夢の国ハワイの昔話 (original) (raw)

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原典 Thos. G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales.

(新しいお話の始め)

ハワイ最大のヘイワウ

モロカイ島の風下側、カルアアハのほんの少し東に、美しいマプレフ渓谷があります(*1)(N.1)。

そしてその渓谷の河口には、イリイリオパエのヘイアウ(神社)があります。

このヘイアウは、アイ カナカ港、現在は「プコオ」の名で知られる港、を直接監視するために、モイ(統治者)であるクパの命により建立されました。

それは何世紀も前のことですが、当時、モイであるクパは、マプレフとカルアアハと呼ばれる、2つのアフプアア(土地区画)をまとめて統治していました。

彼は自ら建立したこのヘイアウの中に、自分の住居を設けていましたが、そのヘイアウはハワイの島々全体を見ても最も大きいと有名でした。

いたずらっ子が忍び込む

クパにはカマロという名前の神官がおり、彼はカルアアハに住んでいました。

この神官には2人の男の子がいましたが、彼らはまさにいたずらっ子そのものでした。

ある日、王がちょっとした魚釣り旅行で家を留守にすると、彼らはチャンスとばかりに、ヘイアウの中の王の家を覗(のぞ)きに行きました。

そして神殿のパフ カエケを見つけると、それを叩(たた)き始めました(Fn.(1) )。

(原文の脚注)

Fn.(1) パフ カエケ(pahu kaeke):

パフ カエケはドラムの一種で、ココヤシの木の幹(みき)の一部分を切り出して、内側をくり抜いた後、片方の端面に鮫(サメ)の革を張って作られました。

通常2つ1組で使用され、一方が他方よりも大きかった点は、文明国のドラムに低音用と高音用があるのと、どこかしら似ていました。

2つのドラムのうち1つは演奏者の横に置き、また演奏に際しては、両手を使って指先で叩(たた)きました。

秘伝を授けられた人だけが知る、特殊なドラム演奏法を使えば、たとえどんなことであろうと、一言も声を出して口にせずに、秘伝を授けられた聞き手たちに伝え得る、と言われています。

(次回に続く)

(ノート)

(N.1)著者の紹介:フォーブス (Anderson Oliver Forves)(*2)

フォーブスさんは1833年ワイ島カアワロア(Ka'awaloa)で生まれました。この地は1779年、キャプテン・クックが殺されたことで有名なケアラケクア湾の北端にあり、かつては王族たちが住んだと言われています。

彼はプナホウ学園(Punahou)で学んだ後、米国へ渡りワシントン・カレッジ、プリンストン神学校で学び、牧師に叙任されて1858年にハワイに戻りました。

最初の活動拠点はモロカイ島南東部にあり、その島で最初にキリスト教会が建てられた、カルアアハ(Kaluaaha)でしたから、このお話し(アイ カナカ)の舞台のすぐ近くでした。

その後、ハワイ各地で布教活動を行った後、1888年米国コロラド・スプリングで亡くなりました。

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 17. Ai Kanaka, A Legend of Molokai, Rev. A.O. Forbes, p.186-192.

(*2) the Hawaiian Mission Children's Society (1901) : Portraits of American Protestant Missionaries to Hawaii, Honolulu: Hawaiian Gazette Company, p.96.

(前回からの続き )

