2018年春までに感動したビジネスモデルまとめ13個|チャーリー (original) (raw)
チャーリーです。
追記:ビジネスモデルを図解できるツールキットを販売中です。この記事にあるような図解を自分でもやってみたいという方はぜひ。
もう2018年も1/4が終わったというにわかに信じがたい状況ですが、ビジネスモデルを図解し続けたものがたまってきたのでここらで13個一挙公開します。
- 目次 -
俺のフレンチ
サマリーポケット
未来食堂
Cansell
プチローソン
Unipos
SCOUTER
ポプテピピック
ZOZOSUIT
Optoro
Fundbox
PillPack
Farmers Business Network
100の事例を図解した「ビジネスモデル2.0図鑑」という本を発売しています(本記事の事例ふくむ)。予約開始と同時にnoteで全文無料公開という試みをやっています。本記事に興味を持ったらそちらもどうぞ!
俺のフレンチ
俺の株式会社は2012年創業、あのブックオフの創業者の坂本孝さんが新たに飲食はじめたことで有名(創業当時齢70超)。これ初めて見た時にめっちゃんこ感動したことをはっと思い出したので、この度満を持して図解。
フレンチなのに立ち食い!っていうスタイルが衝撃。通常フレンチはゆったり席に座って食べるスタイルだけど、それだとやっぱり高い。しかし立ち食いにすることで通常の3倍の顧客回転率にし、一人当たりの専有スペースも小さくした。それにより、何倍も安くても成り立つ料金設定にした。プライシングが天才的。
しかも、通常飲食の原価率は3〜4割程度が多いところを、俺のフレンチは6割以上の原価率をキープ。それは、一流のシェフを引き抜くために、好きな食材を好きなだけ使っていいということを謳い文句にしたからと言われている。シェフを動機づけながら、料理の品質を保ち、かつそれが立ち食いで回転率をあげる仕組みに支えられている。仕組みとしてよくできすぎてませんか。
創業時、調理学校を出た人たちが10年後も飲食業に携わっている確率は1割にも満たないということを知った坂本さんは、優秀な料理人の生きる道と、ファーストフードが増加していた現代でも本当に美味しい料理をやすく顧客に提供したいということではじめたらしい。
2018年現在は、俺の●●は様々な展開を見せ、俺のスパニッシュや俺の割烹、といった業態を数々生んでいる。フレンチほどのインパクトはないけど、国内30店舗を超え、海外展開も進めてるみたい。ただ今は立ち食いスタイルだけでなく着席もやってる模様。そのあたりのビジネスモデルの変化を追う、みたいなことも今後はやってみたい。
サマリーポケット
2017年12月に住友商事から5億の出資が発表されたばかり&稲垣吾郎さんが広告塔として起用された勢いのあるサマリーポケット、前々から思想もふくめてすごく好きなサービス。
家にある荷物は、実はその床面積分の家賃は保管コストになっている。せっかく広い家に引っ越しても、荷物が多いと狭くなり、保管コストは高くついてしまう。そもそも荷物を減らせば、と断捨離的な発想で捨てることができればいいけど、年に一度しか使わないけどどうしても必要、という荷物もあったりして、なかなかすべてを断捨離することは難しい。
そこでサマリーポケットは、月額250円から荷物を預けられて、一点ずつ写真を撮り、Web上でいつでも一覧できるようにした。まるでモノ版のクラウドストレージ。しかも、寺田倉庫と提携して預けたものが安全かつ温度・湿度管理された環境で保管されている。そこも安心材料。
