石川界人×菊池修司が初対面!2人のノエが語る「ヴァニタスの手記」 - ステージナタリー 特集・インタビュー (original) (raw)
望月淳のマンガ「ヴァニタスの手記カルテ」(スクウェア・エニックス)が1月に舞台化される。「ヴァニタスの手記」は、19世紀のフランス・パリを舞台に、吸血鬼ヴァンピールに呪いを振りまくという魔導書グリモワール“ヴァニタスの書”を探す吸血鬼の青年ノエと、吸血鬼の専門医を自称し、“ヴァニタスの書”を持つ人間・ヴァニタスが織りなすスチームパンクファンタジー。2021年にテレビアニメ版の第1クールが放送され、1月には第2クールがスタートする。
ステージナタリーでは、テレビアニメ版でノエ役を演じる石川界人と、舞台版で同役を演じる菊池修司の対談をセッティング。舞台稽古初日を迎えた12月中旬、初対面を果たした2人に、アニメと舞台、それぞれが持つ魅力について語ってもらった。
※2022年1月25日追記:舞台「ヴァニタスの手記」の1月21日から26日までの公演は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止になりました。
※2022年1月26日追記:新型コロナウイルスの影響により、本公演は1月29日12:00開演回まで中止となりました。また、一部キャストが変更となっております。詳細は舞台公式サイトでご確認ください。
取材・文 / 興野汐里撮影 / ヨシダヤスシ
石川さんと対談するんだ!(菊池)
──1月、「ヴァニタスの手記」のテレビアニメ第2クールと舞台が同時期にスタートします。それを記念して、アニメ版と舞台版でノエ役を演じるお二人にお集まりいただきました。お二人は今回初対面ということですが……。
石川界人 そうなんですよ。マスク越しでも彫りが深いのがわかって……お顔を直視できません!(笑)
菊池修司 えー!?(笑)
石川 舞台でしっかりと拝見します! 今は恥ずかしくて無理です!(笑)
菊池 僕もいつも石川さんの出演作を拝見しているので、今こうして隣にいるのが信じられないです。お会いできるのがうれしすぎて、友人に「今度、石川さんと対談するんだ!」って報告しましたもん(笑)。
石川 ははは! ありがとうございます。
菊池 なので、今日は石川さんからいろいろ盗ませていただきたいなと……(笑)。
石川 いえ、こちらこそですよ! 舞台の場合はWキャストの制度がありますが、アニメでは自分以外が自分の役を演じることはほとんどないので、同じ役を演じる方とこうやってお話しすることってないんですよね。それが本当にうれしくて。
石川界人
──そうですよね。この機会にぜひ、アニメと舞台、双方の魅力についてお伺いできればと思います。石川さんは第1クールに続いてノエを演じられますが、初めて「ヴァニタスの手記」を読んだとき、どんな印象を受けましたか?
石川 望月(淳)先生の前作「PandoraHearts」は女性向けという印象があったんです。なので、「ヴァニタスの手記」もそうなのかなと思っていました。でも、アニメ「ヴァニタスの手記」に出演するにあたって原作を深く読み込んだら、性別関係なく熱い気持ちになれる作品で。設定がよく練られていて、何より世界観が美しい。キャラクターの心情も細やかに描かれているので、本当に面白い作品だなと思って読ませていただきました。
──アニメ化されたことにより、「ヴァニタスの手記」が持つ美しい世界観が視覚的に表現されていますよね。
石川 そうですね。また「ヴァニタスの手記」には専門用語が多く登場するのですが、物語が進んでいく中で、自然と理解できるようになっているんです。板村(智幸)監督をはじめ、スタッフの皆さんが非常に考えて作ってくださっているんだなと感じました。脚本に起こした段階での耳なじみの良さがありましたし、僕らもとても演じやすかったです。
──菊池さんもアニメをご覧になっていたそうですね。
菊池 普段からわりとアニメを観るほうなんですが、特に「ヴァニタスの手記」は毎週楽しみにしていた作品で。非現実世界に飛び込んだような、華やかな作品だなという印象を受けました。第1クールが始まる頃に、(舞台で)ノエを演じさせていただくことが決まって、毎週の放送がさらに楽しみになりましたね。
菊池修司
──先ほど板村監督のお話が少し出ましたが、ノエを演じるにあたって、監督からどのようなディレクションを受けたのでしょう?
石川 ノエの特徴について「彼は人の話を聞きません」「彼はまだ共感性が成長していない」と説明を受けました。共感する力が欠けているわけではなく、もともと備わってはいるんだけど、子供のときのまま止まってしまっているというのが肝で、「自分が興味を持ったものしか目に入らない、というふうに演じてほしい」と言われました。ヴァニタスと共に困難を乗り越えていく中で、徐々に周りが見えるようになっていくんですけど、それでもやっぱりどこか少し抜けている(笑)。「未熟であることを表現してほしい」というような演出がありました。
──“抜けている”ことを意識して演じるのは難しいのでしょうか?
