【公演 / 会見レポート】デヴィッド・ルヴォーからのラブレター、香取慎吾主演「テラヤマキャバレー」幕開け(舞台写真あり) (original) (raw)

香取慎吾が主演を務める「テラヤマ・キャバレー」が本日2月9日に東京・日生劇場で開幕。これに先駆け、昨日8日に舞台挨拶と公開ゲネプロが行われた。

「テラヤマ・キャバレー」は、寺山修司を題材にした音楽劇。ゆうめいの池田亮が脚本を担い、「黒蜥蜴」、音楽劇「道」、「ETERNAL CHIKAMATSU」などを手がけたデヴィッド・ルヴォーが演出を務める。

1983年5月3日、寺山が生涯を終えようとしていたとき、寺山の脳内では、彼を慕う劇団員たちがキャバレーに集まり、寺山の芝居「手紙」のリハーサルを行っていた。するとそこに、“死”がやって来る。“死”は寺山に対し、日が昇るまでの時間と、過去や未来へ行くことができるマッチ3本を与え、「その代わりに感動する芝居を見せてくれ」と依頼し……。

劇中には、寺山が作詞を手がけた楽曲群がちりばめられており、まず初めに香取が、“手紙”というキーワードが登場するナンバー「Come Down Moses」をしっとりと歌い上げる。ベルベットの幕が開くと、ミラーボールが回る豪華絢爛なキャバレーが現れ、その後ろにはいくつもの時計が配置された高さのある舞台美術が出現。そこではバンドメンバーが演奏を行っている。

創作に行き詰まった寺山(香取)がマッチをすると、近松門左衛門による人形浄瑠璃「曽根崎心中」の稽古場や、2024年の新宿歌舞伎町へと場面が移り、ビビッドな色遣いで構成された“過去”や“未来”の世界が、寺山を翻弄しつつ、新たなイマジネーションを与える。

香取は、寺山の詩的なセリフを繊細に紡ぎながら、「テラヤマ・キャバレー」の座長として、劇中に登場する劇団の主宰として、力強くもユーモアたっぷりに一座をまとめ上げる。また本作には、成河村川絵梨平間壮一ら扮する劇団員、伊礼彼方扮する“蚊”、宝塚歌劇団の凪七瑠海扮する“死”など、アンダーグラウンドな雰囲気をまとった個性豊かなキャラクターたちが多数登場する。

ゲネプロ前に行われた舞台挨拶には、脚本を手がけた池田、演出のルヴォー、香取らメインキャストが出席。池田は、寺山の戯曲や映画、書籍などの膨大な資料を参考にしながら、香取に向けて当て書きをしたと明かし、「寺山修司さんの言葉を、今生きている自分たちがどう表現できるか、スタッフ・キャストの皆さんとセッションしながら作品を作ってきました。キャストの方々の肉体によって、これほど立体的な作品になるなんて、執筆した自分自身思いもよらなかったこと。最後、観客の皆さんに観てもらうことで『テラヤマ・キャバレー』という作品が完成すると思っています」と感慨深げに語る。

ルヴォーは「自分が若い頃、寺山修司さんの劇団がイギリス・ロンドンへ来たとき、初めて日本の現代芸術に触れました。そのときは、自分が日本の演劇に携わるとは夢にも思っていなかったので、今回はラッキーなチャンス。私から日本の演劇に宛てたラブレターだと思って、『テラヤマ・キャバレー』を観ていただけるとうれしいです」と笑顔を見せた。

主演の香取は「本作の稽古中、寺山修司さんが亡くなった年齢と同じ年になりました。寺山修司役ではあるのですが、寺山修司ではなくなる瞬間もあったり、香取慎吾として存在しているような瞬間もあったりと、非常に不思議なお話です」と率直な感想を述べ、劇団員“白粥”役の成河は「日本で演劇を作っている外国人演出家の中でも、ルヴォーさんは特に、日本の演劇、芸能、言葉、国そのものに興味関心を持ち続けてくれている方。これまで日本の文化に多く触れてきたルヴォーさんの、集大成のような作品になっていると思います」とルヴォーへの信頼を明かす。

キャバレーの下に住む“蚊”役の伊礼は「エネルギッシュな作品なので、32公演演じきれる気がしません!(笑)」と冗談めかしつつ、「お客さんにものすごい衝撃を与えることができるのでは」とコメント。“死”を演じる凪七は「宝塚歌劇団以外の舞台に出演させていただくのは初めてですので、何もかもが新鮮で刺激的で衝撃的。皆さんからたくさんのことを勉強させていただいております」とあいさつした。

劇団員“アパート”役の村川は「ルヴォーさんが操縦する壮大な船に乗って旅をしてきました。ジェットコースターのように緩急のある作品なので、こんなに皆さんの感想が楽しみな演劇はありません」と期待を明かし、劇団員“暴言”役の平間は「最近の人々は完璧なものを求めがちですが、正しいものがすべてではなく、間違っていることに面白さがあったり、不完全だからこそ深みがあったりする。『テラヤマ・キャバレー』は『人間って素敵だな』と思える作品です。キャスト・スタッフの作品に対する深い愛を受け取りに、劇場へ遊びに来てください」と観客に呼びかける。

最後に香取は「日常生活を送る中で、下を向いてしまう瞬間もあると思います。ですが、劇場から帰るときには、自分の心の中に残った言葉と対峙する時間が訪れて、未来に向かって上を向けるような、そんな作品になっていると思います」と本作の魅力をアピールし、舞台あいさつを締めくくった。

上演時間は休憩ありの約2時間40分。東京公演は2月29日まで行われ、その後、3月5日から10日まで大阪・梅田芸術劇場 メインホールで上演される。またこのたび、香取が劇中で歌唱するナンバー「質問」が、2月16日から各音楽配信サービスで配信されることも明らかになった。