カアイアリイが大王に答える

「どうかお聞き下さい。おお、大王陛下よ。」

と、カアイアリイが言いました。

「私は命を賭(か)けてカアラを愛し、また体力を振り絞って彼女を捜(さが)しました。

それらは私がこれまでの戦いで、大王陛下に捧げたものを凌(しの)ぐほどでした。

私はこれまで我が母を愛した以上に、彼女を愛しました。

そしてこれまで我が人生を考えた以上に、彼女のことを考えました。

彼女の顔は、初めて会ったその時から今までずーっと、私の目の前にいます。

そして彼女の温かい乳房は、私の喜びであり安らぎでした。

しかしそれらが今、私には冷たくなっているのです。

ですから私は、彼女の声と愛が行ってしまった所へ、行かねばなりません。

カアラの所に行かせて下さい

今、私が両目を閉じると、彼女が一番良く見えるのです。

ですからどうか私に、永遠に両眼を閉じさせて下さい。」

こう話しながら彼は身をかがめて、愛する人を抱きしめました。

それからウアに優しく、「さようなら」 と言いました。

そして次の瞬間、素早く強力な石の一撃で、彼は自らの眉間(みけん)と脳を打ち砕きました。

愛する2人を洞窟内に葬る

自らの命を絶った首長は、彼の愛する人の脇に横たわります。

そしてウアは2人の死を嘆き悲しみました。

王は愛する2人を洞窟内の岩棚の上に、並んで横たわらせるように命じました。

そして彼らをタパ布で包むように命じ、それを竹でしっかり包んだ上で、海の中を運ぶよう指示しました。

それから、洞窟内に横たわる首長と少女の死を、深く嘆き悲しむ声が上がりました。

そして、ウアがこう嘆き声を上げました。

「貴方(あなた)は何処にいるのですか、 ああ、勇敢な首長よ?

貴方は何処にいるの、おお、優しい少女よ?

あなた方は海の音の近くで眠るのですか?

そして、あなた方は深海の神々の夢を見るのですか?

ああ、お父様、あなたのお子さんは今、何処ですか?

ああ、お母様、あなたの息子さんは今、何処ですか?

コハラの地は嘆き悲しむでしょう。

そしてラナイの谷は嘆き悲しむでしょう。

首長の槍は洞窟の中で錆(さび)て行くでしょう、

また少女のタパ布は未だ完成しないままです。

彼の首に巻く花輪たちは色褪(あ)せる、

それらは色褪せてしおれるでしょう。

ああ、カアイアリイ、これからは誰がウクを突くのですか?

ああ、カアラ、これからは誰がナーウーを集めるのですか?

貴方はカヒキの海岸へ、

我々の父なるワケアの地へ行ってしまったのですか?

貴方は洞窟に生える苔(こけ)や、

荒波が打ち寄せる岩場の笠貝を食べるのですか?

ああ、首長よ、ああ、友よ、私が貴方に食べ物を上げましょう、

ああ、首長よ、ああ、友よ、私が貴方に安らぎを上げましょう。

貴方は愛した、太陽や花のように、

貴方は生きた、魚や波のように、

そして、今、貝の中の種のように、

貴方は海辺の洞窟の中で眠る。

悲しいかな! ああ、首長よ、悲しいかな! ああ、我が友よ、

あなた方は洞窟の中で、永遠に眠るのですか?」

カウノルに2人の悲哀を嘆く声

こんな風にして哀歌が終わると、ウアは兄弟のカヌーで悲しげなカウノルの海辺に、連れ戻されました。

そこには、あの首長と少女の悲哀を嘆く声が溢(あふ)れていました。

その多くが、 あの「カアラの潮吹き穴の洞窟」 の中で並んで眠る、 愛する2人に捧げた哀悼の歌でした。

(終わり)

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson, p.156-180.

(前回からの続き )

ウア、そして大王の声が

あまりの悲しさに彼が泣き叫んでいると、その洞窟の中で他の人の声が聞こえます。

最初に聞こえたのはウアの声です。

友の遺体に身をかがめながら、彼女は慰めるような調子で、彼に話しかけています。

それからしばらく後、彼は偉大なる指導者(大王)の声を聞きます。

大王は彼に呼びかけて、悲しみに耐えるよう命じています。

カアイアリイが嘆く

「おお、あらゆる海の王者よ。」と、カアイアリイが言いました。

彼はカアラをウアの両腕に預けて、立ち上がっています。

「私は、あなたから頂いた花を、失ってしまいました。

彼女は傷ついて、死んでいます。

そして最早(もはや)、私の人生に喜びはありません。」

大王がカアイアリイをさとす

「何だと!」 カメハメハが言いました。

「お前は首長なのだぞ。そのお前が、1人の少女のために人生を投げ出すのか?