東京は特に地価が高いので、地方から越してきて荷物の多かった人なんかにはうってつけ。実際、首都圏在住のユーザーが全体の7割を占めているみたい。サマリーポケットの存在を機に、3LDKに住んでたのを1LDKにしてその分荷物を預けて生活の固定費を減らした、みたいな利用事例もあったりするらしい。
何より感動したのは、途中で追加されたオプションの、おまかせヤフオク出品サービス。預けた荷物で、これはもういらないと思うものは、選択するだけで簡単に出品できる。とりあえず預けておいて、使わないってことがわかれば、出品しちゃえば結果的に断捨離までできちゃう。
所有から利用へ、なんて昨今のシェアリングエコノミーの盛り上がりをみてるともはや当たり前のようになってきたけど、ここまでまっすぐにその思想をサービスで解決しようとする事例はなかなか見当たらない。出資を受けてどうなっていくのか今後の展開が楽しみ。
未来食堂
自分の気分や体調にあわせたおかずを注文できるという一風変わった「あつらえ」という仕組みがある定食屋。お客さんの要望を聞いておかずを提供するというオーダーメイドに近いもの。そうなると要望を聞いたり調理に時間がかかって非効率なのでは、と思いきや、それを仕組みで解決しようとしている。
具体的には、食材の数の多さにはこだわらず、要望を聞いて調味料やちょっとした工夫で色々なバリエーションを出すということになっている。もちろん基本的な下準備は済ませておき、時間を短縮。あつらえをつくる時間を稼ぐために、日替わり定食は予定立てて決めておき(日替わりの予定はHP上で公開されている)、夜もメニューを固定するなどして、効率的に調理できるようにしている。
また、あつらえという一見わかりにくいメニュー自体を頼みやすくするために、価格を400円と固定にして、おかず2品まで、と制約をつけたり、そもそもメニューに選べる食材を一覧化したりするなどして、できるだけ頼む際のストレスを軽減している。
通常、定食屋のような低価格な飲食業態では、誰がいつ頼んでも同じものが提供されるように、メニューは決まっている。お客さん一人ひとりの要望に合わせて、みたいなことは非効率で敬遠されがち。しかし未来食堂は「あなたの”ふつう”をあつらえる」という事業コンセプトの元、一見非効率なところに仕組みをつくることで、飲食業界の常識に一石を投じている。
他にも、50分手伝うとただめし券がもらえる「まかない」という仕組みや、そのただめし券を自分が食べる代わりに置いていき誰かが使えるようにする恩送りのような仕組みなど、ユニークな取り組みに挑戦してる。これら様々な取り組みによって、25%前後の売上原価におさえながら、昼のピーク時に最大7回転するなどの高回転率を実現。すごい。
極めつけは、事業計画書や月次決算などの経営情報をすべてオープンにし、情報公開を徹底しているところ。これによってメディアにも取り上げられやすくなり、そこから認知が増え、仕組みを知った上でくるお客さんによってまたお店が活性化するというサイクルができている。知識を隠すのではなく、オープンにすることで回り回って益がある、という構造が現代的。さらに毎月最終火曜の売上の2割を寄付するといったプロセスも公開している。
2017年には日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー食ビジネス革新賞を受賞。本もすでに何冊か出ているので、興味がある人はぜひ読んでみてください。
Cansell
ホテル予約してたけど急にどうしても行けなくなった..みたいなことない?
