中村芝翫、引窓に向け「息子たちには負けないぞ」 (original) (raw)
初代国立劇場さよなら公演 令和5年7月歌舞伎鑑賞教室「双蝶々曲輪日記-引窓-」の取材会が、本日6月23日に東京都内で行われた。
取材会には、出演者の中村芝翫、中村錦之助、市川高麗蔵が出席。本公演で芝翫は、南与兵衛後ニ南方十次兵衛役を約18年ぶりに勤める。このことに改めて「18年ぶりなんですか!?」と驚きつつ、「私は十次兵衛と濡髪の両方を勤めた経験があり、どちらも役の“思い”は違います。今回、先輩ではありますが同年代で、長年ご一緒してきた錦之助さん、高麗蔵さんと一緒に勤めさせていただくことで、新たな発見ができるのでは」と、自分の両隣に座る錦之助、高麗蔵に期待を寄せた。
錦之助が濡髪長五郎を勤めるのは2回目で、東京では初めて演じる。「濡髪の実年齢は20代前半。横綱ではありますが、まだ少年です。恩人の息子のために人殺しをして、その場で死のうと思うも、母に会いたいと思ってしまう。その気持ちの揺れを表現できれば」と話す。「国立劇場では、自分の“ニン”ではない役ばっかりやらされています(笑)。『毛抜』の粂寺弾正も、2回もさせていただきました」と振り返り、「今回、前にやったことを思い出しながら、もう少し濡髪らしくできるように、そして『これも錦之助の役どころだな』と思っていただけるよう、勉強して勤めさせていただければ」と意気込みを述べた。
高麗蔵は、女房お早を勤める。「初役のときは(中村)雀右衛門のお兄さんに教えていただきました。世話女房の典型的なお役ですが、元は都という遊女。ですので、元傾城であることを、どこか心に留めておいたほうが良いと習いました。わざとらしく作るのではなく、中からあふれてくるような色気が必要ですので、お稽古場で芝翫さん、錦之助さんから色気を勉強できれば(笑)」と語った。さらに「今回、傾城の心がちょっとでも出ればという思いで、最初に教えていただいた通り、裾を引いた衣裳で勤めさせていただきます」と明かす。
なお、1月に行われた「新春浅草歌舞伎」では、芝翫の長男・中村橋之助が濡髪長五郎、中村隼人が南与兵衛後ニ南方十次兵衛を勤めていた。このことに言及した錦之助が「いつか芝翫さんと橋之助くん、私と隼人の『引窓』もできるのでは」と言葉に力を込める。芝翫は「舞台稽古を拝見したのですが、(中村)隼人くんの十次兵衛がみずみずしくて。今回、私もちょっと若めに演じられればと思います。息子たちには負けないぞ、という気持ちでやらせていただきたいですね」と笑顔を見せた。
なお劇場は建て替えにより10月に閉場するため、現在の初代国立劇場で歌舞伎鑑賞教室が行われるのはこれがラストとなる。学生や歌舞伎初心者が多く来場する本プログラムに、3人は幾度となく出演してきた。芝翫は「その都度出していただきましたが、大人しい生徒さんだけではありませんでした。中村屋の兄貴(中村勘三郎)から聞いた話では、『中村屋!』『紀伊國屋!』と大向うが飛んだとき、『パン屋と本屋か!』と学生さんがツッコんでいたそうです(笑)」と学生たちのリアクションを明かし、報道陣の笑いを誘う。「うれしかった思い出は、初役で『俊寛』を勤めたことですね。公演期間の後半、学生さんたちが立ち上がって拍手をしてくれて。歌舞伎鑑賞教室で、初めてのカーテンコールだったそうです」と懐かしそうに目を細めた。
会見では、国立劇場での思い出話に花が咲く一幕も。芝翫が「始末書、始末書……」と錦之助に目配せすると、錦之助は「私が6歳くらいの頃、子役として国立劇場のお芝居に出させていただいていたのですが、岡村清太郎(現:清元延寿太夫)という悪友がいまして……一緒にいたずらをしまくっていたら、親が始末書を書かされたことがありました。いまだにこの話をされますね(笑)」と照れくさそうな様子を見せた。また、芝翫は「高麗蔵さんには、兄弟のように可愛がっていただいて。小さい頃、僕が歯の矯正器具を国立劇場で失くしてしまったことがあって。父にバレると怒られるので、高麗蔵さんが一生懸命探してくれました」と高麗蔵と微笑み合った。公演は、7月3日から24日まで東京・国立劇場 大劇場にて。
初代国立劇場さよなら公演 令和5年7月歌舞伎鑑賞教室「双蝶々曲輪日記-引窓-」
2023年7月3日(月)~24日(月)
東京都 国立劇場 大劇場
解説「歌舞伎のみかた」
出演:澤村宗之助
「双蝶々曲輪日記-引窓-」一幕
出演
南与兵衛後ニ南方十次兵衛:中村芝翫
女房お早:市川高麗蔵
平岡丹平:中村松江
三原伝造:坂東彦三郎
母お幸:中村梅花
濡髪長五郎:中村錦之助
ほか
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