ここにウアがいる、彼女はお前を愛している。

彼女は、カアラのように若くて優しい。

お前に彼女を授けよう。そして、もしもお前が望むなら、さらにもっと 。

以前与えたコハラのあの土地の他に、このラナイ島でお前が望む全ての物を与えよう。

この島の雄大な盆地、パラワイはお前の物だ。

またカウノルにある私の釣り場を、じっくり見せてやろう。

そして、お前はラナイ島の王になるのだ。」

(次回に続く)

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson, p.156-180.

(前回からの続き )

元気になって花輪を編むのだ

「いや違う、私の愛する人よ(*1)。」

悲しみと涙でいっぱいの首長が言いました。

「今はもう、私が一緒だ。

私の心臓の温(ぬく)もりを、あなたにあげよう。

あなたの体に移った、私の生気を感じ取るのだ。

生きるのだ、おお、私のカアラよ。私のために生きてくれ。

こっちに来なさい、体を休めて気持ちを落ち着けなさい。

そして息を止め潜って泳げるようになったら、もう一度、甘い香りが漂う所やあなたが住む谷へ、連れて行ってあげよう。

そうしたらそこで、花輪を編んでもらおう。」

このように優しい言葉を投げかけて、また愛情を込めて撫(な)でながら、彼は愛する人を落ち着かせようとしました。

カアラが逝(い)く

しかし可愛(かわ)いそうな少女は、なおも血を出しながらうめき声を上げていました。

そして、さらに弱々しくなった声で、こう言いました。

「違うんです、私の首長。私はもう二度と花輪を巻いてあげることはないでしょう。

しかし私の両腕だけは、もう一度、あなたの首に回しましょう。」

それから弱々しく両腕を彼に回すと、彼女は悲しそうに涙にむせびながら、弱々しい口調で言いました。

「アロハ、私の愛するお方!

私をワイアケアクアに咲く花たちの間に埋めて下さい。
そして、わたしの父を殺さないで下さい。」

それから彼女は息をしながら、うめき声を上げたり愛をささやいたりして、しばらくの間、愛する彼の胸に抱かれています。

しかし、意識がもうろうとして体力も衰え、両腕は脇に垂れ下がったままです。

ところが突然、彼女が彼の首にしっかりと腕を回します。

そして頬と頬を寄せ合いながら、彼女は彼にしがみついてうめき声を上げ、最後の愛の興奮にあえぎ、そして逝きます。

引き裂かれた彼女の哀れな遺体は、愛に見捨てられた首長の腕の中で、ぐったりと横たわります。

(次回に続く)

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson, p.156-180.

(前回からの続き )

愛するカアラが倒れている!

最初、彼には何も見えませんでした(*1)。

しかし直ぐに、彼の耳に悲しく哀れなうめき声が聞こえました。

--- 甘くて悲しいうめき声、それは、探し続けて飢えた彼の耳に向けた、あの彼女の声でした。

そして冷たく湿っぽい陰うつな床の上に、血を流した瀕死(ひんし)の愛する人が、ぼんやりと見えました。

素早く彼女を抱き締めて気持ちを落ち着かせながら、彼は彼女を抱き上げて、空気がきれいな高い場所へ運ぼうとしました。

しかし、哀れに衰弱したカアラのうめき声を聞いて、彼はこう推測したのでした。
「彼女は海を泳ぎ切ろうとして、溺(おぼ)れたのだろう。」

死ぬしかないのです

そして彼が腰を下ろして、彼女を両腕で抱えると、彼女は弱々しい声で言いました。

「ああ、私の首長。これでもう、私は安心して死ぬことが出来ます!