そんなとき、ふつうはキャンセル料金がまるごとかかっちゃうけど、Cansellを使うと自分の宿泊予約を売ることができるのでお得。逆に、安く泊まりたい人にとっては、ここから買うことで安く買える。70%オフのもあったりする。安い。
こうすると営利目的の高額転売が起きそうだったりするが、それを防ぐために、必ず予約価格以下で成約するような仕組みが設けられている。
つい先日、3月26日には、法人向けのプログラムとして、無断で利用者がキャンセルしたときなどのキャンセル料を保証するサービスをはじめた(最近すぎて図解には未反映)。これまではホテルとの直接のつながりがなくて成り立つサービスだったけど、このプログラムがあることでホテル側へのメリットが増えて、よりホテルとのつながりが強まる方向になる。
そうなってくるとますますCansellはただの宿泊権利のマーケットプレイスにとどまらずに、ホテルの課題解決をしていくビジネスとして進化していくことになる。今後も楽しみ。
あともう一点、Cansellというネーミングがわかりやすくてよい。これを思いついた瞬間に担当者は小躍りしたのではなかろうか。わからないけど。
プチローソン
2017年7月に始まったローソンの置き菓子サービス、プチローソン。
オフィス内のよくある置き菓子サービスはこれまで現金を直接払うような形が一般的で、回収する際の利便性なども踏まえて100円など固定の金額になることが多かった。そうなると、100円から大きく外れる商品構成にはしづらいがゆえに、置かれる商品の幅はどうしても制限されがちだった。しかも、善意によって成り立つ現金回収は、場所によっては回収率がわるくなることなどもあったみたい。
プチローソンでは、支払いは業界初の電子決済を導入した。そうしたことで、金額を固定化する必要がなくなり、結果商品の価格帯に制限がなくなったため商品陳列が多様化したのが、強い。オプションだけど、お菓子だけではなく、飲み物を入れる冷蔵庫やアイスなどを入れる冷凍庫、コーヒーマシンなどの設置もできる。それらは全て電子決済。
しかも、コンビニの販売データを活用して、トレンドを分析して陳列したり、売れ行きが即時データ化されていくので、欠品の対応やいまの売れ筋商品を拡充するみたいなことがやりやすい。また、事前に分析した上で在庫を選定して配送できるため業者の回収効率もアップする。
競合であるファミマでも、オフィスファミマというサービスが始まったが、こちらはまだ電子決済じゃない模様。これもゆくゆく対応するのかもしれない。
オフィスグリコが先駆者だったが、この流れが加速すると、お菓子以外の販売データを大量に持ってるコンビニは後参入でも強いのかもしれない。置き型サービスでさえもキャッシュレス社会になっていく、時代の流れとしても面白い。
Unipos
メルカリにも導入されてるUnipos。社員同士の小さなボーナス給の仕組み。社員の日々の目に見えづらい成果をどう評価するかはこれまでも課題だった。それをうまく仕組みで乗り越えている。
金銭的なインセンティブをそこまで高く換算しないところが重要。金銭的なインセンティブを強めすぎてしまうと、人が善意でやることに金銭の見返りを求めるようなスタンスが定着してしまう。要は褒められないとやらない、という状態になってしまう。ただUniposはそこが絶妙で、1ポイントの換算は1〜5円程度にすることをおすすめしている(但し金額は自由に設定できる)。1回につき付与できるポイントは最大120なので、せいぜい600円。缶ジュース一本分からランチ代になるかならないかというところまで。うまい価格設定。
ポイントが余っても翌週に繰り越せないという仕組みも秀逸。これによってどうせだったら使おうとなるし、ポイントが無限に貯まると動機が停滞する恐れもある。前にツイートしたけどこんな話もあるとかないとか。
例えばオフィスのゴミをまとめて片付けるみたいなことはついつい放置されがち。もちろんゴミのたまったゴミ箱を放置するのはオフィス内の環境としては良くない。ふだんだったらこういうことは中々評価されづらい。そうなると役割決めを強制してしまうか、誰かの善意に頼らざるをいけなくなる。こういった目に見えない会社への貢献が、自分が言わずとも誰かの目に止まればUniposでそれが可視化されていく。
