パワハラ事例解説(34) - 情報セキュリティ違反への誘発は絶対に許されない! (original) (raw)

このシリーズの記事では、パワハラの定義と類型、私の身近に起きたグレーゾーンを含む事例について、定義と類型をもとに解説している。内容によっては考え方や改善策についても述べているので参考にしてほしい。

自分が加害者にならないように注意することをはじめ、被害に遭いそうな場合はいち早く予兆に気付くことが求められる。

目次

【最初に】パワハラの定義と6つの類型

パワハラはご存知の通り「パワーハラスメント」の略であり、権力や地位を利用した嫌がらせという意味である。2001年に株式会社クオレ・シー・キューブによる造語である。ただ、その定義は曖昧で指導との区別が困難である現実を抱えていた。2020年6月にパワハラ防止法が適用され(中小企業は2022年4月より適用)、同時に厚生労働省による定義が明確になった。

パワハラの6類型

パワハラは次の6つのパターンに分類され、6類型と呼ばれている。

「(1)身体的な攻撃」は暴力の他、モノを叩くことによる威嚇がこれに該当する。「(2)精神的な攻撃」は暴言の他にも、他人を心理的に苦しめる発言が該当し、パワハラ事例の中でも最も多い。特定の人だけ仲間外れにしたり、情報を与えない、無視をするのは「(3)人間関係からの切り離し」に該当する。到底達成できないノルマを与える「(4)過大な要求」、能力に見合わない仕事を与える、もしくは仕事を与えないことで心理的に苦しめる「(5)過小な要求」、プライベートに踏み込みすぎる「(6)個の侵害」、これらを総称してパワハラと呼ばれる。
www.no-harassment.mhlw.go.jp

このシリーズの記事で紹介するパワハラの事例

ニュースで取り上げられているものや、裁判になったものは組織内で解決できなかった手遅れ案件である。また、世間の目も段々厳しくなってきており、損害賠償の相場も数百万単位(被害者が死亡の場合は数千万単位)に上がってきているという情報もある。いくら正論であっても、相手が嫌がるやり方であれば、法律に触れることになる。

ただでさえニュースで見ることが多くなってきているのだが、これらは氷山の一角であり、水面下には程度の大小を問わずさらに多くの案件が潜んでいる。上述の定義や類型を基に、私が実際に見たことがある事例を紹介し、定義や類型を元に解説する。程度や被害の大小は様々である。

いずれにしても、加害者側に問題があり是正が必要であることは間違いなく言えるので、立場関係なく参考にしていただきたい。その上でパワハラの予兆を見極め、未然防止に繋げることが重要てある。

このシリーズの記事で紹介するパワハラの事例一覧については、こちらを参考にしていただきたい。
o08usyu7231.hatenablog.com

【事例34】情報セキュリティ違反への誘発は絶対に許されない!

IT企業を中心に情報セキュリティへの意識が高まり、ノートパソコン(以下、"PC"と記する)やセキュリティエリアへの入館証の紛失が大いに問題になり、場合によっては顧客との取引が停止する事態に至ることがある。組織としての仕組み上の対策を講じるも、最終的には従業員一人一人の意識が大いに重要になってくる。**ISMS情報セキュリティマネジメントシステムの中身については他のサイトなどを参考にしていただきたいが、多くの企業ではISMS教育**を定期的に実施し、従業員への意識付けを繰り返し行っている。それでも、気の緩み、「これくらいは良いだろう」という慢心から、取り返しのつかないセキュリティ事故が発生することがある。

本記事で紹介するパワハラ事例では、情報セキュリティ違反への誘発に至りかねない、絶対に発生してはならない事例として紹介する。

被害者A氏、A氏の先輩社員である加害者B氏が同一のチームに所属しており、B氏は特にパワハラ気質な人間というわけではなかった。ある時、B氏の異動が決定し、長年所属していたA氏と同一のチームからB氏が離脱することとなった。このB氏の離脱に伴い、チーム全員でB氏の送別会(飲み会/飲酒あり)を盛大に行うことになった。