私はこれまで、こんな風に思ってとても怖かったのです。

『魚の神たちが、私をどこかに連れて行ってしまうかも? そして、もう二度とあなたに会えないかも?』

ウツボは咬(か)み付くし、カニたちは体の上を這(は)い回りました。

そこで、必死の思いで海に出てあなたを捜そうとしましたが、私のか弱い腕では潮の流れに逆らえませんでした。

そして洞窟の狭い入口の岩で引き裂かれてしまいました。

それだけでなく、あの恐ろしい神たちが、私をあまりにも酷(ひど)く痛めつけたので、もはや私は死ぬしかないのです。」

(次回に続く)

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson, p.156-180.

(前回からの続き )

カヌーで洞窟へ急ぐ
これを聞いて、ウアは奮(ふる)い立ちました(*1)。
彼女は、兄弟のケアウェに協力を呼びかけました。

そして彼の手をしっかり握ると、海辺に向かって引っ張りながら、こう大声で叫びました。
「あなたのカヌーへ、急いで! カウマラパウへ向けて漕ぐのは、私も手伝うわ。」

こうして彼女は、断崖を通るルートを行くよりも速く、洞窟に着くことが出来ました。

そしてまた、あの大王も彼女らの後を追い、最高に敏速な彼のカヌーに飛び乗りました。
彼はいつものように、大きく波打つ海の深くまでオールを突っ込み、カヌー漕ぎを助けていました。

カヌーは荒涼としたクモクの海辺に沿って、飛び跳ねながら進んで行きました。

カアイアリイは洞窟の中へ

一方、カアイアリイが、押し寄せる大波よりも更に深くまで飛び込んだ時、彼はその瞬間から、鋭い観察眼を持つハワイの海のダイバーになりました。

そして彼の鋭い目が、あらゆる深さの場所を余す所なく、注意深く見て行きました。

すると、海の洞窟の大きな入口があり、そこから大量の海水が洞窟内に流入していました。

彼は頑強な手足でいとも容易に、寄せては返す海に逆らいながら、狭い水路の流れの中を勢い良く泳ぎ切りました。

そしてしばらくすると、彼は日の当たらない岸辺に立ち上がりました。

(次回に続く)

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson, p.156-180.

(前回からの続き )

夢見るウア

そして、この英雄が飛び込んだ時、ある人が彼の近くにいました(*1)。

それは温厚で髪の毛がクラスター・カールの、ウアでした。

彼女はこの首長を愛していました。

彼の歩みが海に遮(さえぎ)られ、荒狂う水がうめく中で、彼がうめき声を上げました。

その時、彼女は心の底からこう願ったのでした。

「もう一度、彼に高地の林に戻って欲しいわ。

そこで私は彼のために花輪を編み、彼の手足を癒(いや)し、そして、彼の頭を私の膝に持たれかけさせてあげましょう。」

カアイアリイが飛び込む

しかし彼は死のダイビングを決行すると、もはや姿を現わすことはありませんでした。

ウアはカアイアリイのために、大声で泣き叫びました。

この激しく襲いかかり泡立つ海から、首長が生きて返って来るとは、とても考えられません。

そこで彼女は、こう叫びました。

「アウウェ カ マケ! (ああ、彼は死んでしまった!)」

カアラはあの洞窟にいる

そこで彼女は、大きく甲高い声を上げて泣き叫び、また髪をかきむしって頭を抱え込みます。
そして断崖絶壁を超えて走ると今度は海辺へ駆け下りて、ケアリアのタブーの地まで戻って来ました。

彼女はそれから、ずーっと大声で泣き叫びながら、カメハメハの足元に身を投げ出しました。

大王は、彼の若い首長を失ったことをウアから聞いて、深く悲しみました。

しかし、近くに控えていた神官のパパルアは、こう言いました。

「おお、天上そして全ての島々の首長である大王よ。

そこ、カアイアリイが飛び込んだその場所には、オプヌイの海の隠れ家があります。

そして大王の勇敢な長槍使いは、あの亀について行けば、深海にある彼の隠れ場所に行けます。

ですから、彼はその洞窟の入口を知ることが出来るでしょう。

そして私が思うに、彼はその中で、失った愛する人カアラ、すなわちパラワイの花、を見つけるでしょう。

(次回に続く)

(注記)

(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson, p.156-180.