北海道で鳥インフルエンザが発生肉養鶏19000羽処分 本年初の発生事例 (original) (raw)
渡り鳥の飛来が9月下旬ごろから聞かれ、北海道、東北、北陸では今年もハクチョウ飛来等の見出しで報じており羽を休める鳥たちを写真に収めています。
ほほえましいシーンですが、例年渡り鳥の飛来が聞かれる頃には鳥インフルエンザの不安が高まります。
例年10月頃には野鳥からの感染事例が聞かれ始め、11月になると養鶏場からの被害報道が聞かれる傾向がありました。
本年は、9月30日検体回収した北海道乙部町のハヤブサから、10月8日北海道別海町から回収のカモ類の糞便からそれぞれH5N1亜型の鳥インフルエンザが検出されており、消石灰散布を始めたという方も多いことと思います。
野鳥からの2事例は北海道内であるものの道東、道南と離れた地域で検出されており、今回発生農場の道央地域と離れています。
先ほどお話ししましたが、渡り鳥は9月下旬ごろから東日本地域には飛来が始まっており、報道がないから安心というわけではありません。
渡り鳥飛来の話の多くは、養鶏家に向けての報道ではなく、地域の話として報じられており全国広く網羅されているわけではないということです。
ですから9月にはリスクが上昇していると考えていただくと、この先本格シーズンにむけて皆さんの農場をどのように守っていくのかという意識が高まることと思います。
そのような中、1例目になる北海道厚真町の肉養鶏場では16日農場から鶏120羽が死んでいるという連絡があり、簡易検査で陽性反応が確認され、17日遺伝子検査で確定となり、同日午前10時から飼育している19000羽の殺処分が始まりました。
この農場は平飼い飼育で採卵鶏農場ではありません。
これにより移動制限となる半径3キロ圏内に2農場32万羽、搬出制限半径10キロ圏内に3農場39万羽が制限をうけています。
処分そのものは数日で完了するものと見られ、鶏卵搬出はすぐに解除できると想像できますが、鶏は清浄化が確認できるまでは搬出は難しいでしょうから留め置きとなる可能性もあります。
該当されている地域の方々は、廃鶏出荷等のスケジュールについて1か月先以上の変更も必要になるかもしれません。
県の情報を集めてご対応ください。
例年11月頃から農場被害が聞かれますが、本年はそれよりも早い発生です。
早いから事態が深刻化するということはないでしょうが、それだけ早く皆さんの農場も鳥インフルエンザへの対策を始めていただくということです。
例年翌年4月頃までは不安が続く傾向にあります。
今年は7か月くらいの警戒が必要です。
飼養衛生管理基準を守り、車両の消毒、人の消毒、機材の受け入れの消毒の他、農場から出る人、物の消毒も大事な時期になりました。
そして、効果がないよと言われがちの消石灰散布も大事です。
最近よく耳にしますが、ウインドレス鶏舎なのにウイルスが入るのは本当に小動物が原因なのか?
野鳥が保菌している可能性はわかるが、それがウインドレス鶏舎に侵入することがあり得るのか?
ネズミに数粒のウイルスがまき散らかされるだけで被害が甚大になるのか?
金網をふさげば何とかならないのが実情なのだから、本当に動物に原因を押し付けているだけではないか?
