【公演 / 会見レポート】石丸幹二らがつながりと愛を描く「ラグタイム」開幕に井上芳雄「“証人”になって」(舞台写真あり / 写真24枚) (original) (raw)

ミュージカル「ラグタイム」が本日9月9日に東京・日生劇場で開幕。これに先駆け昨日8日にゲネプロと囲み取材が行われた。なお記事では作品の内容や演出に触れているほか、舞台写真も多数掲載しているため、ネタバレを避けたい読者は注意してほしい。

ミュージカル「ラグタイム」は、1998年のトニー賞で4部門を受賞したミュージカル。本作では脚本をテレンス・マクナリー、歌詞をリン・アレンズ、音楽をスティーヴン・フラハティが手がける。日本初演となる今回は、演出を藤田俊太郎が担う。

舞台は20世紀初頭のアメリカ・ニューヨーク。ユダヤ人のターテ(石丸幹二)は、娘の未来のために移民となり、遠くラトビアからニューヨークにやって来る。また黒人のコールハウス・ウォーカー・Jr.(井上芳雄)は才能あるピアニスト。彼には恋人のサラ(遥海)がいたが、彼女は2人の間に生まれた赤ん坊をある家の庭に置き去りにしてしまう。赤ん坊が置き去りにされたのは、裕福な白人家庭の母親・マザー(安蘭けい)が暮らす家で……。

開演するとステージには切り絵アーティストのターテが現れ、紙をハサミで切り始める。すると背後の幕にはターテが切り抜いたかのような人々のシルエットが投影され、やがてそのシルエットの向こうからキャストたちが姿を現して、オープニングナンバー「Ragtime」を披露した。

本作では、白人役のキャストは白い衣裳、黒人役のキャストは鮮やかな原色の衣裳、ユダヤ人役のキャストは暗いグレーの衣裳をそれぞれ着用。また出演者が人種ごとに異なる特徴の振付を踊ることで、それぞれの違いが描き出される。「Ragtime」のシーンでは、同じ人種役同士のキャストがまとまったり、逆に異なる人種役のキャストが入り乱れたりしながら、時代の過渡期である20世紀初頭の激動を歌い上げ、観客を一気に物語に引き込んだ。

ターテはアメリカで、娘と共に貧しい暮らしを強いられる。石丸は目をぎらつかせてターテの必死さを演じつつ、ひたすらに娘の幸せを祈る父の温かさを優しい歌声で表した。マスタード色のスーツをスマートに着こなす井上は、くるくると変わる表情や、赤ん坊に優しくキスする仕草で、コールハウスを感情豊かな人物として立ち上げる。コールハウスがある出来事をきっかけに暴力に訴えてしまう場面では、井上は強い感情を込めた歌唱と演技で観客を惹き付けた。安蘭は、穏やかだがきっぱりとしたセリフ回しで、マザーが人種を問わず相手に向ける優しさや、正義感と意志の強さを表現。またマザーがターテと歌う「Our Children」で、安蘭は石丸と共に美しい歌声で劇場を包み込んだ。

ゲネプロ後に行われた会見には石丸、井上、安蘭、ブッカー・T・ワシントン役のEXILE NESMITHが登壇。本作への出演を夢見ていたという石丸は、初日に向けて不安と期待が入り混じっていると明かしつつ、「『ラグタイム』に描かれていることは、自分たちの身近な問題と何も変わらないと改めて思いました」と感慨深げな表情を浮かべる。

井上は、「ラグタイム」と同じくスティーヴン・フラハティが音楽を手がけたミュージカル「アナスタシア」が同時期に上演されることに触れて「『アナスタシア』より2・3曲、素敵なナンバーが多いかも」と冗談を飛ばして笑いを誘う。また井上は「人種の違いをどう表現するか考えてきた」「このやり方が成立すれば『誰もが、どんな作品のどんな役でも演じられる』と勇気が湧くようなトライアルだと思う。ぜひ“証人”になって」と観客に呼びかけた。

安蘭は「この短期間でここまで作れた!という気持ち」と稽古を振り返り、「今の私たちにしかできない『ラグタイム』が誕生します。ぜひお楽しみに」と観客にメッセージを送る。またNESMITHは、自身がアメリカ人と日本人のダブルであることを挙げて「(アメリカ人の)父や自分のルーツを作品の題材と重ねながら稽古しました。僕にとっても忘れられない歴史の1つになると思います」と言葉に力を込めた。

会見では4人が、藤田の演出について語る場面も。石丸は「藤田さんは稽古で私たちに『どう思う?』と投げかけてくれる。柔軟なキャッチボールをしてくれます」とコメント。井上も「あれほど褒めてくれる演出家はなかなかいない。(藤田が演出助手を務めた)蜷川幸雄さんの厳しさと真逆ですが、どこか共通する世界観も感じます」とうなずき、NESMITHも「藤田さんは僕の演技を『まず、めちゃくちゃ良いです!』と受け止めてから『ですけど1つだけ……』と提案してくれます。優しいアプローチですよね」と続ける。安蘭は「私は昭和の人間なので、褒められると『本当ですか?』と不安になる(笑)」と打ち明けつつ、「意見が言いやすい稽古場です。藤田さんは俳優の言葉をよく聞いてくれますね」と笑みを浮かべた。

最後に石丸が「この作品は“つながり”と“愛”がテーマだと思う。これをお客様にお届けすることを目指して、ケガなく無事に公演を務めたい」と思いを口にし、会見は終了した。

上演時間は休憩25分を含め3時間5分を予定。東京公演は9月30日まで行われ、その後は10月5日から8日まで大阪・梅田芸術劇場 メインホール、14・15日に愛知・愛知県芸術劇場 大ホールでも上演される。

ミュージカル「ラグタイム」

2023年9月9日(土)~30日(土)
東京都 日生劇場

2023年10月5日(木)~8日(日)
大阪府 梅田芸術劇場 メインホール

2023年10月14日(土)・15日(日)
愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール

脚本:テレンス・マクナリー
歌詞:リン・アレンズ
音楽:スティーヴン・フラハティ
翻訳:小田島恒志
訳詞:竜真知子
演出:藤田俊太郎

キャスト

※宮島朋宏は体調不良のため休演し、代わって木暮真一郎が出演します。

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