女王79歳、健在ぶりを示す (original) (raw)

本書は1969年発表の、女王アガサ・クリスティの「ポワロもの」。このところ事件が起きる前が長く「誰が犯人か、どうやったのか?」ではなく「何が起きるのか?」で物語の前半を引っ張る作品(例:ゼロ時間へ)が多かったのだが、本書では冒頭13歳の女の子が殺されてスタートする。

舞台は、ロンドンから40マイルほどの町ウドリー・コモン。ポアロの友人で探偵作家のアリアドニ・オリヴァ夫人(作者の分身)は、その街に滞在していてハロウィン・パーティに招かれた。場所は立派な庭園が造成されたドレイク邸、資産家の女性が亡くなり姪たちが住んでいる。子供たちを含めて30名ほどがやってきた。

日本人には分かりにくいいろいろなお遊びをしているうち、嘘つきで有名な少女ジョイスが探偵作家としったオリヴァ夫人に「あたし、人殺しを見たの」と言う。誰も取り合わなかったのだが、ジョイスはリンゴ食べ競争のバケツで溺死させられてしまった。

オリヴァ夫人はポアロに助けを求め、ポアロは現地に引退していたスペンス元警視の助けを借りて、ジョイス殺しと彼女が見たというかこの殺人事件の捜査を始める。この2~3年に殺人事件と疑われることは、現地の人の協力で得られた。その中に、亡くなったドレイク夫人の小間使いが失踪している件があった。彼女には、ドレイク夫人の遺書を偽造し遺産を得ようとした容疑がかかっていた。

ポワロは、オリヴァ夫人からもらったパーティの出席者30名のリストを手に、町中を歩き回る。ほぼ聴取を終えたころ、ポワロは足の痛みを訴える。「もう年かな」という彼に、オリヴァ夫人は「いつもそんなにめかしこんでいるから靴がきついのですよ。柔らかい靴にしなさい」と諭す。

地道な聞き取り調査から得られる合理的な推理、女王はまだまだ健在ですね。