一方、B氏の送別会の翌日にA氏が出張に行くことが決定し、その前日(B氏の送別会と同じ日)に、A氏は翌日PCを保有して出張に直行することから、PCを自宅に持ち帰る必要が出てきた。

多くの企業ではPCを持ったまま飲酒することを禁止している。PCを持ったまま居酒屋などで飲酒することで、セキュリティ意識が低下し、PCを紛失するリスクを想定しているからである。A氏、B氏が所属する企業も、情報セキュリティ教育にて前述のことを啓蒙している。このような理由から、A氏は残念ながらB氏の送別会を不参加とし、翌日の出張に備えてPCを保有し直帰することを送別会幹事およびB氏に伝えた。A氏は長年お世話になったB氏の送別会に参加することができず、B氏に対して申し訳ない思いがあり、同時にそのこともB氏に伝えた。

すると、B氏からは次のような言葉が返ってきた。

また、そのチームの責任者を含め、周囲のメンバの一部からは次の一言だった。

A氏は一時心動かされたが、最終的にはB氏や周囲の言葉には動じず、B氏の送別会は不参加とし、出張に向けてPCを保有し直帰した。

さて、ここまでで何がパワハラに当たるのかを考えてみたい。パワハラに定義に基づき分析していくと、A氏にとって先輩であるB氏であり、長年お世話になったというB氏にとって①優越的な関係を背景とした言動であって、翌日からの出張に向けてPCを保有しているA氏に対してB氏の送別会(飲酒あり)への参加を強要することによって情報セキュリティ違反を誘発するという②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、A氏にとってB氏との関係悪化を匂わせ不利益に至らしめるという③労働者の就業環境が害されるものであることから、パワハラの定義を満たしていると考えられる。

更に、パワハラ6類型に着目すると、A氏が情報セキュリティの遵守とB氏の盛大な送別という二者択一の状況で、B氏への忠誠心を試すかのような圧力をかけた(2)精神的な攻撃の他に、A氏にとってB氏との関係悪化を匂わせる(3)人間関係からの切り離しが該当する可能性がある。

しかも、繰り返しになるがPCを保有したままの飲酒という情報セキュリティ上のリスクが高い行為を助長していることとなり、パワハラ云々を抜きにしても、非常に危険な行為であることがわかる。B氏の問題となる発言を一つずつ確認していく。

ここがまさにパワハラに当たる部分であり、B氏がA氏との上下関係を利用し、A氏がB氏に長年お世話になったという点にB氏が都合良く漬け込んでいる点である。本事例のような情報セキュリティ違反や事故を誘発するケース以外にも、A氏に不利益や負担を生じさせるようなことがないよう、B氏はコンプライアンス意識を高めるべきである。仮に、もし私がB氏なら、送別会に参加を強要したことで情報セキュリティ事故が起きれば、責任を感じ、取り返しのつかないことになってしまうことを予想するため、PCを保有しての送別会参加は控えるよう促す。むしろ、普通の人はそのようにするだろう。

この点における気の緩みが情報セキュリティ違反や事故に繋がるリスクを大幅に増大させる結果となる。もし、PC紛失などの情報セキュリティ事故が起きれば、誰が責任を取るのか? PCを保有している当事者はA氏であるため、A氏への批判が集まることは容易に想像できる。更に、A氏だけの問題ではなく、組織としての問題でもあり、紛失PCに顧客情報が存在すれば顧客から当該組織への信頼を無くすという取り返しのつかない大ごととなる。このあたりは、情報セキュリティ教育で何度も繰り返しインプットされている内容である。

