ミュージカル「ダーウィン・ヤング」開幕 (original) (raw)
ミュージカル「ダーウィン・ヤング 悪の起源」が、本日6月7日に東京・シアタークリエで開幕した。
「ダーウィン・ヤング 悪の起源」は、パク・チリの小説を原作にしたミュージカル作品。2018年に韓国のソウル芸術団によって初演され、今回は日本初上陸となる。潤色・演出を手がけるのは末満健一。ダーウィン・ヤング役を大東立樹(ジャニーズJr.)と渡邉蒼がWキャストで務める。なお本日のゲネプロには、渡邉が出演した。
劇中では、市街が9つのエリアに区分され、厳格な階級制度が敷かれた架空の都市を舞台に、全寮制のプライムスクールに通う16歳の少年ダーウィンを軸とした、親、子、孫の運命が交錯する物語が展開。階級制度に疑問を抱くダーウィンは、同じ考えを持つレオ・マーシャルと親しくなり、骨董品交換会で古びたフード付きの服とカセットプレイヤーを交換する。しかしそのフードとカセットプレイヤーには、ダーウィンの祖父や父にまつわる秘密が隠されており……。
舞台の上手と下手にはそれぞれ、中世ヨーロッパの宗教施設を思わせるデザインのパネルが設置された。荘厳な音楽と共に開演すると、舞台中央にプライムスクールの制服を着たダーウィンが立っている。背後には同じ制服を着た大勢のアンサンブル、左右のパネルの窓にはダーウィンの祖父や父、友人たちが立っており、重厚なコーラスで観客を物語の世界へといざなった。
本作では、大熊隆太郎の振付による身体表現が効果的に用いられた。プライムスクールの場面では生徒たちが横1列にズラリと並んだり、軍隊のように一糸乱れぬ動きで一斉に椅子と机を動かしたりすることで、生徒を抑圧し、画一化する学校の雰囲気が描かれる。また登場人物が不安に駆られたり、葛藤したりするシーンでは、黒いフードをかぶった大勢のアンサンブルたちがその周りをうごめき、その人の内面の苦しみを具現化した。
ダーウィンは無邪気だが、祖父と父の秘密を知ったことでその真っすぐさゆえに苦悩してしまう。渡邉はのびのびとした歌声とキレのあるダンスで、何も知らないダーウィンの明るさを表現。その一方で渡邉は、そんなダーウィンが笑顔を失っていくさまを繊細に演じ、その落差で物語の悲劇性を色濃くした。
矢崎広は、どこかに影があるダーウィンの父ニースを、落ち着いた語り口と美しい歌声で好演。ニースがダーウィンにネクタイの結び方を教えるデュエットナンバー「ウィンザーノット」で、矢崎は優しい微笑みにダーウィンへの愛をにじませ、父子の強い結び付きを具現化した。
ダーウィンの親友レオを演じるのは内海啓貴。快活だが、平気で校則を破る危うさもあるレオを、内海は爽やかに演じる。ダーウィンとレオが絆を深める場面では、自転車で2人乗りしたり、にぎやかに歌い踊ったりして、会場を盛り上げた。
またダーウィンの祖父ラナー役の石川禅は、劇中で16歳、46歳、76歳を演じ分ける。石川はパワフルな歌声で少年ラナーが燃やす革命への情熱を描き出しつつ、老年期では包容力を感じさせる穏やかなセリフ回しを聞かせた。
開幕に際し、ダーウィン役の大東、渡邉からのコメントが到着した。大東は「日々の稽古から蒼くんと互いに刺激し合い、自分なりにこの作品と向き合ってきました。オーケストラと物語が一体となるこの作品には、ミュージカルの偉大さの全てが詰まっていると思います。『大千穐楽を終えるまではダーウィン・ヤングとして生き続ける』をモットーに、お客様に最高の作品をお届けします」と語る。渡邉は「この上ない緊張感です。ただそれよりもっと強くあるのが、“残酷なほどの美しさ”、“明かされてはいけない秘密”、どんな言葉でも言い表せない“得体の知れないもの”が解き放たれるのを今か今かと待っている。そんな感覚です。あとはカンパニーの皆様の胸をお借りし、ダーウィンとして全てを投じるのみ……!」と意気込みを述べた。
東京公演は6月25日まで行われ、その後、30日から7月2日まで兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールで上演される。
なおステージナタリーでは、本作の特集を展開中。潤色・演出を手がける末満のインタビューを掲載しているほか、日韓ミュージカルコーディネーターの高原陽子が、本作の韓国での人気ぶりについてつづっている。
大東立樹コメント
初日を迎えるにあたり、改めてこのカンパニーの一員として舞台に立てることに大きな喜びを感じています。日々の稽古から蒼くんと互いに刺激し合い、自分なりにこの作品と向き合ってきました。オーケストラと物語が一体となるこの作品には、ミュージカルの偉大さの全てが詰まっていると思います。「大千穐楽を終えるまではダーウィン・ヤングとして生き続ける」をモットーに、お客様に最高の作品をお届けします。劇場にて、お待ちしております。
渡邉蒼コメント
この上ない緊張感です。ただそれよりもっと強くあるのが、“残酷なほどの美しさ”、“明かされてはいけない秘密”、どんな言葉でも言い表せない“得体の知れないもの”が解き放たれるのを今か今かと待っている。そんな感覚です。あとはカンパニーの皆様の胸をお借りし、ダーウィンとして全てを投じるのみ……! 必ずこの作品の叫びは沢山の方に届くと思います。シアタークリエでお会いできることを心から願っています!
ミュージカル「ダーウィン・ヤング 悪の起源」
2023年6月7日(水)~25日(日)
東京都 シアタークリエ
2023年6月30日(金)~7月2日(日)
兵庫県 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
原作:パク・チリ
台本・作詞:イ・ヒジュン
作曲:パク・チョンフィ
編曲:サム・デイヴィス、マシュー・アーメント
潤色・演出:末満健一
キャスト
※高田実那、高橋莉瑚の「高」ははしご高が正式表記。
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