Uniposみたいなピアボーナスの仕組みは今後ますます広がりそう。売上や利益といった定量指標への成果がどうしても優先されがちな従来の給与形態の中で、気遣いができるとか実は目に見えづらい縁の下の力持ち的なことを社員同士で評価できると定性的な指標として機能する。
同じく定性的なところまで含めて社員同士で評価し合う360度評価とかは、半期に一回とかだし、リアルタイムに評価してフィードバックできる方が日々の活動の動機付けにもなる。このあたりは企業の無形資産が重要視されてる中で今後ますます大事になってきそうなところ。
SCOUTER
SCOUTERは、個人のネットワークを活かした副業を中心とした転職エージェントのサービス。これまでの転職エージェントはプロが専業でやるものだという定説に対して、個人が副業のような形でやるというところに逆説がある(但し副業でなくとも登録はできる)。
本来、就職(転職)希望者と求人募集企業とを結ぶことで手数料をもらうには免許が必要。なので通常は、登録する転職エージェント1人1人に免許をもたせなければならない。ただそれを彼らSCOUTER社(有料職業紹介免許あり)は、スカウターと呼ばれる登録する転職エージェントと雇用契約を結び、同社の活動として行うことで、個人の免許は不要という枠組みにしている(なので転職が成功したかどうかに関わらずスカウターには活動に応じた時給が支払われる)。
ソーシャルヘッドハンティングと銘打ち、これだけの人材難の市場の中で、友人を紹介するための転職エージェントを仕組みとしてつくることで、これまで中々市場に表れなかった転職潜在層にリーチできるところがユニーク。
リファラル採用として社員が知り合いを紹介するサービスは今までもあったけどそれは内部にいる社員が外にいる知り合いを紹介するもの。SCOUTERはその友人紹介を拡張して人材獲得の枠組みをつくってるのが挑戦的でおもしろい。
ポプテピピック
言わずと知れたクソアニメ「ポプテピピック」。
ニコニコ動画で12話全て再生100万回を超え、1話は史上最速で100万再生を突破し現在は300万再生を超えているという熱狂的な人気を誇るコンテンツ。多数のパロディがある上に、30分のアニメ枠なのにも関わらず最初の15分が終わったらエンディングが流れ始め次の15分ではほぼ同じ内容が再放送される(但し起用される声優が異なる)という前代未聞の作品。
なぜこれだけ熱狂的な人気があるかを不思議に思った方もいるかもしれない。もちろん複合的な理由だと思うけども、特にビジネス上重要だったのは製作委員会方式にせず単独出資にしていること。製作委員会方式は、複数の会社が出資しあい、その出資されたお金でアニメを制作するというもので、これにより事業のリスクを分散できるためにこれまで多くのアニメ制作で用いられてきた。なぜアニメ制作元ではない複数の会社がわざわざ出資するのか、というと、アニメに関わる権利をもとに様々なビジネスを展開するところに旨味があるから(ゲームとか関連書籍とか諸々)。ただ、この方式のデメリットは、もちろん出資比率に応じて利益が分配されるため成功しても実入りは少ないことと、多くの関係者が関わるためにリスクをとったコンテンツをつくるための調整がしづらいということ。
ポプテピピックはキングレコード単独製作にすることで多数のパロディをやるなどコンテンツとしてのリスクをとりやすくなった。ただそうなってくると、成功するかわからないのに高いリスクをあえて単独でとれた理由が何なのか気になってしまう。詳細なエピソードは本作の企画プロデュースをした須藤孝太郎氏のインタビューなどでも語られてるのでそちらを見てもらうとして(社内で企画通すの大変だったみたいですね...)、一つの背景として、マネタイズの手段が多様化したこともあると思う。放映と同時期に様々な動画配信サイトなどで配信し、それによりまた話題が生まれる循環ができている。実際、ポプテピピックはニコニコ動画やAmazon Prime Video、huluなど様々な配信サイトで閲覧できる。こうしたインターネットを駆使したコンテンツのマネタイズの循環をうまく生み出したことも成功の要因だと考えられる。
