札幌交響楽団 第661回定期演奏会(土曜夕および日曜昼公演)(2024/05) レポート (original) (raw)

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↑札響公式サイトにて、指揮者の井上道義さんからのメッセージが公開されています。

2024年末にて引退を表明している指揮者の井上道義さん。おそらく今回が札響での最後の公演となります。井上ミッキー指揮で、円形配置のクセナキス「ノモス・ガンマ」(私は昨年、名フィルによる演奏を聴いています)を、なんとホームの札響@kitaraで聴けるなんて!と、私は企画発表当初からとても楽しみにしていました。また前半には札響と縁ある武満徹の作品を2つ。なお私は土曜夕と日曜昼の2回とも聴きました。両日ともに当日券の列にはずらりと人が並び、会場はほぼ満席!またこの公演は、「2024日本・ギリシャ文化観光年」記念事業(クセナキスの両親はギリシャ人)の一環としての開催で、ギリシャ大使によるビデオメッセージがロビーに設置されたスクリーンに映されていました。

札響公式youtubeの企画「**札響プレイヤーズトーク**」。今回(2024年5月)の出演メンバーは、打楽器奏者の3名(入川奨さん・大家和樹さん・大垣内英伸さん)です。打楽器の音を発するタイミングやタケミツとティンパニについて等、「へえ!」となった話題が盛りだくさん♪なんと続編もあり!?続きもお待ちしています!

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札幌交響楽団 第661回定期演奏会(土曜夕および日曜昼公演)

2024年05月25日(土)17:00~/5月26日(日)13:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
井上 道義

【ピアノ】
北村 朋幹

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島 高宏)

【曲目】
(ロビーコンサート)ミヨー:弦楽四重奏曲第1番より、第1、第3楽章
(出演:ヴァイオリン/飯村真理、赤間さゆら、ヴィオラ/原香奈恵、チェロ/武田芽衣

武満 徹:地平線のドーリア-17の弦楽器奏者のための
武満 徹:アステリズム-ピアノとオーケストラのための

ソリストアンコール)
25日 松村禎三ギリシャによせる二つの子守唄より Ⅰ. Lento
26日 武満徹:「遮られない休息」より第3曲「愛の歌」

クセナキス:ノモス・ガンマ
ラヴェルボレロ

ああ生きているとこんな出会いがあるんですね……。今回の定期演奏会は、間違いなく生涯忘れることはない特別な体験。私、生きててよかった!めずらしい演目だから?めずらしい配置だから?いえそれらはおそらくきっかけに過ぎなくて、やはり演奏そのものが素晴らしかったからこそ、聴き手は心揺さぶられたのだと思います。まず、個人的に苦手意識があった武満徹の作品2つを、今回積極的に楽しめたのがうれしかったです。本質的な理解には遠く及ばないにしても、弦の研ぎ澄まされた音に、異空間を演出したピアノに、天井知らずな盛り上がりを作ったオケ全体の底なしの力に、私はものすごく引き込まれゾクゾクしました!武満徹「乱」組曲が怖くて逃げたくて震えていた、数年前の私はもういません。私がここまで来られたのは、ひとえに長年にわたりタケミツ作品に真摯に取り組み私達に聴かせてくださっている札響のおかげです。ありがとうございます!また今回の目玉とも言える、円形配置のクセナキス「ノモス・ガンマ」が面白いのなんのって!札響、なまらすごいっしょ!もちろん昨年聴いた名フィルの演奏も大変素晴らしかったですが、初体験だったその時はどうしても「びっくり」が勝ってしまって、未知な響きに翻弄されきちんと受け止められないまま演奏が終わってしまったのを私は悔やんでいました。今回こそは真正面から受け止めるぞ!と覚悟を決めて臨んだわけですが……やっぱり凄まじくて翻弄されはしました(!)。それでも今の自分なりの受け止め方ができたことと、もっと言えば「翻弄されたこと」自体がすごくうれしかったんです!普段あんなに美しい音色で私達を癒やしてくださるメンバーが、「心地よさ」とは程遠い音を発し、ガンガン攻めた演奏で迫り来る。慣れ親しんできた札響が、ここまでやってくれるんだという感激!いいぞもっとやって!思いっきり私達を震え上がらせて!それにkitaraだとキレッキレの大音量もあえて発する個性的な音も、めっちゃ気持ちよく響くんですよね。もちろん奏者お一人お一人のお力があってのことですが、最高峰の音響を誇るkitaraにて札響によるすごい演奏でノモス・ガンマを聴けたのは超ラッキーでした!また2日連続で聴いてみて思ったのは、ノモス・ガンマの作りは一見カオスのように感じるけど、その実きっちり計算された響きなのでは?ということ。具体的な説明は私にはできないのですが、もしもただの無秩序な騒音であるなら、引き込まれるどころか耳を塞いで退場したくなってしまう気がするのです。そうではなくむしろどんどん惹きつけられる魅力がある。面白すぎます!そして同じ円形配置での「ボレロ」が素敵すぎて!ずっと一定のリズムを刻むスネアドラムも、その時その時の主役となるメロディを担当した奏者の皆様も、ひたすらピッチカートで支え続けた弦の皆様も。もちろん会場設営したステージスタッフの皆様と、素晴らしい照明で演出くださった担当のかたも。無数の星たちが互いに高め合う、お一人お一人が輝ける星!こんなにきっちり作り込まれた作品が、なんて温かで愛に満ちあふれているんだろう!と、泣きたくなるほど感激した演奏でした。オーケストラって、札響って、本当に良いものですね!