といった見えないものだからこそ、推測とその防止の手間に疑問を感じているところもあるように思います。
では意味がないとくくってしまうと、何もしないほうが良いという結論に至ります。
被害があるかないかは運しだいと言われるゆえんでもあります。
でも見えないものだからこそ、思い込み、根拠が明らかでない推測はとても危険です。
数多くある養鶏場で毎年甚大な数な養鶏場が感染することはありません。
最も被害が深刻であった令和4年の大流行でも86事例(農場や施設)です。
つまり被害を生みやすい地域(周辺にため池が多い、野鳥が多く検体回収からウイルスが検出されやすい、周辺に同業が多い等)もあるでしょうし、飼養管理のレベルの差から異なることもあるでしょう。
ですから、意味がないとくくることは「うちは大丈夫である、だから根拠が乏しい作業は無意味である。だってうちは発生したことがない」という思いはないでしょうか。
確かに確率から見ても小さいものです。
その小さいはしっかりとした管理と発生しやすい地域でないといった理由があると思います。
是非おごらず、被害ないような謙虚な姿勢で取り組みを続けてください。
空気感染もささやかれていますが、根本はウインドレス鶏舎であれば、人が持ち込むリスクもあり得ます。ネズミといった小動物が持ち込む可能性もあります。
確かに空気を媒介していくこともあるでしょう。
でも空気を除菌して入気口に入れるという方法は現実的ではありませんし不可能です。
そうなると無菌室のような設備を作りウインドレス鶏舎にする必要がありますが、その投資額は莫大です。
人の風邪や人間のインフルエンザ防止には手洗いうがい、マスクの着用といった方法を推奨しています。
でも完全に防げてはいませんが、新型コロナの時期には人が外出しなかった、マスクを着用していた、手をマメに洗っていたといった方法が人のインフルエンザ罹患率を下げたとも言われます。
このことを想像しながらできる方法を想像すると、
まずできる方法として、金網補修から動物の侵入防止、人の出入りには手指足の消毒と、履物を鶏舎用に限定したものだけを使い遮断するということを徹底していくことが大事になるのです。
そして農場敷地内には野鳥が徘徊しているはずですから、農場敷地の石灰散布をして強アルカリで殺菌効果を期待するのです。
いずれも直接ウイルスに効果を及ぼす方法ではありません。
先ほどの手洗い、マスク着用と同じで間接的な効果しかないでしょう。
でも、それがかなりの頻度で防ぐ方法にもなっているのです。
もしお金をかける余裕があるのなら、入気口に消毒液を流し殺菌した空気を取り入れるシステムを導入する、昨年から試験導入している農場もある鶏舎内に赤外線照射した殺菌システムを導入するという方法もあるでしょう。
でもそこまでできないのなら、換気をまめにできる方法を模索することも大事ですし安上がりです。
コロナもそうでしたが、狭い空間で換気がおろそかなら感染が広がりやすいというシーンを思い出すと、滞留させないという発想から、換気するから冷えるからしないではなく、間欠運転させて排気を操作することも防ぐ策の1つになるかもしれません。
でも換気は冷えるからできない、効果がわからないから動物侵入策は意味がない、人はそんなリスクを知っているはずだから原因にはなりえないといった、現場側の思い込みでは隙を突かれてしまいます。
今年は農場被害報道が例年より早い季節で始まりました。
鶏卵相場は今年も高い位置で推移しています。
この先年末にかけて上昇もあり得るでしょう。
であれば、お金がガッポリ入るではなく、いただいたお金を鶏達のために改善できることに少しでも投じる必要があるでしょう。
それは機材のお金もあるでしょうし、人への投資(知るための投資、気づくという成長のための投資)もあります。
知っていただきたいのは、被害を受けた農場皆さん同じことを言います。
「何が原因かわからない。できることをしっかり実行してきたのに・・」
皆さんも同じ発想で対策を講じているはずです。
同業だからわかるでしょうが、いやあの農場ではねぇということもあるでしょうが、
多くは本当に理由が分からず被害にあってしまうという現実もあります。
最近の疫学調査概要を見ても、不備を指摘する事項がないものも散見されます。
つまり、相当の管理をしっかりされていて不備を指摘するものがない事例も存在しています。
そして発生する農場が全国に存在しそれは毎年場所を変えて発生を続けているのです。
皆さんの農場は、謙虚にそしてリスクを考えてこの季節を迎えていることと思います。
この先の半年、被害なくお過ごしいただき笑顔で春を迎えていきましょう。