「継続は力なり」よりも「好きこそ物の上手なれ」|情報処理学会・学会誌「情報処理」 (original) (raw)
杜甫々 (「とほほのWWW入門」サイト管理者)
「とほほのWWW入門」というWeb関連の技術情報を掲載するサイトを運営しています.1996年9月に始めたので,もうそろそろ29年目に突入となります.HTML, CSS, JavaScriptを始め,Python, Rust, Goなどのプログラミング言語,React, Vue.js, Angularなどのフレームワーク,Docker, Kubernetes, OpenSSLなどのツール群,文字コード,正規表現,暗号化などの要素技術などなど,目につくIT関連情報を色々紹介してきました.途中サボっていた時期もありますが,ここ最近は1週間に1つはなんでもよいので記事を追加したり更新したりしています.
ある講演会で,私が初めてコンピューターに触れたころの話から,サイト作りを始め,継続してきたことについて一通り語ったあと,来場者からの質問で「続けられる秘訣は何でしょうか?」と聞かれたことがありました.これに対して「好きだから」と答えたのですが,何人かの方から「『好きだから』っていう答えがとても良かったです」とお褒めの言葉をいただきました.
考えてみると,本当にそうなんですよね.最初にコンピューターを触ったのは1981年頃.BASICのPRINT文で文字を表示するだけのプログラムですが,初めてプログラミングして,実行して,その結果が画面に表示されたのを見るのは,初めて自転車に乗れたときのようなワクワク感を感じていたと思います.それから1つ1つ,プログラミングを覚えていき,一通りのプログラムを作れるようになったときは,スキーでボーゲンしかできなかったのが,パラレルで滑れるようになったときと同じ楽しさを感じていました.色々なライブラリやツールを作り上げていくのは釣りで魚を釣り上げたときと同じ楽しさを感じていましたし,ちょっと難しいシステムにチャレンジして作り上げたときは登山で山頂に着いたときと同じ満足感を感じていました.新しい技術やフレームワークを体験していくのは,カラオケで新しい曲目を練習するときと同じ気持ちのような気がします.「どうしたら続けられるか」と言うよりも,パチンコと一緒で「どうやったらやめられるのか」の気分なのですよね.
「継続は力なり」という言葉があります.確かに継続することは大事で,継続することによってようやく成功にたどり着くものも多いと思います.でも,どうせ継続するんだったら,努力や忍耐力で継続するのではなく,楽しみながら続けた方がよいですよね.「好きこそ物の上手なれ」という言葉があるように,その方が上達も早く,どんどん新しいものを楽しめるようになります.「どうすれば好きになれるか?」と思う人は,まずは一度,自分を騙してでも一度「好き」になってみてください.きっと,「あ,ちょっと楽しい」と感じることができるようになると思います.そこからあとはもう「楽しい」の世界です.
(「情報処理」2024年9月号掲載)
■ 杜甫々
1996年から個人の趣味の活動としてWebにかかわる技術情報の発信サイト「とほほのWWW入門」を運営.HTML/JavaScript/CSSをはじめ,各種プログラミング言語,フレームワークなどの入門情報を発信.