尚、原作は大川ぶくぶ氏で元々は竹書房が出版元の4コマ漫画だった。竹書房は今回のアニメについて一銭も出資していないと最終話で述べており、敬意を払い図にも一切入れていない。
※ ちなみに上記のポプテピピックの図解ツイートがこれまでで一番リアクションが多かった
※ ちょうど最終回終わった直後だったからかもしれない
ZOZOSUIT
採寸できるボディスーツ、ZOZOSUIT。2017年11月に予約受付開始をして話題になった。
これまで服をインターネット上で買うときの最大の欠点は、試着ができないこと、つまりサイズ感が合うかどうかがわかりづらかったことだ。そんな中ZOZOSUITは、着るだけで自分の体のサイズが自動で計測されるというシンプル極まりないソリューションで世間を驚かせた。しかも、無料で配布するという(実際は送料200円だけかかる)。
さらに同時期に発表したプライベートブランドのZOZOは、このZOZOSUITで採寸することを前提にしてつくられたオーダーメイドのブランド。これまでプラットフォームに徹してきたスタートトゥデイがこのタイミングで満を持してプライベートブランドを公表するあたりもよくできすぎている。
ZOZOSUITは世界160カ国から注文でき、日本だけでなく世界中の採寸データが集まることになれば、これはスタートトゥデイにとってめちゃくちゃ有用な資産になる。ECサイトにとって、顧客のサイズがわかっている、ということは大きな強みになる。
構想自体はもっと前からかもしれないが、実は2016年時点でニュージーランドのソフトセンサー開発企業のStretchSense Limited.に出資をしている。ここがZOZOSUITに使われているIoTセンサーを開発する企業。2017年11月には更に、将来的に100%子会社化することもできるコールオプション契約なるものを締結。これは、ZOZOSUITにおいて大事な技術を持ってるこの企業を、ZOZOがもしうまくいったときに残りの株を買って子会社にできるよというもの。反対にうまくいかなかったら株を買わないという選択もできる。
一つの懸念は、おそらく大量の需要に追いつけていないためかZOZOSUITの発送が遅れていること。まだ届いてない人も多いと思うけど、まあ気長に待ちましょう(僕も届いていない)
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以降の4つの図解は、Forbes JAPAN でも掲載した図解なので、文章は基本引用(自分で自分の文章を引用)、引用元も貼りましたのでご了承を。
Optoro
ECサイトの返品・売れ残り商品を扱うリバース物流サービス「Optoro」。
これだけオンラインショッピングの市場が拡大した現代だからこそ、返品や売れ残りは小売事業者にとって、かなりの損失。さらに、それらが廃棄されてしまっては環境にもよくない。そこでOptoroはより持続的な消費を促すために、ECで返品された商品を扱う物流サービスをはじめた。サステナブルを標榜するところも、時代のトレンドにぴったり。
同サービスのすごさは、送られてきた商品を自動的に選り分けて最もベストな再販先をきめるところにある。ここに彼らの技術が詰まってるといっても過言ではない。
再販するだけでなく、必要に応じて修理したり(修理業者のネットワークも抱えている)、リサイクルや寄付にまで回したりもする。彼らが作成したサービス紹介のビデオでは"ネクストベストホームにデリバリーする"と言っている。その表現もわかりやすくていい。自分たちでBtoC向けにはBlinq、BtoB向けにはBULQという再販先のサービスもつくり、きちんと出口も用意してる。一見すると廃品回収業者に近いけれども、それをすごく現代的な方法でやっていて、社員は500人以上。なおかつ1億ドル以上をすでに調達していて次のユニコーンと評されるほどに成長している。
Fundbox
書類なしで請求分をすぐに現金化できるサービス「Fundbox」。
いわゆる、「ファクタリング」と呼ばれる、他社の売掛金を買い取ってそれを回収していく金融サービス。この Fundbox がいま、すごくアメリカで伸びている。すでに1億ドル以上調達し、2017年の売上予想は5500万ドル。運転資金の調達なんて、もともと需要がある領域で、特別新しいわけでもない。それにもかかわらず、なぜこれだけ成長しているんだろう、と思ったのが興味を持ったきっかけ。