なにより札響をここまで引き上げ最高の演奏を私達に聴かせてくださった、指揮の井上道義さんに最大級のお礼を申し上げたいです。本当に本当にありがとうございます!こんなにも攻めたプログラム、やれるのは井上さんしかいないのでは?円形配置の指揮台は円の中心にあり、そこに立つ井上さんはくるくる回りながら360度全方向に向かって指揮(!)。背中にも目があるんじゃないかと思うほど、全方向に神経を張り巡らせていらっしゃったようでした。バレエダンサーを志していた時期もあるという井上さんは身のこなしもエレガントで、指揮の時はもちろんのこと、カーテンコールで行き来する時にくるくる回りながら退場してみたり、花束の扱い方だったりも、とても御年77歳とは思えないほど。トークもキレッキレで、聴き手の想像をはるかに超えるすごい音楽を目の前で生み出してくださる井上ミッキー。引退なんてまだ早い、まだまだイケルのでは?と、お気楽な聴き手はついそう思ってしまいます。しかし、ご本人にしかわからないことは色々とあるのでしょうし、きっと惜しまれつつ引退するのも井上さんの美学なのでしょう。札響とは60回を超える共演があった井上さん。ラスト定期を未来永劫語り継がれる伝説となる会にしてくださり、ありがとうございます!超かっちょええ!

開演前のロビーコンサートは、ミヨー「弦楽四重奏曲第1番」より、第1、第3楽章。第1楽章 はじめの素朴で美しいメロディに早速心掴まれました。ヴィオラや2ndヴァイオリンやチェロがソロで演奏するシーンはもの悲しく、しかし美しい響きに、私は思わず涙。滑らかな音楽が、ダッダッダッ♪と力強く歩みを進めるように変化したのが印象深かったです。第3楽章 舞曲のリズムが素敵!軽やかにメロディを歌う1stヴァイオリンに、私はフィドル(詳しくはないのですが)をイメージ。メロディを他の楽器でリレーした後に、1stヴァイオリンが少し低めの音で歌ったところにぐっと来ました。中盤にはヴィオラのソロが登場し、民謡のようなメロディを軽やかに歌うヴィオラが素敵でした。ゆったりしたところを経て、終盤は再び速いテンポに。明るいメロディに華やかなトリル。タンタンタン♪のリズムは胸の高まりのよう!思いっきり明るく自信に満ちた締めくくりは気分爽快!美メロと美しい弦の音色に癒やされた私は、この後の尖った現代音楽たちへ挑む覚悟が決まりました。