石川 どこか抜けてる人って、身の回りに誰かしらいると思うんです。そういう人たちをイメージして演じた部分があります。そう考えると、ノエはそんなに遠い存在じゃないのかもしれません。
菊池 僕、ノエと似ている部分があるなと感じていて……ノエがヴァニタスにツッコまれるように、僕も周りの人からツッコまれることがあるんです(笑)。
石川 ははは!
菊池 そのたびに、周りの人に支えてもらっているなって感じますね。あと、ちょっと頑固なところも似ているかもしれません。
──石川さんはノエと似通っているなと感じる部分はありますか?
石川 ノエはいつも猫のムルと一緒にいますが、僕は猫アレルギーなので体質的に真逆なんですよね。しいて言うなら、ちょっとキレやすいところ……?(笑)
──石川さんはいつも冷静なイメージがあるので意外でした(笑)。確かにノエは基本的に穏やかですが、突然戦闘モードになったり、急にギアが入るところがあるように感じます。
石川 ノエとは少し違う怒り方なのかもしれませんが、言葉を扱う職業柄、チクチクした言葉の使い方をする人に対して敏感なところがあって。「この言葉ってこういう意味がありますけど、しっかり考えて使っていますか?」という感じで怒ってしまうことがあるので、気を付けないといけないなって思っています。逆に「あのときの言葉選び、間違ってたよ、自分!」みたいに、自分自身に対して怒ることもあります(笑)。
石川界人
花江さんのすごさを語り出したら止まらない(石川)
──「ヴァニタスの手記」には、物語の主軸を担うヴァニタス、ノエのほかにも、魅力的なキャラクターが多数登場します。
石川 僕はドミ(ドミニク)が好きですね! ジャンヌも可愛い! でも彼女はヴァニタスのものだから……。ドミは守ってあげたくなりますよね。この先の展開でもすごく可愛い場面が多いんです。
菊池 今の石川さんの反応を見ているだけでも、第2クールが楽しみになりました(笑)。僕は闇系のキャラが好きなので、ルイがお気に入りです。
石川 わかります! カッコいいですよね。
菊池 ルイはノエにとって大切な人物ですし、彼がどれだけのものを背負っているのか、考えれば考えるほど素敵なキャラクターだと思います。
──ルイと同様、ノエに大きな影響を与えているのが、本作の主人公であるヴァニタスです。ヴァニタス役の植田圭輔さんとは今回が初共演となりますが、上演が発表された際、「憧れの大先輩」とコメントされていましたね。
菊池 3年くらい前にイベントでご一緒させていただいてから、ずっと共演したいと思っていたので本当にうれしかったです。先日取材でお話しさせていただいたんですが、別作品の本番前にもかかわらず、圭輔さんはもうすでに「ヴァニタスの手記」の台本を読み込んでいて……僕もすごく奮い立たされました。圭輔さんと僕の関係性と、ヴァニタスとノエの関係性はすごく似ている気がしているので、それを舞台で表現できたら良いなと思います。
菊池修司
──石川さんは、アニメでヴァニタス役を演じる花江夏樹さんとさまざまな作品で共演されてきました。石川さんが思う、花江さんの声優としての魅力はどんなところですか?
石川 お芝居ってキャッチボールのようなものだと思うんですが、花江さんはこちらが暴投したとしても絶対に捕ってくれて、しっかり返してくれるんです。なおかつ作品への理解度が非常に深い。ここはギャグテイストで、ここはシリアスな雰囲気で、ここは本音で語って、ここは本音で語らない、そういう切り替えがはっきりしているのに繊細なんです。僕たち声優は、視聴者の方に伝わりやすいように演じなければいけないですが、ヴァニタス的にはバレたくない、けれども伝えないといけないところがある。そういう細やかなところを表現するのが本当にお上手なんです。自分を含めて、僕らの世代でまねできる人はそうそういないんじゃないかな、といった感じで、花江さんのすごさを語り出したら止まらなくなっちゃいます(笑)。
花江さんもそうですが、「ヴァニタスの手記」の出演者でいうと、森川智之さんだったり、石田彰さんだったり、遊佐浩二さんだったり、先輩方のお芝居を観ていると「ああ、自分はまだまだだな」と感じることが多いです。先輩たちはテストの段階ですでに「鍵穴にがっちりハマった! もうそれしかない!」というようなお芝居をされるんです。でも本番になると「実はこっちにも鍵があるんだけどね」といった感じでテイストを変えることがあって、その鍵もまた開くんですよ……。ああいうふうになれたら本当にカッコいいなって思います。