一般的に、ファクタリングには書類の審査がある。これは、売掛金を買い取る際のリスクをなるべく正確に判断したいからだ。実はこれがすごく面倒。
でも、Fundboxには書類審査が一切ない。オンライン会計ソフトウェアを連携させることを必須にしているため、審査レスを可能にしている。。ここから企業の会計データを読み込み、そこから自動的にリスクを算出し、リスクフィーとして手数料を上乗せしてる。この技術がすごい。中小企業、スモールビジネスの場合、銀行から融資を受けることが自体がそもそも難しく、資金繰りに困ったときに打てる手が少なかったりする。そんなとき、請求書をもとにその売掛金をすぐに現金化できる、しかも面倒な書類提出などがなく、手持ちの会計データを同期させればすぐに現金が引き出せる、ということで、これまで困っていてもなかなかファクタリングしなかったスタートアップなどが続々と申込み、かなりのペースで顧客が増えているそう。
既存の市場ではなく、そういう新たな市場を切り開いたとして、評価されてるみたいだ。「フィンテック」と呼ぶと、ちょっとだけ思考停止感もあるけど、技術力と市場の目のつけどころがうまい。現在はさまざまな類似サービスも出てきてるみたいだけど、資金繰りにこまったときの助け舟は選択肢が多いほどいいので、がんばってほしいし、日本にも便利なサービスどんどん出てきてほしい。
PillPack
個包装で飲み間違いをなくす次世代のオンライン薬局 「PillPack」。
まずインパクトあるのは1回ずつ飲む分を取り出せるディスペンサー。1つずつ包装されたものが出てくるので、飲み間違えることがない。IDEOのインキュベーション施設で創業した会社だけある。アメリカでは、服用ミスで亡くなる方が年間相当数いるようなので、飲み間違えない、という体験にはすごく価値がある。
またオンラインで薬の注文が完了できるほか、薬の追加、保険情報の更新もできる。登録時にはいわゆる処方箋情報が必要だが、それを入力するか、電話して話すと、PillPackはかかりつけの薬局に連絡して情報を確認してくれる。
自社で分配包装ロボットを開発して、大量にくるオンライン注文を捌くために薬のパックを自動化。薬剤師の手間を減らしているところもお金の使い所がうまい。結果、2013年創業で2017年現在で1億ドル調達してすごい成長を見せている。
毎月薬が送られてくる仕様なので、日常的に薬を飲まない人にとっては縁遠いサービスかもしれない。これはアメリカのサービスだけど、アメリカでは5人に1人は1日3種類以上の薬を飲んでるというデータもあるくらい、市場規模は大きい。日本もこれから超高齢化社会まっしぐらな中で当然、市場は大きくなる。
最初、既存の薬局にとっては敵になりそうなPillPackがユーザーのオンラインへの移行を半ば助けてることが疑問だったのだけど、どうやら、アメリカの医療業界には、PBM(薬局給付管理)という組織がいて、そこがいろいろな利害関係者の間を取り持つ中間組織になり、支払・請求の代行などをしているという。
それで彼らの薬局のネットワークを得る代わりに、PBMがPillPackの利益の一部を持っていってるという仕組みらしい。それなら納得できる。このあたりは製薬業界に詳しい方がいたら補足をお願いしたい。
「いますぐ日本に欲しい!」と思ったら、日本ではどうやら薬事法で、薬局で薬を直接渡さないといけないというような状態のようで、オンライン薬局をやるにはまだ法律的なハードルがありそうだ。
Farmers Business Network
より効率的で透明性のある農家経営のための農業データベース「Farmers Business Network」(以下FBN)
FBNは、アメリカ国内の農家が年間500ドル〜払うと、農業に関するデータが閲覧できて、自分の農地をより効率的に経営できちゃうというサービス。例えば、いつ収穫したらいいかとか、自分の土地に合う農作物は何かとか、天候がどうだとか、マーケティングがどうだとか、もう色々な情報にアクセスできる。
