鶏卵価格が落ちつき新商品も投入 一方でコスト増の心配も (original) (raw)
最近の鶏卵の話題と言えば、「昨年より4割安、加工向け需要戻らず更なる下押しも」といった、鶏卵価格の落ち着きは私たち生産者にとってもうれしいことではありませんが、需要側の低迷による影響の方が実際大きな機会損失になり、結果価格に跳ね返るといった弊害もあります。
このこともあり、まずは消費の回復があり、そして価格が上昇していき収入増加になるといった正しいサイクルに進んでいくことが、養鶏業界発展のためには必要です。
さて、最近の加工向け、中食・外食等の業界では、鶏卵の新商品発表が続いており、消費者への認知を広めているように感じます。
しかしながら、鶏卵から代替卵や原料としての鶏卵から変更した商品については、昨年心配した通り戻り(原料を鶏卵に変更する)は悪く、多くは変更コストを意識したことや、商品化できるように配合や製造工程の変更を行い商品としての価値を持たせていることから、消費者からの要望もないこともあるのでしょう、変更はしていません。
これは、鶏卵消費を少しとはいえ失ったことになります。
今後この分野は代替卵や代替品による供給が続きますので、新商品による鶏卵需要に期待するしかありません。
その業界も鶏卵の安定供給もあり春のイベント集客として鶏卵の新商品を発表し一定の集客につなげているように感じます。
例えば、期間限定の丸亀製麺「トマたまカレーうどん」を6月下旬まで販売します。
この商品は、初夏の人気メニューでしたが、昨年は商品提供はなく復活版として提供します。
料理をする俳優とコラボした商品で、カレーとトマト、溶き卵をベースにスパイシーになかにマイルドな卵を合わせたメニューです。
外食向けは、比較的好調に集客をしており安定した状態に見えます。
牛丼チェーン吉野家も親子丼を復活販売しており、鶏卵消費が期待されます。
両社とも更なる集客を目指しており、新商品や人気メニューを再投入して来店機会を作っているわけです。
鶏卵価格が下落しているとはいえ、通常時期の鶏卵相場よりも高いこともあり多くの養鶏場では経営の風向きは追い風とも言えるでしょう。
飼料価格が低下していることも更なる追い風になっていると思います。
一方、コストの増加も気がかりではないでしょうか。
配合飼料価格は今期は前期より値段は下がってはいますが、多くは1トン9万円台前半と言ったところかもしれません。
一時期は10万円を少し超えるぐらいの値段でしたから、幾分ですが下がり負担は和らいでいると思います。
この先もコーン相場の低迷も続くと思われますが、輸送コストは上昇していくことでしょう。
また人件費の上昇も大きくなっていると思います。
昨年10月最低賃金改定があり多くは30円以上の時給上昇になっているはずです。
また折からの人手不足や国が推進する賃上げ風潮もあり今年から賃金を大きく改定する企業も多くなっています。
これは、養鶏産業は無関係と感じる方も多いかもしれませんが、労働者側からすれば賃金が高く働きやすい企業が周辺に増加したということを意味しており、まずはそこから職を探していくという流れになります。
そしてそこが難しければその次の候補と続き、それも難しければ仕方がないので畜産業と言うこともあるでしょう。
コストを意識することはとても大事なことです。
ですが、度を超えるコスト削減は悲劇しかありません。
多くの養鶏家が取り組みした餌削減対策は、うまくいった場合もあれば失敗しどうにもならないという農場もあります。
特に3年前からは特に取り組む農場が増えていったように感じます。
餌代を削減でき、コスト削減に一番効果的であり近隣の農場から指導を受けて取り組みを始めたものの、鶏舎の構造や風の通り方といった立地、管理の手法が異なることもあり、何等かおかしいと感じても対処ができず、生産数量を減少させ、個卵重も低下し規格外が増えていく弊害も散見されました。
