葵わかな・木下晴香「アナスタシア」開幕に「幸せ」 (original) (raw)

葵わかな木下晴香が主演を務めるミュージカル「アナスタシア」が明日9月12日に東京・東急シアターオーブで開幕する。これに先駆け本日11日、フォトコールと初日前会見が行われた。

これは、アニメ映画「アナスタシア」をもとに2017年からアメリカ・ニューヨークのブロードウェイでロングラン上演された同名ミュージカルを、ブロードウェイ版クリエイティブスタッフと日本キャストで上演するもの。2020年の日本初演時は、新型コロナウイルスの影響で公演の大半が中止に。今回は再演となる。アーニャ役を葵と木下がWキャストで、ディミトリ役を海宝直人相葉裕樹内海啓貴、グレブ役を海宝、堂珍嘉邦田代万里生がトリプルキャストで務めるほか、ヴラド役の大澄賢也石川禅、リリー役の朝海ひかるマルシア堀内敬子、皇太后役の麻実れいらが出演する。

劇中では、20世紀初頭の帝政末期のロシアを舞台に、ボリシェビキの攻撃で滅ぼされたロシア帝国皇帝ニコライ2世の一家のうち、唯一生き残ったとうわさされた末娘・アナスタシアの物語が展開。詐欺師のディミトリとヴラドは、アナスタシアによく似た少女・アーニャを利用して、アナスタシアにかかった賞金をだまし取ろうと企てるが……。

フォトコールではキャストにより劇中歌7曲が披露され、その合間で、本作の音楽を手がけたステファン・フラハティと、作詞を担当したリン・アレンスが作品や場面の解説を行った。グレブのナンバー「ネヴァ川の流れ」の披露前にフラハティは「(2020年の日本初演開幕後に亡くなった、本作の脚本家)テレンス・マクナリーと脚本を書き始めたとき、有名なアニメ版を舞台で再現するだけではいけない、より成熟した豊かな大人のミュージカルにしたいと考えていました。そこで新たに創作したのが、グレブというキャラクターです」と説明。アレンスは「グレブは現実的なキャラクターで、アニメ版の悪役であるラスプーチンやその相棒のしゃべるコウモリとは大違い(笑)。物語を書き直すのは面白い作業でした」と振り返る。またアレンスは「ネヴァ川の流れ」のポイントとして「この楽曲には、本作の冒頭を飾るロシア国歌の合唱とリンクする部分があります。本作のテーマソングのように、ステファンが見事にリプライズさせています」と本人に目配せしつつアピール。その「ネヴァ川の流れ」を、田代は射抜くような鋭いまなざしと深みのある歌声で歌い上げ、グレブの存在を印象付けた。

また、ディミトリのナンバー「俺のペテルブルク」について、フラハティは「これはいわゆるミュージカルにおける“I am”ソングで、キャラクターの人生や背景が語られる楽曲」と紹介し、「この曲は早口言葉が多くトリッキーなので、訳すのが特に難しかったのではないでしょうか」と述べ、日本語訳を担当した高橋亜子をねぎらった。この楽曲を、内海は疾走感がありつつも、力強く軽やかなナンバーに立ち上げた。

フォトコールでは最後に、葵がアーニャのナンバー「過去への旅」を披露。自分の過去を探す旅へ足を踏み出すアーニャの決意を、葵は表情豊かに歌い上げる。アレンスは同曲を「ホーム、居場所、愛、家族……すべての憧れを追い求めようとした少女が歌う曲です。100年以上前を描くこの物語が今も力を放っているのは、『自分自身を見つけたい』という、どの時代でもどこにいても変わらない、私たちの普遍的な願望が詰まっているからです」と語る。続けてフラハティは「こうして日本で上演でき、本当に感謝しています。お客様、俳優、ミュージシャンの間で生まれる“マジック”を、生で体験できることを幸せに思います」と微笑んだ。

フォトコール後に行われた初日前会見には葵と木下が登壇した。葵は「ついに明日からリベンジができるのは本当にうれしい。私としては、再演が決まる前から『私の人生の中で、もう一度この役をやるぞ』と勝手に決定事項にしていたので(笑)、再演が決定したときは『ほかの皆さんも同じ気持ちだったんだ』と明るい気持ちになりました。前回は不完全燃焼で終わってしまったので、今回は千秋楽まで無事に駆け抜けられるように願っています」と気合い十分。

木下は「初演では舞台稽古をしっかり終えたタイミングで(初日から)中止になってしまったので、まずは初日を無事に迎えたいなという気持ち。作品との巡り合わせはタイミングが大事なので、再演のご連絡をいただいたときはホッとした感覚でした。この作品に再び挑戦するために、いろいろなことを磨いてきたので、明日からまた作品を届けられることを本当に幸せに思っています」と喜びを語る。

葵は木下との関係性について「『アナスタシア』の初演を含めると同じ作品に出演するのは今回で3回目で、すべて同じ役を演じる仲。もともと信頼関係がある私たちなので、気持ちの面でも支えてもらうことが多くて。本番が始まってからも、すごく頼りにしています」とはにかみ、木下も「普段から何でも話せる仲なのは大きいです。昨日も『このセリフが今になって言いづらくなったんだけど、どうやってる?』と聞きましたし(笑)。2人でアーニャ役に向き合ってこられたという実感があります」と葵を見つめた。

記者が2人に本作の見どころを尋ねると、葵は「『アナスタシア』はおとぎ話のような夢の詰まった作品ですが、歴史的事実や、役作り、振付などに現実味のあるエッセンスも含まれています。そんな夢と現実が併存する世界観が本作の特徴で、きらびやかなだけでなく泥臭さもあるという一面が私たちの心に寄り添ってくれるのでは」と分析した。木下は「稽古場から舞台稽古に移ったときに、改めて舞台装置と衣裳の力をものすごく感じました。ミュージカルはもともと総合芸術ですが、この作品ではいつも以上にそういった美術や音楽の力などに助けられた。1つひとつの要素が持つ力が大きいので、お客様にそれらが結集した莫大なエネルギーを届けられるのが楽しみ」とアピールした。

最後に観客に向けてメッセージが求められた。葵は「ついに明日から初日を迎えます。初演時の思いを胸に、2023年版の『アナスタシア』として、大阪まで元気に楽しくのびのびと、お届けできたらなと思います」、木下は「きっとキャスト・スタッフと同じくらいの思いを抱えて、明日からの初日を待ち望んでくださっていた方もいると思います。全公演で無事に素敵な作品をお届けできるように、皆で一丸となって精進してまいります。楽しみにしていてください」と呼びかけた。

上演時間は休憩含む約2時間40分。東京公演は10月7日まで。その後19日から31日まで大阪・梅田芸術劇場 メインホールで上演される。

ミュージカル「アナスタシア」

2023年9月12日(火)~10月7日(土)
東京都 東急シアターオーブ

2023年10月19日(木)~31日(火)
大阪府 梅田芸術劇場 メインホール

脚本:テレンス・マクナリー
音楽:ステファン・フラハティ
作詞:リン・アレンス
振付:ペギー・ヒッキー
演出:ダルコ・トレスニャク

キャスト

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