松田正隆「海辺の町 二部作」稽古中 (original) (raw)

2月22日に初日を迎える、ロームシアター京都 レパートリーの創造 松田正隆 海辺の町 二部作「文化センターの危機」〈新作〉 / 「シーサイドタウン」〈再演〉の公開稽古と取材会が1月下旬に行われた。

本公演では、“松田正隆 海辺の町 二部作”と銘打ち、2001年に初演を迎えた「シーサイドタウン」と新作「文化センターの危機」の2作品が披露される。「シーサイドタウン」は松田の故郷・長崎を思わせる海辺の町に暮らす人々が描かれ、「文化センターの危機」はその続編とも言える作品が展開する。取材会ではまず松田が、今回の上演に向けての思いを語った。

松田は、ドラマ演劇から始まり、マレビトの会での実験的な取り組みへ展開した自身の足跡を振り返りつつ、「今やっていることをもう一度検証したいと思っていたところに、ロームシアター京都からお話があり、一昨年『シーサイドタウン』を上演することになりました。これが“レパートリーの創造”という枠組みの作品だったので、もう1作品作ることになり、今回『文化センターの危機』を上演します。どちらも海辺の町が舞台で、それは故郷の長崎県平戸市を描きたいという思いを僕がずっと持っているからかな、と思います」と話した。

新作「文化センターの危機」では、とある文化センターの職員たちがキャンプに行く様が描かれる。キャンプに行く、というアイデアは「『ヒロシのぼっちキャンプ』と映画『オールド・ジョイ』を観たのがきっかけですね(笑)」と話しつつ、松田は「『シーサイドタウン』では親の世代が死んでしまって、東京に行っていた三十代の子供が職を失って誰も住まなくなった故郷に戻ってくる話ですが、『文化センターの危機』では(中心となる)場所が文化センターや山などどんどん変わっていき、また群像劇として展開していきます。タイプが異なる2作品を、同じ俳優によって、舞台セットなどをほぼ置かない劇場むき出しの空間で演じるということを、今回やってみたいと思っています」と説明した。

その後、シーンを抜粋しながら「文化センターの危機」の稽古の様子が公開された。アクティングエリアに姿を現した俳優たちは、それぞれの場所に立ち、スマホで話したり、レジを打つ仕草をしたり、タバコを吸ったり、釣りをしたりとそれぞれの動作を始める。しかし中心にいる男性(万引きする男・杉田)は、何もせずぼーっと立ったままだ。やがてレジを打っていた女性(高校生の里岡)が男性に声をかけ……。

一連のシーンが終わると、松田はそれぞれの仕草をよりシンプルに、“削ぐ”演出を加えた。また杉田と里岡のやり取りの、どのタイミングでほかの俳優が退場するかなどを細かく指示していく。その後、再び同じシーンを繰り返すと、杉田と里岡以外の俳優が動きをスッとやめてその場を去ることで、杉田と里岡の会話の印象がより濃く感じられるようになった。

続けて、文化センターの職員である吉村、辻井、中野、そして成り行きでキャンプに参加することになったイベント会社の男・加藤が焚き火を囲むシーンの稽古が行われた。台本上ではラジオから音楽が流れている設定のため、最初は実際にある楽曲を流した状態で稽古がスタートした。実はこのシーンは音楽なしで稽古していたが、前日に「実際に曲を流してみてはどうか」という意見があったため、一度曲を流して稽古することになったのだった。一連のシーンを終え、松田が「どうですか? やりやすかった?」と俳優に実感を尋ねると、俳優たちは「テンポができた気がする」「音があることで重苦しいセリフも気負わずに言えた」など笑顔を見せた。それを踏まえて、2度目は音楽なしで、同じシーンを繰り返す。再び松田が「変化はありました?」と尋ねると、俳優たちは「身体が何となくリズムを覚えているのでやりやすかった」「昨日までよりも可動域が増えたような気がします」とポジティブな反応を返した。その後も細かな調整を加えながら、稽古は進行していった。

ロームシアター京都 レパートリーの創造 松田正隆 海辺の町 二部作「文化センターの危機」〈新作〉 / 「シーサイドタウン」〈再演〉は、2月22日から26日まで、京都・ロームシアター京都 ノースホールにて行われる。

なおステージナタリーでは、「海辺の町 二部作」の上演に向けて、松田と玉田企画・玉田真也の対談を掲載している。

ロームシアター京都 レパートリーの創造 松田正隆 海辺の町 二部作「文化センターの危機」〈新作〉 / 「シーサイドタウン」〈再演〉

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