花總&笹本の新たな「マリー・アントワネット」 (original) (raw)
9月から来年2019年1月にかけて福岡、東京、愛知、大阪で上演される、ミュージカル「マリー・アントワネット」。開幕に先駆け昨日9月2日に東京都内で製作発表記者会見が行われた。
遠藤周作の「王妃マリー・アントワネット」をもとにした本作は、「エリザベート」「モーツァルト!」などで知られるミヒャエル・クンツェとシルヴェスター・リーヴァイが、それぞれ脚本・歌詞、音楽・編曲を手がけたミュージカル。「100万のキャンドル」をはじめとする名曲に彩られた本作が、ロバート・ヨハンソンによる新演出により、新曲や新要素も交えて上演される。
出演者にはマリー・アントワネット役の花總まりと笹本玲奈、マルグリット・アルノー役のソニンと昆夏美、フェルセン伯爵役の田代万里生と古川雄大、オルレアン公役の吉原光夫のほか、LE VELVETSの佐藤隆紀、原田優一、駒田一、彩吹真央、坂元健児、彩乃かなみらが名を連ねた。
本日の会見には花總、笹本、ソニン、昆、田代、古川、吉原が登壇。およそ1万通の応募者の中から抽選で選ばれた約400名のオーディエンスが見守る中、キャストたちが1人ひとり挨拶した。花總は東宝の岡本義次プロデューサーからの「花總が宝塚歌劇団に在籍していたので実現はしなかったが、2006年の初演の際に名前が挙がっていた」という紹介を受け、「今回改めてこの役をいただき、身の引き締まる思い」と真摯に述べる。また16年にミュージカル「1789」でマリー・アントワネット役を務めた花總は、フランス革命のモチーフが人気であることについて「市民、王族など、激動の時代を生きた人たちのそれぞれの思いがあまりにも複雑に絡み合って、革命が起きています。それを見た現代の皆さんにもどこかが揺さぶられ、心に響くものがあると思う。その思いは見た方によって異なるはずですが、フランス革命には考えさせる何かがあります」と所感を述べた。
初演の際にマルグリット役を演じた笹本は、「今回、マルグリットとは正反対のマリー・アントワネット役で戻ってこられてうれしく思う」と笑顔を見せる。今回の役作りに際しては「一番大切にしたいと思っているのは、彼女が命を落とすまで誇りを捨てなかったこと」と言い、「資料で知りましたが、彼女は子供たちを母乳で育てていたということがヒントになりました。王族は生まれた子を乳母に任せるのが普通だった時代に、マリー・アントワネットが自分で子供たちを育てようとしていたところに強さを感じました。たくさんの決まりがある小さなベルサイユで、自分らしさを模索しながら生きようとした女性だったのだと思います」とアントワネット像を分析した。
16、18年にミュージカル「1789」でフランス革命に身を投じる女性・ソレーヌを演じたソニンは、「『1789』は革命家を英雄的に描きますが、今回は革命後半の恐怖政治が描写される」と本作を紹介し、「演出のロバートが『フランス革命は世界最悪の革命と言われている』と教えてくれて衝撃でしたが、革命に酔いしれた人々の狂気も出てきて『1789』とは全然違うフランス革命が現れる」とアピール。作中で唯一の架空の人物・マルグリットについては「作品のメッセージを皆さんに伝える役割がある」と分析しつつ、「稽古してて、ひたすら心が病んでいく……(笑)」とコメントして会場の笑いを誘う。役作りについては「アントワネットはベルサイユという小さな世界の中だけで生きていた。でもマルグリットは外でいろんなものをたくさん見てきた人だと思うので、“目”で勝負したい」と力強く語った。
本作のファンだと言うのは昆。昆は「作品のひさしぶりの上演を楽しみにされている方がたくさんいらっしゃることを、改めて実感します。自分が出演できることに驚きと感謝を感じながら、日々稽古しています」と会場を見回しつつ出演への喜びを語る。フランス革命を扱う本作については「人々が1つに固まり、目標へ突き進む怖さを感じている」「本当にこういうことがあったんだなと、作品を通して勉強させていただいています」話し、マルグリット役を演じるにあたっては「信念を持って登場し、物語が進むにつれて心の変化が見られる役。ダイナミックさと繊細さが必要なので、最後までもがきながらマルグリット像を見つけられたら」と抱負を述べた。
