女性劇作家の「女々しき力」3作品を連続上演 (original) (raw)
「『女々しき力』プロジェクト序章」が8月に東京の座・高円寺1と本多劇場にて開催される。
これは、20年前に渡辺えりが如月小春、岸田理生ら2人の女性劇作家と創案した、女性演劇人による、女性の人生を描いた作品の連続上演企画。同プロジェクトは8月から10月にかけて、長田育恵・桑原裕子・篠原久美子・瀬戸山美咲・永井愛・ペヤンヌマキ・保科由里子らを交えて開催予定だったが、新型コロナウイルスの影響によって実施困難となったため、今回は“序章”として上演される。
プログラムには渡辺えりの新作「さるすべり ~コロナノコロ~」、永井愛の人気作「片づけたい女たち」のリーディング、別役実作、渡辺演出の「消えなさいローラ」がラインナップ。「さるすべり」には木野花と渡辺、「片づけたい女たち」には3軒茶屋婦人会の篠井英介、深沢敦、大谷亮介、ト書き語りとして草野とおる、「消えなさいローラ」には尾上松也と渡辺が出演する。なお「さるすべり」の8月8日17:00開演回、「片づけたい女たち」の10日15:00開演回、「消えなさいローラ」の23日13:00開演回はオンライン配信される。
プロジェクトに向けて渡辺は「女性も男性も同じ人間であり、優れた個性を持つ作家や演出家が女性にも沢山いる。そのことをストレートに発信したい。そして、少数派の幸せのためにある演劇を通して、未だに少数派の女性演劇人たちが生きる勇気を持ち、自身の創作に邁進して欲しい。その結果、育児や家事に追われて自分を切り刻むような生活をせざるを得ない、多くの女性たちにも演劇を通して夢と勇気を届け、そのことを私たちの今後の支えにしたいのだ。そんな想いから生まれたのがこの、『女々しき力』という企画である」と語っている。
渡辺えりコメント
「女々しき力」について
東北・山形生まれ、女性で初老でしかも太った体形。幾重ものマイノリティーの部分を抱えて 65歳の今日まで生きてきた訳だが、中でも「女性」であるとことにより、様々な差別を受けて来たように思う。今、全世界的に、女性に対する差別や偏見に対する考え方は変化のときを迎えています。しかし、まだ日本は、今なお旧態依然とした考え方を持つ人も多いのが現状です。
いつの頃からか、日本の男たちは男性中心の価値観だけで社会を作り、それに慣れ、女たちがいることにすら気がつかなくなっていった。気がつかないのだから、どれが差別で偏見なのかにも思い至らぬのだろう。
特に演劇の世界は男性社会の縮図そのものと言ってもいい。評価が確立したベテラン劇作家ですら、「女子供の気に入る芝居を書いていてはだめだ」などと公に話すような世界なのだ。教育者が「女子供は人間ではない」と平然と言っていた、明治時代から何ら変わっていないのが日本の男性陣だ。
また日本劇作家協会が主催する新人戯曲賞の審査員も、長年女性は私一人であった。そんな環境のもと一人で抵抗し、わざと過激なことを言いながら、なんとか女性の劇作家を増やし、もっともっと活躍して欲しいと40 年以上も頑張ってきた。ようやく最近若い女性作家が次々と現れ、嬉しい悲鳴を上げているのだが、審査となると男性陣が居並び、女性審査員は私と永井愛さんだけ。このままでは、道半ばで死んだりボケたりしてしまうではないか。如月小春さんと岸田理生さんは、一緒に芝居を作ろうと約束したけれど意志半ばにして亡くなった。
命の終わりは予測できない。自分の死の前に何とか女性劇作家が結集し、その力を炸裂させる場を作り、女性が女性であることをともに喜び、観客にも偏見を捨てて大いに楽しんでいただく機会を作りたい。そして、終演後にはみなで大笑いして乾杯したい。
女性も男性も同じ人間であり、優れた個性を持つ作家や演出家が女性にも沢山いる。そのことをストレートに発信したい。そして、少数派の幸せのためにある演劇を通して、未だに少数派の女性演劇人たちが生きる勇気を持ち、自身の創作に邁進して欲しい。その結果、育児や家事に追われて自分を切り刻むような生活をせざるを得ない、多くの女性たちにも演劇を通して夢と勇気を届け、そのことを私たちの今後の支えにしたいのだ。
そんな想いから生まれたのがこの、「女々しき力」という企画である。
「女々しき力」プロジェクト序章
「さるすべり ~コロナノコロ~」
2020年8月5日(水)~9日(日)
東京都 座・高円寺1
作:渡辺えり
共同演出:渡辺えり、木野花
出演:木野花、渡辺えり
「片づけたい女たち」(リーディング)
「消えなさいローラ」
2020年8月21日(金)~23日(日)
東京都 本多劇場
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