生産側の収益見込みと販売側の収益見込み 私たち養鶏家は何を感じ取るでしょう (original) (raw)

株式市場は、株の取引きをされる投資家だけの世界と見る方も多いでしょう。
でも、株式を購入したりする基準には、企業の収益見込みといった予測を示しており、ここから業界の見込みや予想もある程度できます。

例えば、生産者側の上場企業には、北海道で5割程度のシェアを持つホクリョウがあります。
この企業の24年度3月期決算は、税引き後の利益を前年比2.2倍の16億円で、売り上げは189億円と6%増加しています。
経常利益は67%増加した23億円で、この要因には鶏卵相場が上昇したことが要因であるといわれます。

一方、販売先企業として液卵メーカー イフジ産業があります。
24年度の決算は純利益を前年比43%増加の15億円となりました。
細部を見ると、確かに営業利益は上昇しているものの、それ以外の単年度増加要因となる課税所得の減少による法人税が低く抑えることができたこと、土地取引による収入計上があるようです。

では、好調で25年度決算に向けて進んでいくかと見ると、2025年3月期の純利益を14.4%減となる13億円になると見込んでいます。
一見減収になると想像できますが、どうもそうでもない見込みを立てています。
売り上げを16%減と見込みますが、営業利益は12%増加、経常利益は9%増加するとしています。
売り上げは下がるかもしれないが、利益は確保しており増収が予測されるという感じです。

では、生産者側も同じになるかと言うと微妙に違いがあるように見えます。
先ほどのホクリョウは、2025年度売り上げを税引き後利益を今年度42%減の9億6000億円になりそうとしています。
営業利益は39%減、経常利益を38%減としています。
その理由に、鳥インフルエンザの影響で落ち込みが続いている業務用需要の回復が遅れると予測しています。

この点は液卵メーカー側の売り上げが減少している数値にも表れていると感じます。

企業情報から読み取ったものですが、養鶏業界はどのように感じていくでしょうか。
現在の鶏卵相場は東京M規準値200円(本日20日時点)です。
長期連休が明けた7日に10円下げて、その翌週も下がり、現在の値段です。

夏季相場に入ったわけですが、皆さんは想定通りの生産活動と収入見込みでしょうか。
鳥インフルエンザの危害は完全に消え去ってはいませんが、通常夏季の相場安に例年対応されるところは多いと思います。
早期の廃鶏出荷、空舎期間の調整、秋に向けた餌付け状況と、場合による増羽の指示等様々あると思います。

上場生産側と加工向け企業の予測は、生産した鶏卵の行く末を占っています。

先ほどの生産側企業は北海度のシェアは5割ある地元では大規模生産業者です。

一部は東北地方を中心に生産やパッキングも行っており関東にもある程度流入しているように感じます。
北海道で生産される鶏卵は、輸送コストもありますが多くは地元北海道で消費されるもので多くはそのほかの地域に流出することはあまりなく、それ以外の地域では無関係の話かもしれません。

昨年秋以降話題になっていると思いますが、本年は春先には通常生産に戻り生産量は例年に近い水準に回復しました。
鳥インフルエンザの被害もありましたが、昨年と異なり全国的にまん延というほどの影響はありません。

先ほどの話のように、加工向けの需要は回復の遅れが続いているとされます。
これは日本養鶏協会で3月12日会議の際に鶏卵生産者や流通企業や製造業の担当者が出席した際にも話題になっています。
これは、今年下半期(7月から年末)と翌年上半期の鶏卵需給見通しの中で、方向性を示しているものです。
キーワードは「食品加工メーカーによる需要が十分に戻らない可能性があり、卸売価格も低迷する恐れがある」とされます。
セブンや山崎製パンの担当者らの出席もあり、企業での消費量や具体的な数値は示されていません。
また家庭向け消費も、生活防衛意識の高まりもあり、昨年を超えるような水準にならない可能性を見込んでいます。

さて、加工向けメーカーは鶏卵が潤沢に仕入れが可能になりましたが、例えば鶏卵の量を減らしたサンドイッチや代替卵を使用した商品といったものは、ブログでも書きましたが、加工工程の変更はオートメーションの変更でもあり、製品のみならず、包装材の変更もあるでしょうし、鶏卵の補充日程も変更になるはずで、広範囲になるのが普通です。

不足時はその逆の工程を綿密に設計し変更しており、やはり人・モノ・コストを投入しています。
ですから、商品調査や風味、食べ応え等十分検討して販売されていますので、本来に戻す理由がない限りそのままでも良いと考えるのが経営の視点ではないでしょうか。