そんな大量の農業データどこから収集しているのかと思ったら、どうやら他の農家から収集しているらしいと。FBNはダッシュボード機能がよくつくられており、自分の農地のデータをアップロードしたら収益予測とかしてくれる。
そうして農家がアップしたデータは、匿名で集約され、プライバシーを侵害しない範囲で他の農家もデータが閲覧できるようになる。
大量のデータが集まってくると、他の農家はこの肥料をこのくらいの値段で買ってるらしいという情報がわかるようになる。そこでFBNはオンライン上で原材料も購入できるようにし、市場に出回る価格と他の農家が実際に買った価格などを比較できるようにした。さらには、中間業者を通さずに直接安く購入できるようにした。価格の透明性を重視しているところが、すばらしい。
つまり、農家は年間500ドル支払うことで、大量のデータにアクセスしてより収益性の高い意思決定ができ、しかも低価格で仕入れのできるチャネルにアクセスできるということで、続々と加入者が増えているらしい。
農業のような1次産業にテクノロジーを入れていく、というのは前々からあったテーマだけれど、FBNはそこに真正面から挑戦しているように見える。ビッグデータの使い方が優等生。独立農家がFBNでナレッジを共有することで、きっと救われる人がたくさんいる。そしてそれは農業生産性を高めることになり、食糧危機の課題にもつながってくる。ということで今後にも期待。
・・・
図解は以上になります。全13個。おつかれさまでした。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
最近は、自分で図解をせずとも他人の図解をレビューするだけでもハイになれる、図解レビューハイという能力を獲得しました。図解するのが楽しすぎて眠れない通称"図解ハイ"という症状からさらに禁断の領域に踏み込んできている感じもしますが、日々楽しく図解にのめりこんでいます。
ビジネスモデル図解制作委員会を立ち上げ、現在総勢40人ほどの体制で日々図解をしています。それもこれもひとまずは出版のためなのですが、今後もビジネスを図解することを通して様々な方向で展開できればと思っています。まだ何も成してないですが、ここまで来れたのも、一重に記事を読んでいただいた方々の応援のおかげです。本当にありがとうございます。
前回noteで公開したまとめから、ちょっとだけフォーマットが変わっていることに気づいたマニアックな方もいるかもしれません。もともと横型だったのですが、スマホだと見づらいことと、書籍にするときにはどのみち縦に配置するということもあり、縦型に統一しました。また、どこから見ていいかわかりづらいという意見をいただいたりして、一部矢印に順番を入れるなど実験的な試みもしています。よりわかりやすい図解になるようにしていきたいと思うので、ご意見などあればください。
書籍は(いちおう)8月頃に出る予定です。出版元は、(株)KADOKAWAになります。ビジネスモデルを100個書く、ということはもう決まっているので、書き上げたビジネスモデルからどんどん公開していきたいと思います。どうぞお付き合いください。
また、書籍に掲載できるかはわかりませんが、面白いビジネスの事例を募集しています。自薦他薦問わず、こんな事例あるよ、というものがあれば、コメントやメッセージなどで教えていただけると有難いです。
ここでいつもの通り本記事の画像をまとめたPDFファイルを貼っておきます。
PDFファイルをダウンロード
最後に、なぜビジネスモデルを図解するのか?をまとめた記事のリンクと前回のまとめ記事をどうぞ。特に上の記事は、どんな背景でビジネスの図解をするのか、どうしたら図解できるのか、というところまで全て図解したので、興味のある方はぜひ見ていただきたいです。図解のツールキット(ダウンロード可)もあるので、自社でも図解してみたいという方にもおすすめです。
(最後の最後に、いつも夜遅くまで図解をしている委員会のメンバー、本当にありがとう。みんなで一緒に制作ができて、自分ひとりで図解するよりも格段に視野が広くなりました。これからさらに佳境ですが、一緒にがんばろう〜!!!)
長くなってしまいましたが、以上です!