指揮の井上さんの装いは、ベースが黒で、グレーのポンチョのような上着。オケ団員さん達はいつものように男性は燕尾服、女性は黒い服でした。前半1曲目は、武満 徹「地平線のドーリア-17の弦楽器奏者のための」。札響では過去に1回だけ演奏しているようです(1969年4月25日、指揮:山岡重信)。しかし随分前なので、今回のメンバー(首席と副首席を中心とした17名)はいずれもおそらく初めて取り組む演目だったのでは?配置がユニークで、第1群(手前からヴァイオリン2、ヴィオラ2、チェロ2、コントラバス2)は指揮者の前に左右対称のハの字型に。第2群(前列にヴァイオリン6、後列にコントラバス3)は舞台後方(高くせり上がっていました)に並びました。全体の照明が暗くなり、1群と2群をスポットライトで照らす(シーンに応じて1群のみを照らす事も)演出。なおプログラムノートにはキーワード「砂丘雅楽」を意識して、と書かれていました。はじめ1群のみで演奏開始。各奏者が発する曲線的な伸ばす音が笙のようで、独特なピッチカートの響きは和琴のようにも太鼓のようにも感じました。重なった2群のヴァイオリンが舞台向かって左から順にリレーしながら音を発するのには、砂丘に吹く風をイメージ。嵐のようなところが去った後、沈黙から2群のコントラバスの重低音が浮かび上がり、その上を2群のヴァイオリンが順にトレモロを繰り出して波を作っていき、今までそれぞれ別の旋律を演奏していた1群の8名が一斉に同じ旋律でグワっと来たのにはゾクっとしました。ラストへの流れでは、2群の演奏がフェードアウトしていくに従ってスポットライトが暗くなり、やがて真っ暗に。1群にのみスポットライトが当たった状態で、張り詰めた空気の中、曲線的な音色を各奏者で順に奏でながら、のばす音の端々までコントロールして消えゆく締めくくりには息を飲みました。札響の「17の弦楽器奏者」、すごすぎます……。この作品の本質を私が理解できたかどうかはわかりません。しかし、メロディや感情に流されず、奏者お一人お一人の研ぎ澄まされた音に全集中して浸ることができたのは、とてもうれしかったです。

ソリストの北村朋幹さんをお迎えして、前半2曲目は、武満 徹「アステリズム-ピアノとオーケストラのための」。今回が札響初演。この演目の配置も個性的でした。舞台最前列に蓋を完全に取り外したピアノ、その奥に指揮台、指揮台の前にチェレスタチェレスタを挟む形でハープ2台。弦の並びは時計回りに1stヴァイオリン→2ndヴァイオリン→ヴィオラ→チェロ、チェロの後方にコントラバス。2ndヴァイオリンの後方に多彩な打楽器が並んだため、ホルンはヴィオラの後方に。低音や高音の管楽器も追加された大所帯でした。はじめはピアノ&ハープ&チェレスタから。個人的には澄んだ響き&冷たい響きと感じました。この響きに続いて、多彩な打楽器が鳴ったり、次のターンではミュート付き金管がパパパ♪と鳴ったり、またその次はオケ全体が大合奏したりと、ピアノを起点に様々な音の断片が登場する波が次々と来る形式だったと思います。これは夜空に輝く星とどこまでも広がる宇宙空間のイメージなのでしょうか?オケが沈黙してのピアノに、私は空間認知がゆがむような不思議な感覚を覚えました。また、波の起点がフルート3つだったところの異質さも印象深かったです。神秘的な弦楽合奏にぞわっとし、次どんな音が来るかわからない打楽器に翻弄され、私はまるで自分も無重力空間にいるような感覚に。後半は、ヴァイオリンのキュインキュインと鳴る超高音から少しずつ他のパートも参戦して、オケ全体でだんだんと音量が大きくなっていきました。来た来たキター!フォルテッシモの巨大な波が襲いかかってくると、事前情報で知ってはいたものの、いざ実演に触れるとその大音量・大迫力は桁違い!とんでもない爆音の洪水にのまれて、私はウワー!となりました。なんてスリリング!ラストはピアノのみで静寂に向かう流れに。このコントラスト、そしてピアノの存在感、すごい!おそらくこの作品についても私は本質を理解したとは言い難いです。しかし、今まで聴いたことがない音楽に突き抜けた演奏で出会え、自分なりにその世界に没頭し楽しむことができました。すごく面白かったです!

