「秀山祭」中村歌昇、長男・次男の初舞台に喜び (original) (raw)

「秀山祭九月大歌舞伎」に出演する中村歌昇、その長男・中村種太郎、次男・中村秀乃介の取材会が、本日8月17日に東京都内で行われた。

昨年死去した中村吉右衛門の一周忌追善として行われる「秀山祭九月大歌舞伎」。公演では吉右衛門ゆかりの演目が上演され、歌昇は第2部「『揚羽蝶繍姿』籠釣瓶花街酔醒 / 鈴ヶ森 / 熊谷陣屋 / 播磨潟だんまり」で白井権八と源義経、種太郎と秀乃介は第1部「『菅原伝授手習鑑』寺子屋」で、それぞれ菅秀才と小太郎を勤める。なお今回、これまで小川綜真の本名で舞台に立っていた種太郎は初舞台、秀乃介は初お目見えと初舞台となる。

取材冒頭に行われたフォトセッションでは、6歳の種太郎が姿勢良く立つ中、3歳の秀乃介が天真爛漫に走り出してしまうひと幕も。歌昇と種太郎から少し離れた場所でニコニコ笑う秀乃介に、歌昇は微笑みながら秀乃介の名前を呼びかけ続ける。すると、秀乃介は走って歌昇の腕の中へ。そんな弟の姿を、種太郎は優しい眼差しで見つめていた。

会見が始まると、種太郎と秀乃介はそれぞれ名前を名乗り、「今日はよろしくお願いします!」と元気よくあいさつをした。歌昇は2人の性格の違いを「種太郎はしっかりしていて、慎重なタイプ。でもおしゃべりで、楽屋ではいつも話し続けていますし、食べることが大好き(笑)。秀乃介はお調子者でひょうきん。お兄ちゃんが大好きで、いつも種太郎は秀乃介の遊びに付き合わされています」と話す。記者から、稽古はすでにしているかと聞かれた種太郎と秀乃介は「お家でしています」と回答。さらに種太郎は「セリフと動きの稽古をしています」とはきはき答える。2人を指導している歌昇は「お兄ちゃんはすでに舞台経験がありますので、心配はしていないのですが、次男は初めてなので心配。なので弟のほうが早い段階から稽古を始めております」と補足した。

稽古での歌昇の印象について聞かれると、秀乃介は笑顔で「怖い!」と答え、会場の笑いを誘う。歌昇は「兄弟で教え方は分けるようにしていて。秀乃介にはまずは舞台に出ることを楽しいと思ってもらえるように、すぐに『よくできたね!』と褒めるようにしています(笑)。種太郎には厳しくしすぎているので反省しています。ただ彼は教えたら教えただけ返してくれる」と語る。歌昇の発言後、種太郎が「(怖いときもあるが)普通のときもある」と述べると、歌昇は「ありがとう、フォローしてくれて(笑)」と笑顔を見せた。

歌昇は「『秀山祭』、そして吉右衛門のおじさまの1周忌追善公演で、長男、次男それぞれの初舞台を迎えることができて本当にありがたい」と感慨を述べる。また秀乃介の名前の経緯を「播磨屋には子役の名前があまり多くなく、次男の名前をどうするか悩みました。僕自身、播磨屋への思いが強いため、播磨屋のおばさまにご相談し、秀山の秀の字を頂戴し、秀乃介にさせていただくことにしました」と明かす。さらに種太郎の名前については「吉右衛門のおじさまが、生前に父(中村又五郎)に『(歌昇の)長男には種太郎とつけたらどうだ?』と提案してくださっていて。そこまで考えてくださっていたおじさまには、感謝の気持ちしかないです」と述べる。

歌昇が出演する「揚羽蝶繍姿」は、「籠釣瓶花街酔醒」「鈴ヶ森」「熊谷陣屋」といった、吉右衛門の当たり役の名場面をつづり、その面影をしのぶ内容となっている。歌昇は「おじさまの、すべてを舞台に費やす背中は一生忘れない」と述べ、「吉右衛門のおじさまが生きていらっしゃる間に、お相手ができるような俳優にならないといけなかった。これはおじさまが亡くなったときにも思いましたし、これからもずっと思い続けることです」と言葉に思いをにじませる。また、吉右衛門の最後の舞台出演となった「楼門五三桐」に右忠太役で共演していたことに触れ、「おじさまは、いざ舞台に上がると、お身体が悪いことをみじんも感じさせなかった。共演を通して、おじさまの大きさを改めて感じました」と振り返った。

