島大空、佐藤征史(くるり)、片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)、森田美勇人(7ORDER)、ロンドン出身のエレクトロポップデュオ・HONNE、モデルで女優の堀田茜というyonawoと関わりのある表現者8組による「遙かいま」に対するコメント、バンドへのメッセージを掲載する。
取材・文 / 黒田隆太朗撮影 / トヤマタクロウスタイリスト / 市野沢祐大(TEN10)
──1stアルバム「明日は当然来ないでしょ」から9カ月、短いスパンでのアルバムリリースになりますね。
荒谷翔大(Vo) そうですね。1stアルバムのツアー時に今作の曲を書き始めていて、ツアーと同時進行でシングルの制作を進めていました。
──前作を作り終えて、一層クリエイティブが湧いてくるところがあったんでしょうか。
荒谷 先行シングルの「哀してる」と「闇燦々」は、これまでと違った取り組み方で作曲することをテーマにしていました。1stアルバムはyonawoの中だけで完結するような、いわば“yonawo純度100%”みたいなアルバムだったので。それはそれで満足感があってよかったんですけど、今回はまた違った面も出していけたらなと思ったんです。自分の中にある大衆的でポップな部分や、自分の好きな歌謡曲にフォーカスした曲作りをテーマにして制作していきました。
──歌謡曲は荒谷さんのルーツにあるものなんですか?
荒谷 歌謡曲、大好きです。ばあちゃんがカラオケで美空ひばりさんや石川さゆりさんの曲をよく歌っていたので、昔から聴いていました。僕は中島みゆきさんの「化粧」が大好きで、「哀してる」はあの世界観を自分なりに落とし込んだらどんな曲ができるだろうと考えて作りました。「あんた」という言い回しも「化粧」からの影響で、自分の曲で「あんた」とか言ってみたいと思いながら歌詞を書いて(笑)。
──ドラムプレイもこれまでになかった感じがありますね。
野元喬文(Dr) 全部が初めてのフレーズですね。yonawoで16ビートはやったことがなかったので、難しかったです。
──16ビート、これまでなかったんですね。
荒谷 ライブで16ビートの曲をやったことはあるんですけど、音源化されたのは「哀してる」が初めてです。
斉藤雄哉(G) でも、16好きだよね?
野元 うん。16好き。
磐石な冨田恵一のアレンジ
──「哀してる」はyonawoにとって初のバラード曲ですが、プロデューサーの冨田さんとは何か印象的なコミュニケーションはありましたか?
田中慧(B) 初めてお会いしたときにyonawoの印象について「めちゃくちゃいいアイデアが詰まっているけど、散漫なところがある」と言われたのは覚えています。冨田さんから返ってきたアレンジ案は確かにガッチリしていたというか、楽曲として磐石な感じに仕上がっていました。
荒谷 歌謡曲には“A・B・サビ”みたいなフォーマットがあると思うんですけど、僕は今までそういうものをあまり意識せず作ってきたんです。冨田さんはJ-POPのプロデューサーの巨匠ですし、そういう意味では、今回の制作でJ-POPのフォーマットを冨田さんから学べたと思っています。今後それを使っていくというわけではないんですけど、頭の中にそれが入っているのはデカいですね。
──自由奔放に作っていた前作に対し、今回の制作は1つ方向性や枠組みがある中での作業になったと。
斉藤 そうですね。アイデアを盛り込むというよりは、緻密に組み立てる作業だったので曲作りは新鮮でした。
亀田誠治は褒め上手
──亀田誠治さんがプロデュースした「闇燦々」もすごくいい曲ですね。yonawoの楽曲の中では比較的アップテンポです。
荒谷 「闇燦々」を作る最初の段階で、リファレンスとして僕が挙げたのがマイケル・ジャクソンの「Rock With You」でした。今までにないタイプの曲調で、なおかつライブ映えする楽曲にしようと思っていたので「Rock With You」のようなグルーヴのある楽曲にできたらいいなと思って。
──荒谷さん以外のメンバーも、マイケルは聴かれるんですか?
荒谷 みんなマイケル大好きだよね?
斉藤 僕もよく聴きます。初めて自分のCDを持ったのもマイケルで、母親が小学校のクリスマスに彼のベストアルバムをプレゼントしてくれたんですよ。それからずっと聴いていて、オリジナルアルバムでは「Off The Wall」が好きです。
──「闇燦々」はギターのカッティングもいいアクセントになっています。
荒谷 亀田さんが提案してくれたギターリフですね。冨田さんには弾き語りのデモを送ったんですけど、亀田さんには自分なりの構成をある程度入れて、曲のテーマを伝えたうえでアレンジしてもらいました。亀田さんはどちらかというとバンドに寄り添うスタンスだと聞いていて、その通り「闇燦々」も大幅に変えるところはなく、ギターやベース、ドラムのフレーズをブラッシュアップしてくださいました。
──歌に関しては、何かアドバイスやオーダーはありました?
荒谷 歌入れの細かいニュアンスは勉強になりました。あと、亀田さんは僕のボーカルも褒めてくださって、「ここの歌い回し、ダニー・ハサウェイじゃん」みたいな感じで言ってくれるんですよね(笑)。
──褒め上手なんですね(笑)。
荒谷 僕のテンションも上げてくださるし、素敵なプロデューサーだと思います。
田中 yonawoの曲はあらちゃん(荒谷)がキーボードを弾きながら歌うので、白玉でバーンとコードを弾くものが多いんですけど、プリプロで初めて亀田さんにお会いしたときに「その白玉の中に物語が詰まっている気がする」と言っていただいたのも印象的でした。
斉藤 あと、「みんな優しいから譲り合ってるんでしょ?」って言ってたよね。「みんなくらい若かったら、もっと前出たくない?」みたいな。
荒谷 たぶん、東京事変と比べてそう言っていると思うんですよね(笑)。
──あちらはめちゃくちゃスリリングですもんね(笑)。田中さんは同じベーシストとして、どんな刺激がありましたか?
田中 絶対に自分ならやったりせんやろなと思うフレーズがあったり、新しいものを得た感覚がありました。
斉藤 亀田さんはベースの和音のアプローチがすごいので、しんどそうやったよな。
田中 そうだね。でも、ベースで和音の響きを鳴らすことにハマっていた時期と重なったので、亀田さんがデモを送ってきたとき、和音のフレーズが入っているなと思いました。あと自分としては亀田さんが送ってくださったデモをコピーしていたつもりだったんですけど、どうやら間違ってコピーしていたみたいで、あとから本当はオクターブ上のところを、下でやっていることに気付いたんですよ(笑)。でも亀田さんに「それが君の色になっているよ」と言ってもらって今の形になりました。
──間違って弾いたほうが採用されたってことですね。
田中 そうです。スタジオに4人で入って練習していても、今のフレーズのほうががしっくりきていて、そこに自分のベーシストとしての色があるのかなと思いました。それはすごくいい経験でしたね。