つまり、戻したのだから集客につながる、客単価が上昇するといった見える成果がないと、コスト負担だけという株主に対しても説明がつかないということも考えられます。

最近は、外食向け鶏卵商品は多く発表されており一定の需要があるように見えます。
ですが、多くは農場指定や商社指定が多く、全ての養鶏家にチャンスがあるというわけではありません。

また、一部加工メーカーは国産原料の使用割合を元に戻すという話も聞きます。

しかしこの話には先があり、今回令和の大流行による供給不安リスクを回避するため、一定量は輸入卵の仕入を継続するというものです。

ですから、元に戻り全てが解決されると言うことではありません。

では、私たち養鶏家はどのようにこの夏を迎えていくのでしょうか。

まずは、生産量を維持して損失を生じさせない農場を作ることが必須です。
現在の基準値は200円です。

これは決して安いという額ではありません。

飼料価格も上がりましたが、上手な経営者はこの値段でも吸収できる値段という所もあります。

確かに高いほうがいいと思いますが、この先需要が季節要因の減退もあり再度大きく上昇するまで時間がかかることは例年見ている姿ではないでしょうか。

昨年は高価格の良い相場でした。
でもそのような季節は毎年あることではありません。

その高価格の裏で仕入れ先を変更し加工筋の動向を気にする方も少なかったと思いますが、少し時代が変わりました。
誰もが一時的という言葉を話していました。

でもそうなったのでしょうか。

まずは、今の皆さんの農場生産量は本当にベストな数量なのでしょうか。
農場産卵率(農場で生産した個数を農場の羽数で除算したもの)が9割もない農場もあると思います。
でも上手な飼養管理をすることでは、92%、94%とさらに上に行く農場も存在しています。

数があって、まとまったお金になるのが養鶏です。

たかが1個20円、25円かもしれません。
でも100個多くなったら2000円、2500円、1000個なら、1万個ならと考えたらどうでしょうか。
決して無視できない金額です。
それが収入です。

コストを削ることが最優先とする農場もまだ存在しています。
でも今の時代高温管理で餌代を抑える、餌レベルを下げて差額を削減とするという時代はもう一巡しており、まだ模索している状態であればその見通しは甘かったと考えても良いと思います。
まずは個数を確保するのが優先されます。

いや、個卵重が・・飼料要求率が・・

という話もあるでしょう。

最近の白鶏は個卵重の増加は緩やかになっています。
一昔、特に平成初期のような感覚を持っているのだとすればそれは古い情報を保有しているように見えます。

餌を与えるほど個卵重が大きくなるという時代ではなく、逆に抑えてしまうことでいつまでたってもMSサイズが中心に生産して、サイズバランスよい生産ができない農場も見る機会が増えました。

農場の生産方式に反しているのであれば、昔の基準を採用するのではなく、今の時代の鶏から得られる現実から新基準を作成するのが正しい養鶏経営ではないかと思います。

今の時代ウインドレス鶏舎、セミウインドレス鶏舎でもこの高温管理を採用して抑制を目指す農場が増えています。
一昔の適温管理をする農場は少なくなりました。
でもそれによる弊害に もがく農場もまた増えており、解決策を見いだせず、もがき5年、10年経過している農場もあります。

せっかくの高相場恩恵の波に乗れず、破卵が多い、生産個数が少ない、規格外が多くなるといった農場もありました。
でも今年は適正相場値で動いています。

ということは、昨年までのように破卵が多くても良い、規格外がそのまま多くても良いでは、昨年と違う収益になってしまいます。

これが農場体力の差になり、相場200円でも苦しい、300円なくては養鶏が成り立たないといった現実と離れた話が夏以降聞かれるかもしれません。

でも相場は需要と供給で決まります。

であればその値段で出来ることを模索するという意識が大事になります。
まずは、生産量を確認してください。

そして餌を削りその方策が見いだせない農場は通常に戻しまずは数確保に努めてください。

高温になるほど、卵殻は悪くなります。

この話をすると、そうだったと思い出す農場もあります。

ある農場は傷鶏卵を1ロット1割発生という所もあります。

そして規格外をなくす取り組みをしてください。

傷を作るのであれば自動集卵による弊害もあるでしょう。

箇所の点検から見つけて解決することも大事です。

農場ではコスト削減も大事ですが、もっと基本である生産の基本に立ち返ることも大事です。

5月も下旬になり、相場は夏に入りました。

7月頃は学校給食も終わり大口需要が更に減り相場の動きがあることと思います。

秋に向けて準備することも大事ですが、生産の基本を再確認することも忘れず行ってください。
既に、今年は体力尽きた農場が廃業を決めた養鶏場も発生しています。
万策尽きたと感じる前に、できること、養鶏の基本を思い出し取り組みを進めてください。