最後に歌昇は「播磨屋という屋号を背負っている以上は、残された播磨屋一同で総力を上げて播磨屋の芸を残していかなければならない。子供たちにもいつか、初代吉右衛門、二世吉右衛門という偉大な俳優と、自分が同じ屋号だということを誇りに思ってもらえるよう、私たちでがんばっていきたい」と言葉に力を込めた。

「『秀山祭九月大歌舞伎』二世中村吉右衛門一周忌追善」の公演は9月4日から27日まで東京・歌舞伎座にて。

「『秀山祭九月大歌舞伎』二世中村吉右衛門一周忌追善」

2022年9月4日(日)~27日(火)
東京都 歌舞伎座

第1部

一、「白鷺城異聞」

原作:中山幹雄
構成・演出:松貫四

出演
宮本武蔵:中村歌六
本多平八郎忠刻:中村又五郎
秀頼の霊:中村勘九郎
刑部姫:中村七之助
腰元白鷺:中村梅枝
腰元名月:中村米吉
局明石:中村歌女之丞
宮本三木之助:中村萬太郎
家老都築惣左衛門:中村錦之助
千姫:中村時蔵

二、「『菅原伝授手習鑑』寺子屋」

出演
松王丸:松本幸四郎(偶数日) / 尾上松緑(奇数日)
武部源蔵:松本幸四郎(奇数日) / 尾上松緑(偶数日)
戸浪:中村児太郎
菅秀才:中村種太郎
小太郎:中村秀乃介
春藤玄蕃:中村種之助
百姓吾作:坂東彌十郎
涎くり与太郎:中村又五郎
園生の前:中村東蔵
千代:中村魁春

第2部

一、「秀山十種の内『松浦の太鼓』劇中にて追善口上申し上げ候」

出演
松浦鎮信:松本白鸚
宝井其角:中村歌六
お縫:中村米吉
里見幾之亟:市川染五郎
渕部市右衛門:大谷廣太郎
早瀬近吾:松本錦吾
江川文太夫:市川高麗蔵
鵜飼左司馬:大谷友右衛門
大高源吾:中村梅玉

二、「『揚羽蝶繍姿』籠釣瓶花街酔醒 / 鈴ヶ森 / 熊谷陣屋 / 播磨潟だんまり」

構成:戸部和久

出演
佐野次郎左衛門 / 熊谷直実:松本幸四郎
白井権八 / 源義経:中村歌昇
奴智恵内:大谷廣太郎
呉服屋十兵衛 / 一條大蔵長成:中村種之助
兵庫屋九重 / 典侍の局:中村児太郎
相模:大谷廣松
新中納言知盛:中村鷹之資
藤の方:中村莟玉
佐々木盛綱:市川染五郎
番頭新造八重咲:中村梅花
下男治六:中村吉之丞
幡随院長兵衛:中村錦之助
兵庫屋八ツ橋:中村福助

第3部

一、「『仮名手本忠臣蔵』祇園一力茶屋の場」

出演
大星由良之助:片岡仁左衛門
寺岡平右衛門:市川海老蔵
赤垣源蔵:中村橋之助
富森助右衛門:中村鷹之資
大星力弥:片岡千之助
矢間重太郎:中村吉之丞
鷺坂伴内:片岡松之助
斧九太夫:嵐橘三郎
遊女おかる:中村雀右衛門

二、「昇龍哀別瀬戸内『藤戸』」

構成:松貫四
脚本:川崎哲男

出演
母藤波 / 藤戸の悪龍:尾上菊之助
浜の男:中村種之助
浜の女:中村米吉
浜の子供:尾上丑之助
郎党黒田源太:中村吉兵衛
郎党小林三郎:中村吉之丞
郎党和比八郎:坂東亀蔵
郎党長井景忠:坂東彦三郎
佐々木三郎兵衛盛綱:中村又五郎

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