次にマイクを握った田代は「今回は曲や脚本が大改訂されているそうです。初演に出演していた井上芳雄さんが先日稽古場にいらしたんですが、『どうでした?』って聞いたら『ほとんど知らない曲だった』と(笑)。それだけ新鮮に観てくださったのだと思います」と裏話を明かす。また通し稽古で小学生の子役たちが泣いてしまったとエピソードを紹介し、「フランス革命とか宮廷とか愛人とか(笑)、子供たちにとっては難しいことも多いはずなのに何か感じ取ってくれている。この作品が育っていることを実感しました」と手応えを語った。
続いて古川は「衣装を着て待っていたら、光夫さんに『君だけ道明寺(編集注:集英社から発刊されている神尾葉子のマンガ「花より男子」の道明寺司)みたいだね』と言われました」と口火を切って場内を笑いで包みつつ、「万里生さんの衣装を見て、(違いに)びっくりした。この衣装のように違いのあるフェルセンを演じられるようがんばりたい」と目標を述べる。また16年にミュージカル「1789」で革命家ロベスピエールを演じた古川は、同じくフランス革命を描く本作について「『1789』では革命を目指しましたが、今回はマリー・アントワネットへの仕打ちを見ていて胸が苦しい。革命の話では誰に感情移入するかで心に残るものが変わる。生きるエネルギーがお客様の心を動かすと思います」と分析した。
田代と古川に視線を送りつつ「本当はフェルセンがやりたかったけど、自分からは全然遠い役だなと……(笑)」と冗談を飛ばすのは吉原。革命を描く作品が人気を集めていることについては「今の時代もみんな、居酒屋とかで革命の話しかしてないですよね、『あいつ絶対辞めさせてやる……』とか(笑)。人々は制圧された今の場所から脱しようといつも戦っていて、そのうねりとお客さんが観る(舞台の)世界と重なる」と分析する。また「遠藤周作さんの大ファン」と言う吉原は、本作の魅力を「マリー・アントワネットはメディアに中傷されて嘘偽りから命を落とした人なので、現代にも通ずるところがある。そんな時代の中で、人がアイデンティティを持って自分を生きていくにはどうしたらいいかという。アントワネットは最後には死んでしまいますが、芯の通った力強さを感じます」と語った。
挨拶のあとには、キャストたちにより劇中歌6曲が披露された。まず昆がアンサンブルたちのコーラスと共に「100万のキャンドル」をのびのびと歌い上げると、続く田代は新曲となる「遠い稲妻」を力強く、吉原は「私こそがふさわしい」を貫禄たっぷりにパフォーマンスした。さらに笹本は本作の音楽を手がけたシルヴェスター・リーヴァイの伴奏で新曲「孤独のドレス」をしっとりと聞かせ、次にアンサンブルたちを従えたソニンが「もう許さない」をパワフルに歌唱すると、場内は一気に盛り上がる。最後は花總と古川が「あなたへ続く道」を美しくデュエットし、会場は大きな拍手に包まれた。
公演は9月14日から30日まで福岡・博多座、10月8日から11月25日まで東京・帝国劇場、12月10日から21日まで愛知・御園座、来年2019年1月1日から15日まで大阪・梅田芸術劇場 メインホールで行われる。
新演出版 ミュージカル「マリー・アントワネット」
2018年9月14日(金)~30日(日)
福岡県 博多座
2018年10月8日(月・祝)~11月25日(日)
東京都 帝国劇場
2018年12月10日(月)~21日(金)
愛知県 御園座
2019年1月1日(火・祝)~15日(火)
大阪府 梅田芸術劇場 メインホール
脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽・編曲:シルヴェスター・リーヴァイ
演出:ロバート・ヨハンソン(遠藤周作原作「王妃マリー・アントワネット」より)
キャスト
マリー・アントワネット:花總まり、笹本玲奈
マルグリット・アルノー:ソニン、昆夏美
フェルセン伯爵:田代万里生(福岡、東京のみ出演)、古川雄大
ルイ16世:佐藤隆紀、原田優一
レオナール:駒田一
ローズ・ベルタン:彩吹真央
ジャック・エベール:坂元健児
ランバル公爵夫人:彩乃かなみ
オルレアン公:吉原光夫
ロアン大司教:中山昇
ギヨタン博士:松澤重雄
ロベスピエール:青山航士
ラ・モット夫人:真記子
荒田至法、石川剛、榎本成志、小原和彦、川口大地、杉山有大、谷口浩久、中西勝之、山本大貴、横沢健司、天野朋子、石原絵理、今込楓、岩崎亜希子、首藤萌美、堤梨菜、遠山さやか、原宏実、舩山智香子、山中美奈、吉田萌美
※岩崎亜希子の「崎」はたつざきが正式表記。
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- 帝国劇場 ミュージカル『マリー・アントワネット』
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