これは真面目とは言わない。融通が利かないわけでもない。情報セキュリティ上のルールを遵守するという当たり前のことをやっただけである。勘違いすべきではない。

これはB氏の言葉ではないが、「悩ましい」「○○(A氏)の判断に任せる!」としているのは、「自分事ではない」「A氏個人のこと」との認識が強いようである。しかし、上述した通り情報セキュリティで問題を起こせば、組織の問題、企業の問題へと発展する。よって、「○○(A氏)の判断に任せる!」というのも不適切な言葉であり、本来情報セキュリティ上のリスクを考慮し、A氏の不参加を致し方なしとするか、送別会の日程自体を変更するかといった方向に舵を切ってもらいたいものである。

最後に、B氏の送別会にA氏が不参加としたのは、A氏の英断である。やはり、本事例でいえば情報セキュリティをはじめとする**コンプライアンスを最優先したことは、B氏を含めた他の従業員の模範とするところである。A氏とB氏との関係性など、B氏の送別会以外のところで築く機会はあるし、本当に関係性が崩れてしまうならB氏がその程度のコンプライアンスでしかないということである。そこを今回のA氏のように正しく判断すべきである。情報セキュリティ違反への誘発は絶対に許されない!**

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【最後に】パワハラにおける考え方・まとめ

パワハラは加害者および組織の問題、被害者に責任はない

パワハラは加害者が未熟であることによって発生する。パワハラに関して被害者には非はない。被害者に改めるべき部分があると思えば、改めることは素晴らしいことである。しかし、**パワハラを受けたことに対する責任まで取る必要はない**。

一方、パワハラ加害者は重い軽いいずれにしてもそれなりの処分と教育を受け、更正してほしい。パワハラの加害者を絶対に昇格させてはいけない。降格するくらいを当たり前にしてほしい。

パワハラ加害者となる可能性が高いリーダー、管理職には、パワハラの重大さを知ったうえで、チーム・組織で成果を最大化するために必要なことを学んでほしい。私は様々なリーダー、管理職を見てきた。技術や能力が高いベテラン社員はある程度いる。しかし、いくら能力が高くてもパワハラ気質なベテラン社員は、管理職にふさわしくないと判断している。組織のメンバーのパフォーマンスの最大化の妨げとなっているからである。チーム・組織で成果を最大化するためにパワハラはいらない。一方、被害者はパワハラを受けた状況にもかかわらず業務において一定のアウトプットを出しているなら、優秀な人材であると考えて良さそうだ。

パワハラがいけないことであるということは皆知っている。しかし、何がパワハラに当たるか、パワハラが発生したときにどのような影響が出るかを理解していないのではないだろうか。パワハラに関する研修や教育は行われているが、最悪命に関わるということを教えていないのではないだろうか。

パワハラ対策の第一歩は証拠集め

パワハラは加害者および組織の問題としながらも、被害者が対策しなければならない。実に理不尽だ。放置や無策、我慢することはお勧めできない。エスカレートするからだ。その対策の第一歩としては証拠を集めることだ。電子メールやチャットのやりとりでパワハラに繋がりそうなものがあれば残しておく、会話についてはスマホでも良いがICレコーダーで録音しておくことをお勧めする。裁判等で確実な証拠となる。

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防犯カメラはこれまでは文字通り、犯罪調査に使用されることがメインでした。最近では、これに加えて職場などにおけるパワハラの証拠収集等、ハラスメント対策においてより重要性が高まっております。小型であり持ち運びしやすいこともあり、いつハラスメントに巻き込まれるか予測できない状況において、自分の身を守るためにも、是非携帯しておくことをお勧めします。

自分を守るための準備も並行して進める必要がある

パワハラは加害者を直接コントロールすることは難しい。被害者の方々には、まず自分を守ることを優先していただきたい。できればパワハラが発生するような環境から離れ、他の環境に移ることができるようにしておくことが望ましい。本来、被害者側に要求しなければならないことは社会的に非常に残念ではあり、理不尽ではあるが、**パワハラ被害に遭う前から、転職、起業、フリーランス、副業など準備を進めておくことが、被害者個人でできる対策**である。あらゆる手段で自分の人生を守るよう、準備を進めておくことをお勧めする。それくらい日本のハラスメント対策は国際的に見ても遅れている。
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