加藤拓也の意欲作「もはやしずか」開幕 (original) (raw)
すれ違う人間模様を描く、加藤拓也の意欲作「もはやしずか」開幕
2022年4月2日 16:12 19
「もはやしずか」が本日4月2日に東京・シアタートラムで開幕。昨日1日に初日前会見と公開ゲネプロが行われた。
劇団た組の加藤拓也が作・演出を手がける本作は、不妊に悩む夫婦と、彼らを取り巻く人々を描いた物語。康二と麻衣は不妊治療を経て子供を授かるが、出生前診断によって、産まれてくる子供が障害を持っている可能性を示される。康二は過去のある経験から出産に反対。しかしそのことを知らない麻衣は、反対を押し切って出産を決意し……。
今回は対面式の客席で、客席の間にステージが配されている。ラグジュアリーな家具が置かれたリビングルームを舞台に、康二・麻衣夫婦を軸にした現在のシーンと、康二の人格形成に影響を与えた幼少期の場面がクロスしながら、物語が展開していく。
現在のシーンでは、妻になかなか本心を明かすことができない康二と、自分の意見を夫にぶつける麻衣、すれ違う1組の夫婦のやり取りを、橋本淳と黒木華が熱演。一方、過去のシーンでは、康二の両親と幼稚園教諭が激しく衝突し合う場面を、平原テツ、安達祐実、藤谷理子の三者が生々しい演技で立ち上げた。
濃密な会話劇を得意とする加藤は今作で、自分の思いが相手にうまく伝わらず、わかり合えない人々の会話や、整理されないまま発語される人間の思考、悪意なく他者を傷つけてしまう登場人物たちの姿を丁寧に描き出した。
初日前会見には、出演者の橋本、黒木、平原、安達、作・演出の加藤が出席。これまでにも加藤の作品に多数出演している橋本は「『もはやしずか』は加藤くんの魅力が詰まった作品。人間関係のちょっとしたズレから生じる面白さを感じながら、すれ違う人間模様をのぞき見していただけたら」とアピールし、黒木は「演じるうえですごく難しい台本だったんですが、加藤さんが『いやあ、完璧ですねえ』と煽ってくるので(笑)、それに応えたいなという気持ちで稽古しました。こういった作品を舞台で演じるのは初めてだったので、新しく生まれた感情や感覚を楽しめています」と笑顔を見せる。
安達は「『人間ってこういうところがあるよな』ということがちりばめられていて、胸に迫るような作品だと思います」と感想を述べ、平原は「傑作だと思いました。この作品を通していろいろな価値観の人がいることを知れたので、ぜひ皆さんにも観てもらいたいです」と観客に呼びかけた。
また、加藤は「今回の出演者の皆さんは、自分の中でも整理をつけられないような複雑な感情を、簡単にせず表現できる方々」とキャストに信頼を寄せつつ、「自分だけの世界で作っていたものを、皆さんの力を借りながら立体化していき、脚本を書いていたときとは違う、想像していたものと別のものになりました」と手応えを明かす。最後に橋本が「目を背けたくなるような内容ではあるのですが、観劇を通して抱いた感情を、皆さんぜひ持ち帰っていただければと思います」とあいさつし、会見を締めくくった。
上演時間は約2時間。公演は4月17日まで。
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