アマリリス (original) (raw)
昭和53年頃、大学近くのパーラー喫茶店で、刑事法専攻のしゃれ者Oと食事をしていた。
私「この店はいつ来ても、明るくってきれいだよな」
O「ああ、そうだな。このカレーなんかもちょっとしたもんだしな。いつも花がかざってあるし、おしゃれだもんなぁ」
私「そういえば、あのテーブルにかざってある花はなんだろ?」
O「うん? ♪フランスみやげ~ やさしいその音色は
たりらりらりら~ しらべはアマリリス~」
私「なんだよそれ?」
O「え、知らないのか?歌だよ」
私「もぉ・・・歌はわかってるよ」
O「はははは・・・アマリリスだよ」
私「よく知ってるなぁ」
O「ああ、おふくろが育ててるからさぁ。本来は夏に咲く花なんだけど、
球根だから室内で冬に咲かせることもできるのさ」
私「そうかぁ。ところでさ、なんで名前がアマリリスなんだろぅ?」
O「これはな。古代ギリシャの詩に出てくるんだよ。聞きたい?」
私「うん、教えてくれよ」
O「よしでは、えへん。
その少女が、おれのような美男子の羊飼いに恋をしました。
ところが、内気な少女は、告白することができず、
一本の矢をつかって自分を傷つけます。
そうすると、その傷口から血がしたたり落ちて、
そこに大きな大きな きれいな花が咲くのでした。
その花もまたアマリリスっていうのですが・・・
やがてその花のちからによって、羊飼いと少女の恋が成就するのでしたぁ・・・・」
私「おれのような美男子っていうのは、よけいだけど、
なるほどな。一種の恋物語だなぁ・・・はは・・・」
O「♪ たりらりらりら~ アマリリスは 僕のものぉ~ なんてね」
私「・・・・・・」
冬帽の真冬の難波男かな(塩津幸彦)