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「團菊祭五月大歌舞伎」尾上菊五郎が市川男女蔵の弾正に「お父つぁんに大分似てきましたね」

2024年5月4日 12:48 2

「團菊祭五月大歌舞伎」が、去る5月2日に東京・歌舞伎座で開幕した。

「團菊祭五月大歌舞伎」は、九世市川團十郎と五世尾上菊五郎の偉業を顕彰するため、毎年5月に行われている公演。昼の部は「『鴛鴦襖恋睦』おしどり」で幕開け。尾上松也が河津三郎 / 雄鴛鴦の精、尾上右近が遊女喜瀬川 / 雌鴛鴦の精を演じ、中村萬太郎が股野五郎を勤めた。続く「毛抜」は、昨年4月に死去した市川左團次の追善狂言として行われるもので、左團次の当たり役である粂寺弾正を長男・市川男女蔵が演じるほか、後見を市川團十郎が担った。同演目で、小野春道を初役で勤める尾上菊五郎は、男女蔵の弾正について「お父つぁんに大分似てきましたね」とコメントした。

昼の部ラストとなる「極付幡随長兵衛」は、日本の侠客の元祖と言われる、実在の人物・幡随院長兵衛を題材に、河竹黙阿弥が作を手がけた作品。長兵衛を團十郎、水野十郎左衛門を尾上菊之助を担う。團十郎にとって長兵衛は、父・十二世團十郎から教わった最後の役となる。上演に向け團十郎は「長兵衛の孤高の精神は、女房や子分たちには理解されません。しかし、そのもどかしさや心の動きがお客様に伝わるように演じるのが重要です」と語っている。

夜の部には「伽羅先代萩」と「四千両小判梅葉」がラインナップされた。「伽羅先代萩」では、足利家の跡継ぎである鶴千代に対し、忠義を尽くす乳人政岡とその息子・千松の悲劇を描く「御殿」と、御家乗っ取りを企む仁木弾正が登場する「床下」が披露され、「御殿」では政岡を菊之助、千松を、菊之助の長男・尾上丑之助、「床下」では仁木弾正を團十郎が勤める。「御殿」で菊之助は、政岡が鶴千代と千松のために茶道の作法で米を炊く“飯炊き”に初めて挑む。菊之助は“飯炊き”に向け、「鶴千代と千松に対してそれくらい母性を出せるかが課題だと思っています」と話した。

「四千両小判梅葉」は、河竹黙阿弥が幕末の江戸城で起きた御金蔵破りを題材に描いた作品。五世尾上菊五郎により1885年に初演された本作を、今回は祖父の二世尾上松緑が上演を重ね、当代の菊五郎に師事している尾上松緑が主人公・野州無宿富蔵を初役で勤める。四谷見附の堀端でおでん屋の商いをしている富蔵は、夜更けに偶然再会した藤岡藤十郎(中村梅玉)に、江戸城の御金蔵破りの話を持ちかけ……。松緑は富蔵を「物の道理をわきまえた肚の座った人物」、梅玉は藤十郎を「気の弱い、世間知らずのボンボンです」と、それぞれ役について語った。

公演は5月26日まで。なお、「極付幡随長兵衛」の閻魔大助、「四千両小判梅葉」の黒川隼人を勤める予定だった中村鷹之資は、体調不良のため休演。当面の間、閻魔大助を市川升三郎、黒川隼人を中村莟玉が勤める。

なおステージナタリーでは現在、「團菊祭五月大歌舞伎」の特集を展開中。松也が、子役時代から出演してきた「團菊祭」や演目への思い、また歌舞伎俳優としての現在地、そしてこれからを語っている。

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