ですがこれを異常と認識できればまだ良いのですが、それすらわからずこんなもの、鶏が悪いから仕方がないといった原因究明ができない農場もあります。
今年度は昨年から言われていますが、鶏卵相場の上昇は大変緩やかになっています。
この要因にはご存じの通り、生産回復が通常モードに入ったことが要因です。
それに加え加工向けの需要回復が遅延していることもあります。
また、食品価格の上昇もあり鶏卵の購入機会も以前とは異なる状態でもあります。
当分続くものと言われますので、適正な生産をお願いするという業界文書が既に発出されているわけですが、皆さんの農場はどのように取り組まれていくのでしょうか。
鶏卵価格が落ち着き、加工筋の決算は総じて良好でした。
これは仕入れ価格が下がったことで利益が確保できたことが要因です。
ですが、仕入れ価格が増えたので増量して仕入れているのかと言えばそれは別の話になります。
必要量を、適正に仕入れるわけですからシビアなものです。
輸入鶏卵が増えたこともありますが、安定した商品供給のために十分な仕入れを事前に行っており年末のような急いで仕入れるという手当と呼ばれる行動の必要はないため、この先もまだ時間がかかるかもしれません。
また来週からは大型連休が始まり、加工向けは既に手当てが済んで今の相場値になっています。
人が動きますので、流通店舗も積極的な仕入れはしないと見られます。
となりますと、連休明けの鶏卵相場はどうなのかということになります。
夏相場への入り口は、多くはこの連休明けから始まります。
そうなると、廃鶏をどうするのか、コストはどうするのかという話題が6月頃には出るかもしれません。
6月は勤労者向けの減税が実施されます。
数万円の減税となるようですから、夏は美味しいものを食べる、少し豪勢な旅行を計画する、買い物を増やして子供や孫を呼ぶという所もあるかもしれません。
その時、鶏卵は消費される方々から見てどのような立ち位置になるのでしょうか。
美味しいもののそばに鶏卵があるのでしょうか。
それとも夏が需要の減退期に入り、例年通りの鶏卵になるのでしょうか。
ただ、鶏卵が安いということは、外食向け、加工向けは仕入れる対象になるということもあります。
相場が安いことはいつもの夏のことかもしれません。
そこにコスト増という意識から、自身の技量を超えた取り組みから収拾がつかないということにならないように十分な注意をして取り組みをしてください。
餌は経営コストの6割を超えていることは皆さん知っていることですが、これを目標5割、4割まで下げるという無謀なプランにならないようにしてください。
最近の鶏は先に鶏卵を産み、餌不足からガクッと産卵率が下がるということもあり、異常として認識する頃はすでに1割、2割産卵減覚悟ということもあります。
それに加えての初夏の猛暑も心配です。
そこに鶏卵相場の通常化と言う収入減少が畳み掛けます。
この先も、不安な経営が続きますが、では少しでも安心できる経営になるために皆さんは何をしていくのでしょうか。
そのためには、方法論だけで十分なのでしょうか。
その中に人はどの立ち位置になっているのでしょうか。
昨年は高相場であったこともあり養鶏業の廃業は少ない時期でした。
今年は既に公になっているもので1件確認されています。
まだ予備軍とされる農場もあるようです。
そして例年相場と高コストに経営者のみならず、従業員皆さんで知恵を絞る時期に入るのかもしれません。
外食産業が鶏卵を使用している話題で満足されず、使ってくれているこの時期こそ次の一手を模索し行動してみてはいかがでしょうか。
明日からIPPSが名古屋で開催されます。養鶏設備が展示され、アニマルウェルフェア等次の経営参考になるセミナーも開かれるようです。
農場HACCP認証の相談会もあり、衛生管理の向上から鶏卵個数の減少を防ぐ取り組みの参考になる方法もあると思います。
皆さん思い思いの大型連休を迎えることでしょう。
そして、その先を早く見つけるそんな5月を迎えたいと思います。