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ソリストアンコール。土曜と日曜では異なる曲が演奏されました。土曜は、**松村禎三ギリシャによせる二つの子守唄」より Ⅰ. Lento** 。はじめの高音でのささやくようなメロディは、神秘的でゾクッとする響き。続いた素朴で温かなメロディは、まるでゆりかごに揺られているかのような時の流れが心地よかったです。しかし全体的に寂しげで、脳天気なハッピーさには程遠い、不思議な「子守唄」でした。日曜は、**武満徹「遮られない休息」より 第3曲「愛の歌」**。ポツリとつぶやいたような少ない音は、余韻にまで気持ちを持って行かれてしまう引力。これが「愛」なの?と、正直戸惑ってしまうほど、冷たく厳しい音の存在感。先ほど聴いたばかりのアステリズムの続きとも思える、すごい空気!なお、ソリストアンコールの曲目紹介は指揮の井上さんからでした。土曜は、後半直前トークのはじめの方に、当日会場にいらしていたギリシャ大使のかたを紹介する流れで。日曜はソリストアンコールの演奏が終わった直後のタイミングに。日曜の方では井上さんが曲目を告げた後、「今から『遮って』休憩です」と曲目にかけたシャレを仰って、会場に笑いが起きました。

今回の途中休憩は30分。円形配置へと大がかりな舞台変換が行われました。すごい!そしてワクワク!私は両日とも休憩中は席を立たずに舞台転換を見学していました。それにしてもなんて鮮やかな転換!スタッフの皆様がテキパキとイスや譜面台を並べて、あっという間にバウムクーヘンのような同心円が何層も重なる配置のできあがり。正味15分くらいで作業完了したため、その後は舞台で自主練をしていた奏者のかたもいらしたほどです。また後半の開始5分前から**指揮の井上さんによるトーク**がありました。両日聴くお客さん達への配慮でしょうか?土曜と日曜でトーク内容を変えていました。またガチガチに内容や進行を決めない、とても自由なお話しぶり。会場には時折笑いが起きる、和やかな時間となりました。話題は多岐にわたりましたが、大体以下のような内容(抜粋です。また日にちと話した順番は前後しています)。
「今日で本当に最後ですよ。遮られない休息は、死かもしれない」
「でも音楽界は外界から遮断された別世界だから」
「武満は札響がとても好き」
「武満は戦争も少し体験していて、若い頃は反発されていたが、世界的に有名に」
「(現代音楽を切り拓いて行った)若い頃の武満さんが好き。あとは、娘が生まれて、裕福にもなって、なんかぬるま湯(!)」
「いま発売中の『音楽の友』を買ってみて!僕は40ページくらい出ているから」
クセナキスとのつながりでアステリズム。北斗七星や南十字星、電気がない頃の星だから」
「この公園(中島公園)にも天文台があるけど、星空を見上げた事ある?キレイだから、見てみて!」
クセナキスと武満は知り合いで、一緒に蕎麦食べている写真がネットに転がっているから」
「本当はこの並び(円形配置)は間違っている。(本来ノモス・ガンマは)お客さんが中心になる配置」
「今回の座席はサイド(LブロックとRブロック)が極上よ!この辺(とSS席を示して)の切符が高い席は損している」(ちなみに私はこの配置を楽しめるベストな座席をと考えて、先行発売初日にLブロックとRブロックそれぞれ1席ずつを確保しました。井上ミッキーのお墨付きを頂けてうれしいです)。
「(札響の舞台は)60回ほどやって、毎回何をしようかと考えている。昔は踊ってた。今は『井上さんお元気そうですね』と言われても、こうだもの(と、ヨボヨボした動きに)。だから辞めるの。おだてられては、やりたくない」
「色気あるラヴェルは照明の演出もあるので」
ボレロは、(ユニークな)この並び(円形配置)でなきゃやりたくない、ってオケも思うよね」
「(珍しい演目や配置は)何が常識か、非常識か、考えるのにちょうどいいよね」
「今日は目だけ、耳だけ、全身で、何かしら感じて頂ければ」
「今、77歳。僕も今生まれたつもりで、なんとか頑張ります」
なお、このトークの間に奏者の皆様が入場。ちょっと面白かったのは、土曜公演で会田莉凡さんが遅れて入場した時、オケの皆様が床を踏み鳴らして大歓迎で迎え入れた事です。愛されていますね♪そして「りぼんちゃんどうしたの?」と尋ねた井上さんは正面を向いたままだったので、私は素でびっくり!井上ミッキー、おそるべし。たぶん背中にも目がありますよね(笑)。

