「アジア版NATO」という戦略ミス (original) (raw)

石破総理の初外遊は、ASEAN会合という大舞台になった。三ヵ国はASEAN10ヵ国に加えて、中国・ロシア・米国らがいて新総理の顔を売るいい機会になった。記者会見などの対応も、堂々としたものだったと思う。

しかし、一部には懸念の声もある。党内基盤が弱く総選挙の結果次第では短命に終わるとされる以外にも「アジア版NATO」という主張には疑問符が付く。総理・総裁になって封印したとはいえ、米国ハドソン研究所に英語で論文を載せてしまったのは、勇み足ではなかったか。

今回首脳外交を展開した諸国でも、その点には賛同できないとする意見が目立つ。

ASEAN各国、アジア版NATOへの根強い警戒…中国との関係考慮「受け入れるのは難しいだろう」 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

沖縄・浦添市にある「Camp Kinser]

中国を名指しして太平洋諸国と軍事同盟を結ぼうという発想は、純粋軍事的にはあるかもしれないが、政治的には(達成困難だし)リスキーだ。そもそも韓国が侵略されたとき、自衛隊朝鮮半島に上陸(Boots on the Ground)して闘い、殺し殺されるということには大きなハレーションがある。

・韓国国内が、日本軍侵略再びと激高する

・日本国内でも(憲法9条が廃止されたとしても)批判の声が高まる

この点を乗り越えられたとしても、上記の記事にあるようにASEAN諸国が加盟するとは思えない。米中どちらにつくかについて、これらの国の国民は「やや中国優勢」との意識があるほどだ。

僕が2年ほど前から「NOTO:North Ocean Treaty Organization*1」と言っているものは、中国ではなく西側からすでに制裁を受けているロシアを主敵とするもの。すでにあるNATOの枠組みに、やはりロシアに隣接して侵略される危険性のある韓国・日本を加える「NATOの極東への拡大」である。これでも上記のようなハレーション問題は残るのだが、より差し迫ったリスクへの対応だし、具体性(*2)がある。

石破総理(とそのブレーンの皆さんは)、戦略的なミスである「アジア版NATO構想」を取り下げ、対ロシアであるNOTOの議論をしていただきたいと思います。

*1:NATOはNOTOへ進化するのか? - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com)

*2:NATO演習に、韓国・日本はすでにオブザーバ参加している