音楽劇「死んだかいぞく」稽古が進行中 (original) (raw)

カイゾクはいかにしてカイゾクになったか?音楽劇「死んだかいぞく」稽古が進む

2024年7月17日 12:40 12

音楽劇『死んだかいぞく』」の稽古が進行中だ。

音楽劇「死んだかいぞく」はアーティストの下田昌克による絵本「死んだかいぞく」をノゾエ征爾の脚本・演出で舞台化するもの。原作では、船上で腹を刺された海賊が、海に沈んでいく過程でさまざまなものを失う様が描かれるが、舞台版では、ノゾエのイマジネーションによって“死んだかいぞく”の半生が多彩に描かれる。

7月20日の開幕を目前にした稽古場は、独特な形の舞台美術や、ドクロマークがついたトリコーン、長いサーベルなど、ワクワクするものに満ちていた。取材に訪れたタイミングは、各シーンの細部を見直していく“小返し”をしているところで、ノゾエは1つひとつの動きやセリフをチェックしながら俳優たちに声をかけていく。

主人公・カイゾク役を演じるのは山内圭哉。キング・オブ・パイレーツとなったカイゾクが高台に立ちサーベルを振り上げるシーンでは、高身長の山内がさらに大きく見え、迫力を感じさせた。一方、山内以外は皆、手下の海賊たちやカイゾクの人生に関わってきた人物など、複数の役を演じ分ける。手練れの俳優たちは、ノゾエ戯曲の絶妙な間合いを、動きややり取りの中で的確に体現していき、普通の少年だったカイゾクがいかにしてカイゾクになったのかを描き出した。

稽古場には、原作者の下田の姿もあった。下田は本作の美術・衣裳・小道具デザインを担当しており、稽古場の下田のデスクには大きな色鉛筆セットや絵の具のチューブ、何に使うかはわからないが、小さな発泡スチロールのボールなどが置かれている。そして時折手元の紙に何かを書き取りながら、稽古の様子をじっと見つめていた。

その日の稽古後半は、本作の音楽を担う田中馨が中心となり歌稽古が行われた。これまでも多数の作品でノゾエとタッグを組んでいる田中は、不条理さを笑いに転換させるノゾエ作品の持ち味を、音楽によってさらに増幅させていてく。……が、観客の耳に楽しいナンバーは、歌い手にとってなかなかハードルが高いようで、田中は細やかに俳優たちの歌声を聞き分けながら、それぞれにアドバイスを加えていった。

取材中、印象的だったのは稽古場で何度も笑いが起きていたこと。ノゾエが演出を考えている一瞬や、小道具の調整など、ほんの数分の合間に、主に山内の一言がきっかけで笑いが起き、稽古場の空気がふわっと弛んだ。そんなカンパニーの様子は、カイゾクが死んでいく様を描くというドキッとするような内容でありながらも、どこか温かみや達観を感じさせる、原作の世界観に通じるものがあった。

公演は7月20日から28日まで埼玉・彩の国さいたま芸術劇場 小ホール、8月4日に長野・サントミューゼ 小ホール、7日に富山のオーバード・ホール 中ホール、10日に福井・ハーモニーホールふくい 小ホール、17日に兵庫・神戸文化ホール 中ホール、21日に福岡・J:COM 北九州芸術劇場 中劇場、24・25日に岡山・岡山芸術創造劇場 ハレノワ 中劇場、31日に長野・まつもと市民芸術館 小ホールで上演される。

なおステージナタリーでは下田、ノゾエ、山内の座談会を展開。原作誕生に関するエピソードが明かされたほか、舞台化に向けて3人がそれぞれの思いを語っている。

音楽劇「死んだかいぞく」

2024年7月20日(土)〜28日(日) ※公演終了
埼玉県 彩の国さいたま芸術劇場 小ホール

2024年8月4日(日) ※公演終了
長野県 サントミューゼ 小ホール

2024年8月7日(水) ※公演終了
富山県 オーバード・ホール 中ホール

2024年8月10日(土) ※公演終了
福井県 ハーモニーホールふくい 小ホール

2024年8月17日(土) ※公演終了
兵庫県 神戸文化ホール 中ホール

2024年8月21日(水) ※公演終了
福岡県 J:COM北九州芸術劇場 中劇場

2024年8月24日(土)・25日(日) ※公演終了
岡山県 岡山芸術創造劇場 ハレノワ 中劇場

2024年8月31日(土) ※公演終了
長野県 まつもと市民芸術館 小ホール

スタッフ

原作:下田昌克(ポプラ社の絵本「死んだかいぞく」より)
脚本・演出:ノゾエ征爾
音楽:田中馨

出演

山内圭哉 / 山下リオ / 家納ジュンコ / 竹口龍茶 / 熊谷拓明 / 片岡正二郎
ミュージシャン:田中馨 / 東郷清丸

全文を表示