後半1曲目は、**クセナキス「ノモス・ガンマ」**。今回が札響初演。プログラム冊子には、各奏者の席次が記載された「ノモス・ガンマ配置図」が掲載されていました。98人(!)という大所帯で、奏者の皆様が肩寄せ合って円形に着席するのは壮観!各奏者はセクション解体されて円の中でバラバラに、たくさんの打楽器とコントラバスは円の外側をぐるっと取り囲むように配置されていました。この配置を見た瞬間から、私は期待ゲージMAXに。さあ、大事件な演奏がいよいよ始まる!どこからでもかかって来い!先陣を切った美しいオーボエに心奪われたのも束の間、円を取り囲む打楽器陣によるダダダダン!の強打に度肝を抜かれました。この衝撃たるや!木管メインのところ、金管メインのところ、そして弦メインのところと、円の中にバラバラに配置されたそれぞれの場所から妙な音(としか言えなくてごめんなさい!)から湧き上がってきて、打楽器がダダダダン!と円をぐるっとまわる。そのダダダダン!が来る度に、私はビクッとなっていました。低音の管楽器たちが発する、地響きのような重低音を受け継いだティンパニのダダダダダ……に痺れる!しばらく打楽器が沈黙し、金管群のうねるような音が次第にフェードアウトして一瞬の静寂に。この静寂がなんとも不気味に感じられました。円のあちこちからきこえる管楽器はうめき声?悲鳴?それらを一気に飲み込む、ダダダダン!と何度も大音量を響かせる打楽器。キュインキュインと鳴る弦楽器はボウイングがキレイに揃っていたのが何気にスゴイ。ピッチカートやコル・レーニョ奏法のパシパシした音も、研ぎ澄まされた音はとてもキリッとしていて、美音ではないのに引き込まれる魅力がありました。円の中で渦巻く様々な音はどんどん増えて次第に音が大きくなり、ダダダダン!と円をぐるっとまわる打楽器の強打は来る度に迫力を増していく。終盤は円の中のうごめく音も円を取り囲む打楽器もどんどんどんどん大きく、加速して大噴火のように。すごい凄いスゴイ!そしてありったけの大音量で、いきなり(と私は感じました)終了。土曜は「やっ!」のような井上さんのかけ声で締めくくり、日曜は音が消えた後に井上さんが「はい、終わり」と教えてくださいました。ああ凄まじい!何度体感したってきっと慣れることなんてない、とんでもない演奏!固定観念や常識といったものがひっくり返される体験、なんて快感!超・超・超気持ちええ!

後半2曲目は、同じ円形配置のまま、メインのスネアドラムのみ指揮者の前(円の中央)に移動し、サクソフォン、ハープ、チェレスタ(演奏は北村朋幹さん!)の皆様も舞台へ。指揮の井上さんは上の服を赤にお色直ししていました。プログラム最後の演目は、**ラヴェルボレロ」**。札響でも過去に40回演奏してきた定番曲ですが、円形配置で演奏するのはおそらく初めてでは?はじめに照明が真っ暗になり、各奏者の譜面台だけがほのかに明るく。きれい!まるで無数の星たちが瞬く宇宙!照明は、メインのスネアドラムを赤く照らし、その場に立ち上がって演奏するメロディ担当(ソロでも複数でも)はオレンジががったスポットライトで照らす演出でした。極小音スネアドラムとチェロ&ヴィオラのピッチカートから入り、そろりと登場したフルートが幻想的でとっても素敵!都会的なファゴットや、柔らかく滑らかに歌ったトロンボーン、温かなホルン、そこに重なった音程をずらしたフルート&ピッコロ、クラリネットオーボエが複数で……等々、各ソロの見せ場が続き、各奏者が持つ美しい音色にうっとり聴き入りました。同時に次の主役はどなた?と、円形配置のあちこちを順に照らすオレンジのスポットライトを目で追いかけるのも楽しかったです。またポン・ポン♪と規則正しく来るピッチカートは心地よく、その丸ごと包み込んでくれる優しさにじんわり心温まりました。暗闇の中ではっきりとは見えないけれど、コントラバスも加わったなとか、金管楽器がパ・パ♪と重なったなとか、響きだけで奏者の皆様の存在を感じ取れたこと。愛する地元オケだからこそ、それは何よりうれしかったです。ヴァイオリンがメロディの演奏に移ったタイミングで舞台全体にうっすらと照明がつきました。全員合奏がだんだんと音が大きくなるに従って、照明も少しずつ明るく。そしてクライマックスでもう一段盛り上がったところで客席にも照明がつき、パッと世界が広がったように。ラストへ向かう流れでは照明は最も明るくなって、タムタムやシンバルがド派手に鳴り、全員合奏の大音量でジャカジャカジャカジャン♪とビシッと締めくくり、同時に照明がふっと消えて会場は真っ暗になりました。一瞬の静寂の後、会場は割れんばかりの大歓声&大拍手!照明が付いて明るくなり、多くのお客さん達(極上のLブロックとRブロックはほぼ全員)がスタンディングオベーションしているのがわかりました。ステージにいる100名超の奏者の皆様、会場設営スタッフも照明担当のかたも、お一人お一人が輝ける星ですね。満点の星空、果てしない宇宙。涙が出るほど美しい。ああなんて素敵なの!

