-前庭- めまいを語るうえで最も大切な場所とは? (original) (raw)

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前回からのつづきで、今回も"めまい"のことを紹介していきます。

今回は、めまいを知るために、避けては通れない"前庭"のことをお話しします。

前庭(ぜんてい)とは

前庭は、耳にあります。

といっても、外から見えている"耳"ではなく、鼓膜よりもっと奥の方にあります。

耳にあるといっても、"音を聞く"という聴覚とは関係ありません。

前庭は、"体が今どのように動いているのか"、とか"体は今どのくらい傾いているのか"を感じ取るための場所です。

前庭は、さらに"三半規管"と"卵形のう・球形のう"に分かれます。

三半規管(さんはんきかん)

前庭という言葉は知らなくても、"三半規管"という言葉なら聞いたことがある、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

三半規管は、"半規管"という場所が3つあることから、名付けられています。

半規管はドーナツのような形の管になっています。その管の中にはリンパ液と呼ばれる液体がたっぷり詰まっています。体が回転したときには半規管も一緒に動き、そして中のリンパ液も動きます。

※実際には、体の回転方向とは逆方向にリンパ液が動きます。

半規管の中には、このリンパ液の動きを感じとるためのセンサーが存在しています。このセンサーが刺激されたときに、体は回転を感じることができます

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"三次元"という言葉の通り、回転を感じるために、半規管を3方向に用意しています。そして、それぞれの半規管がどの程度刺激されたかを統合して初めて、正確な回転方向を感じることができます。このことから、3つの半規管という意味で”三半規管"という言葉が使われます。

球形のう・卵形のう

"のう”とは"袋という意味です。

つまり、球形のうは"球の形のような袋"、卵形のうは"卵の形のような袋"という意味で名づけられています。

この2つの袋は、体が上下とか前後など、体がまっすぐに動いたときに働く前庭です。

三半規管と同様に袋の中はリンパ液で満たされています。

球形のうと卵形のうは、体の動きを感じるセンサーに"耳石(じせき)"とよばれる物質を使っています。この石が動くことで、センサーが刺激され、体は、上下に動いたとか、前後に動いたといった、まっすぐな動きを感じることができます。

なお、この耳石が使われている場所ということから、球形のうと卵形のうは合わせて"耳石器(じせきき)と呼ばれます。

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前庭で読み取った情報は脳へ!

このようにして、三半規管では3方向の回転を、球形のう・卵形のうでは上下・前後方向の動きを感じ取っています。

これらの情報が"前庭神経"とよばれる細い神経を通って脳に伝えられます。

脳では送られてきた情報を全部統合することで正確に、体がどれだけ動いたのかということを刻々と読み取っているのです。

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耳石が取れることで起こる病気

ところで球形のうは三半規管とつながっています。

そして、耳石が何かの拍子にセンサーからぽろっと取れてしまうことがあります。

この時に、耳石が三半規管の中に入り込んでしまうことがあります。

三半規管に入り込んでしまった耳石は、三半規管のリンパ液を攪拌してしまうことになります。そうなると、三半規管内では正確なリンパ液の流れを読み取ることができません

結果、三半規管の機能が障害されてしまいます。

このような病気が、"良性発作性頭位変換性めまい症(BPPV)"と呼ばれるもので、めまいの原因として最も多いとされています。

BPPVについては、とても患者さんの数が多い病気なので、後日改めて紹介する予定です。

今回のまとめ

耳にある"前庭"が体の動きを感じています

前庭には三半規管と球形のう・卵形のうがあります

三半規管は回転を、球形のう・卵形のうはまっすぐな運動を感じます

球形のうの耳石が三半規管に入ってしまう病気はめまいの原因として最多!

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今回は、めまいで最も難しいと感じることが多い内容かもしれません。

とりあえず、まとめに記した内容だけでも気に留めていただければ嬉しいです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!