豊原江理佳ら舞台「楽園」明日開幕 (original) (raw)

山田佳奈が作劇を務める「楽園」が、明日6月8日に東京・新国立劇場 小劇場で開幕。それに先駆け、本日7日にフォトコールと初日前会見が行われた。

眞鍋卓嗣が演出を務める本作は、新国立劇場による日本の劇作家の新作を送るシリーズ【未来につなぐもの】の第3弾。劇中では、村長選挙真っただ中の架空の島で、年に一度の神事に臨む女たちの姿が描かれる。フォトコールでは1場の後半から終わりまでが公開された。

明かりがつくとそこは、奥に祭壇が設られ、手前には縁側がある拝所。部屋では女たちが会話をしながら神事の準備をしている。すると“区長の嫁”が、東京のテレビ局の人間を連れてやって来た。“東京の人”は、女性だけで行われる島の神事を「取材したい」と言うが、排他的な言葉を投げかけられ、取材を拒否されてしまう。拝所では祭祀をよく知る年長者から、勝手がわからず戸惑う者まで、年齢や立場が異なる女たちの思いが交錯し、微妙な空気が重々しく漂う。しかしその様子はこっけいさと紙一重で、おかしみも感じさせた。果たして、女たちは一致団結して無事に祭祀を終えられるのか、またはとんでもない事件が起こってしまうのか。どちらの展開も期待させる予感と余白を残したまま、フォトコールは終了した。

初日前会見には出演者が登壇。おばあの代理で拝所にやって来た“若い子”役の豊原江理佳は「稽古期間の毎日が濃くて、あっという間に初日か、という気持ちです。見どころはラストの、皆で集まる祭祀のシーン。皆、今まで胸の中に溜めていたものを全部ぶちまけてしまうのですが、自分で演じながらもキャストの皆さんの迫力に圧倒されます」と話す。

“東京の人”役の土居志央梨は「7人で団結して、支え合いながら試行錯誤し、ようやく明日、初日を迎えられます。まだ不安な気持ちはありますが、心を込めて演じられたら」とコメント。見どころについては、「“村長の娘”役の(清水)直子さんに追い詰められるシーンがあるのですが、そこに注目していただければ(笑)」と述べた。

神に仕える“司(つかさ)さま”役の増子倭文江は見どころについて問われると、「江理佳ちゃんの言うように、ラストは神聖な場所にもかかわらず、皆さんがあっちこっちでブチ切れながら、大爆発していくシーンなんです。私は後ろで祝詞をあげているのですが、稽古では皆に背を向けたまま笑ってしまいました。皆さん必死なのに、とても笑えてしまうシーンになっているのがおかしいです」と微笑んだ。

「7人7様で皆さん面白く、いろいろな話をして、共有して、それぞれの取り組み方にもすごく刺激をいただきました」と言うのは、“村長の娘”役の清水直子深谷美歩演じる“区長の嫁”とは「舞台上では敵対し合う2人ですが、本当に楽しくやらせていただいています」と明かす。その発言を受けて、深谷が「皆でアイデアを出し合って作ったので、(初日の)お客様の反応がとても楽しみです。……(私たちは)仲が良いです!」と言うと、共演者から笑い声がもれた。

“おばさん”役の中原三千代は「共感できる登場人物は“司さま”。時代の流れについていけないと言いつつ、それでも自分に課せられた仕事をやり続けるしかないというセリフをおっしゃっていて。私も新しいものや時代の流れに乗るのは苦手なほうなので」と言い、2カ月の稽古期間を振り返って、「皆様と作り上げて来たものを、きちんと舞台の上に乗せたいと思っています」と決意を示す。出戻って来る“娘”役の西尾まりは「いろいろな事件を巻き起こす要因となる1人を演じます」と説明し、「私は子供がいるので、“おばさん”の役に共感します。こんなことばかり言われるのは嫌だと思うようなことを“娘”に対して言うのですが、一番気持ちがわかる役」と語る。

また、「あなたにとっての楽園は?」という質問では、7人中3人が「実家」と回答。そのほか「布団の中」(西尾)、「サッカーが大好きなので、サッカーの試合を観ているときが一番幸せ」(中原)と、ユニークな答えも飛び出した。最後に豊原が「2カ月の稽古期間、本当にたくさん話し合ってより良い作品にしようとがんばりました。お客さんのもとにどう届くのかとドキドキしていますが、ぜひニュートラルな気持ちで観に来ていただけたら。お待ちしております」と来場を呼びかけた。公演は明日6月8日から25日まで。

なお、ステージナタリーでは本作の特集記事を展開中。豊原、土居、増子が稽古場での様子や作品への思いを語っている。

山田佳奈コメント

実際に取材を重ねてきた今作。俳優7名と演出家の眞鍋さんが舞台上で立ち上げてくださったのは、どこか遠い島の出来事のようでもありますが、我々が直面している多くのことを内在しています。それらが客席の皆さんにどのような形で伝わり、観劇後にどのような読後感となるのか。劇作家として、この瞬間に立ち会えたことを嬉しく思います。

「未来につなぐもの」というテーマで描いてきたシリーズ第三弾として、多くの人に手渡せるバトンとなっていれば幸いです。

眞鍋卓嗣コメント

いよいよスタートします。出演者、スタッフ、全ての方が、この作品にとても前向きに関わってくださったことに心から感謝いたします。昨今、世の中は物ごとの隔たりが極端になったり、いったいどこに向かうのか不安な気持ちになります。お客様には気軽に楽しんで頂きながら、少しでもそのような私たちの現在地とその先について考えを巡らせてもらえたら嬉しいです。

シリーズ【未来につなぐもの】III「楽園」

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