なお日曜昼公演では、花束贈呈とアンコールもありました。会田さんが指揮の井上さんへ花束を手渡し、お2人は熱いハグ!井上さんは赤いバラを一輪取ってそばにいた団員さんの胸ポケットに挿し、花束を客席(SS席)にトス(!)。映画スターみたい!超かっちょええ!そしてアンコールへ。井上さんは「まともなボレロを聴きたくない?」と客席に問いかけた後、「ちょっと長くなるけど我慢して。オケがやるから」と指揮台には立たずに、オケのみでおもむろに**ボレロ**の演奏開始。なお照明は明るいままでした。極小音スネアドラムとチェロ&ヴィオラのピッチカートに、そろりと乗ったフルート。ああ最後に奏者全員の姿が見える形で聴かせてくださるのね。大サービスうれしい♪と思った矢先、タムタムやシンバルがド派手に鳴り、全員合奏の大音量でジャカジャカジャカジャン♪と締めくくり。えええー途中すっ飛ばしていきなりラスト!うわあーやられた!私、ピュアだから「長くなる」=「フルで演奏する」って信じちゃったじゃない!ドッキリにまんまと引っかかってしまいましたが、この時の私はとても晴れやかな気分でした。最後の最後まで、こんなに楽しませてくださるなんて、もう絶対に敵いません!最高!

拍手鳴り止まない会場。両日とも、団員さん達が全員退場した後に一般参賀(というのでしょうか?)がありました。まずは指揮の井上さんがお一人で、続いて土曜はメインのスネアドラムを担当した打楽器の大家さんと田島コンマス、日曜は田島&会田の2人のコンマスと一緒に。ああ、この場を離れたくない!この両日の定期演奏会は生涯忘れることはない、特別な体験となりました。本当にありがとうございます!井上ミッキー、札響、そしてkitara、みんなみんな愛しています!

前回のkitara定期です。「札幌交響楽団 第660回定期演奏会」(土曜夕公演は2024/04/20)。シーズン開幕は、正指揮者・川瀬賢太郎さんによる「2つの交響曲」。「お初」のアイヴス2番は何でもアリな面白さ!定番チャイ4は胸がすく快演に気分があがり、加えて新たな気付きも。それぞれの楽しみ方で思いっきり楽しめました!

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先月のhitaru定期では、ラヴェル編曲版の『展覧会の絵』を聴きました。「札幌交響楽団 hitaruシリーズ定期演奏会 第17回~童話と絵と音楽と」(2024/04/25)。ブルッフの協奏曲は、大巨匠ボリス・ベルキンさんの鮮烈かつ層の厚い独奏と、応えた札響との幸せな競演!尾高惇忠「音の旅」は絵本をめくるように楽しめ、「展覧会の絵」はオーケストラだからこその響きをたっぷり堪能。マエストロ広上のご縁から出会えた音楽に浸れた贅沢な夜でした!

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。