熊林弘高演出「インヘリタンス-継承-」に福士誠治ら (original) (raw)
3世代のゲイの人々描く6時間半、熊林弘高演出「インヘリタンス-継承-」に福士誠治ら
2023年9月11日 12:00 32
熊林弘高が演出を務める「インヘリタンス-継承-」が、来年2月中旬から下旬にかけて東京・東京芸術劇場 プレイハウス、3月初旬に大阪・森ノ宮ピロティホール、3月上旬に福岡・J:COM北九州芸術劇場 中劇場で上演される。
マシュー・ロペス作「インヘリタンス-継承-」は、2019年にローレンス・オリヴィエ賞4部門、2020年にトニー賞4部門を受賞した作品。前後編で約6時間半となる本作では、2015年から2018年のニューヨークを舞台に、1980年代のエイズ流行初期を生きた六十代、HIVと共に生きる三十代・二十代という、3世代のゲイの人々の姿が描かれる。
出演者には福士誠治、田中俊介、新原泰佑、柾木玲弥、百瀬朔、野村祐希、佐藤峻輔、久具巨林、山本直寛、山森大輔、岩瀬亮、篠井英介、山路和弘、麻実れいが名を連ねた。なお麻実は後編にのみ出演する。東京公演チケットは11月中旬に発売予定。演出の熊林からのコメントは以下の通りとなっている。
熊林弘高メッセージ
今まで自分は人の暗部や闇、社会の記憶などを描き、それに向き合っていく作品に惹かれてきました。
“過去は死なない 過ぎ去りさえしない”ーW・フォークナー
「私とは何者なのか」-人は何らか自分自身を演出しています。が、自分の本質を理解しない限り、本当の意味で人と人は結びつくことは出来ないと思います。
「インヘリタンス-継承-」に「癒すか、燃やすか」というセリフが出てきます。自分を成り立たせているもの、つまり自分の過去に(たとえ痛みが伴おうとも)向き合うこと。そうしなければ次の一歩に踏み出せない、人と人が互いに理解しあうことは出来ない……
「インヘリタンス-継承-」の最後で語られる「過去、現在、未来が一つに繋がる」という大きなテーマにつながる一言です。
もう1つの魅力は一義的な視点ではなく、多様な視点で語られていることです。
「インヘリタンス-継承-」で描かれている沢山の会話は、加害者や被害者、白人や黒人、リベラルと保守、さまざまな背景をもつ人々の言葉で紡がれます。次の世代に「継承」されるものも「正」とされることだけではありません。
“良い芸術作品は、質問を与えるだけだ”というピーター・ブルックの言葉があります。古びない作品は質問を投げかけるだけで、答えを与えてくれるものではない。この作品でも様々な視点を投げかけてくれる。それがすごく面白いと思います。
そして、俳優の皆さんにはこの作品を選択してくれた勇気に感謝しています。
初めましての方もお久しぶりの方もいますが、題材も6時間半という長さも相当な覚悟がいる作品です。
これから始まる創作が楽しみでなりません。