なぜQは使いづらいといわれるのか考えてみた (original) (raw)

この記事は素数大富豪 Advent Calendar 2018 - Adventarの10日目の記事です。

昨日9日目は岩淵夕希(物智)(@butchi_y)さん | Twitterさんの「オロチ数」を探した結果 - 岩淵夕希 公式ブログ (temporary)でした。

さて、今日のテーマは_Q_(12)の持つ特性についてです。

Qって使いづらいと感じませんか。特に素数大富豪始めたばかりだとQに悩まされることってあると思います。初心者と遊んでいると「Qが余る」「Qは来ないで欲しい」という意見がよく聞かれます。かく言う僕も初期はQの扱いに困り、Qを弱い札だと考えていました。ここで僕は疑問を持ちました。

「なぜQを使いづらいと感じるのか?」

この問いには「2枚出しでQを使った素数がQ7とQKの2つしかないから」「3枚出しでQを2枚含む素数がないから(QQxの形の素数が存在しないから)」という回答がなされますが、本当にこれだけでしょうか。これらのことからQが使いづらいと結論づけるのは早計ではないでしょうか。

例えば、この理屈でいけば「2枚出しにおいて6を使った素数は3つあり、8を使った素数も3つある。よって6と8は2枚出しにおいて同じぐらい使いやすいといってよいのか?」とか「3枚出しで66Aという素数を出すことを禁止してゲームを行ったときに6を持て余すようになるのか?」というような疑問が生まれます。

というわけで原因はもっと根深いところにあるのではないかと考えまして、「なぜQは使いづらいとされるのか?」について考察したいと思います。

とりあえず今回の考察は3枚出しまでを対象にします。また本当であれば合成数についても考慮すべきですがそこまで広げると大変なので今回は見送ります。

結論から言うとあまりうまくできませんでしたが、雰囲気だけでも感じ取って改善策を教えてください。

Qが出しづらいとされる理由について2つの仮説

今回は2つの仮説の立ててそれを検証していく形とします。Qが使いづらいと定量的に評価したいという願望から、覚えやすさなどは考慮しないですべての3枚出しまでの素数を知っているものとして扱います。

  1. Qを使った素数の種類が少ない
  2. 3枚出しにおいてQと他の札との結びつきに顕著な特徴がある

1つ目は単純にQを使った素数がそもそも少ないのではないか、という説です。直観的に最もQが出しづらい原因になりうると思います。

2つ目は3枚出しでは特定の札がないとQが出しづらいという説です。例えばQとTを含む素数は4つ(これは偶数2枚含む割には多い)もありますが、QとQを含む3枚出しは存在しません。このようにQは札間の仲の良さにばらつきが大きいから出しづらいのではないかという説です。

これら2つの仮説について検証していきます。

[検証] 仮説1:Qを使った素数が少ない

ここではまず3枚出しまでの素数について、頻度分析*1することにします。

まず1,2,3枚出しの素数表のAからKの出現回数を各々カウントし、Qの頻度が少ないか見ていきましょう。

用いた素数表の条件は以下のようにします。

3つ目の条件に関しては特に8JAと8AJなど組成が同じものでも区別するものとします。とりあえずこの条件で各々の素数表の頻度分析を行い出現回数の多い順位を付けました。

以下結果です。

**表1.**1枚出し素数表の頻度分析結果

トランプ 個数 順位
A 0 2
2 1 1
3 1 1
4 0 2
5 1 1
6 0 2
7 1 1
8 0 2
9 0 2
T 0 2
J 1 1
Q 0 2
K 1 1

表2.2枚出し素数表の頻度分析結果

トランプ 個数 順位
A 12 1
2 3 7
3 12 1
4 3 7
5 2 8
6 3 7
7 11 3
8 3 7
9 9 4
T 5 6
J 5 6
Q 2 8
K 8 5

**表3.**3枚出し素数表の頻度分析結果

トランプ 個数 順位
A 117 1
2 61 7
3 114 2
4 51 10
5 48 12
6 52 8
7 105 3
8 47 13
9 105 3
T 52 8
J 85 6
Q 49 11
K 86 5

2枚出しでは5と並び最も個数が少なくなっていることがわかります。そして5はグロタンカットに用いることができるので2枚出しにおいて最もQの使用機会が少ないと言えそうです。

しかし3枚出しでは8や5の方が頻度が少ないという結果になっています。これは直観に反するのではないでしょうか。

ここで素数大富豪プレイヤーなら気になることがあるかもしれません。上位互換、下位互換についてです。素数大富豪ではトランプを自由に並べ替えることができるので組(A,7,9)はトランプの組としては1通りですが素数になる並べ方は4通りあり*2その分A,7,9が重複してカウントされています。

よって2枚以上では組についての集計も行います。今度は少なくとも1つ素数を作ることのできる組(X,Y,Z) (X≦Y≦Z)をすべて列挙し、各々の札の出現頻度を調べます。

(3,5,9)→3が1個,5が1個,9が1個とカウント(359,593,953は素数)
(A,A,5)→Aが2個,5が1個とカウント(A5Aは素数)

**表4.**2枚出しの組の頻度分析

トランプ 個数 順位
A 9 1
2 3 8
3 9 1
4 3 8
5 2 12
6 3 8
7 8 3
8 3 8
9 8 3
T 5 6
J 4 7
Q 2 12
K 7 5

**表5.**3枚出しの組の頻度分析

トランプ 個数 順位
A 53 4
2 40 7
3 61 1
4 32 10
5 31 11
6 31 11
7 58 3
8 33 9
9 59 2
T 34 8
J 50 6
Q 29 13
K 53 4

確かにこの条件の下では、2,3枚出しで最もQの頻度が低くなっていることがわかるが5,6と比べると微々たる差であります。またQは下位互換が多い傾向にあるといえます。

[検証] 仮説2:3枚出しにおいてQと他の札との結びつきに顕著な特徴がある

(X,Y,Z)(X≦Y≦Z)を素数を作ることのできる組としたときの組(X,Y),(Y,Z),(X,Z)の個数をカウントすることを3枚出しの素数を作る組全てに対して行います。

ただし、(X,Y)=(X,Z)または(X,Y)=(Y,Z)を満たすものも重複して数えています。 *3

(1,6,9)→(1,6),(6,9),(1,9)を1回ずつカウントする

(3,4,4)→(3,4)を2回、(4,4)を1回カウントする

といったことを全ての3枚出し素数を作る組に行う

この個数をカウントしたときにQを含む組が他と比べてどのような性質があるか調べます。

**表6.**上の条件を満たす2枚組の個数

個数
(A,A) 5
(A,2) 9
(A,3) 9
(A,4) 7
(A,5) 7
(A,6) 9
(A,7) 7
(A,8) 8
(A,9) 10
(A,T) 9
(A,J) 11
(A,Q) 6
(A,K) 7
(2,2) 4
(2,3) 9
(2,4) 2
(2,5) 3
(2,6) 3
(2,7) 8
(2,8) 4
(2,9) 8
(2,T) 3
(2,J) 10
(2,Q) 3
(2,K) 7
(3,3) 8
(3,4) 8
(3,5) 6
(3,6) 9
(3,7) 10
(3,8) 9
(3,9) 9
(3,T) 8
(3,J) 8
(3,Q) 5
(3,K) 8
(4,4) 2
(4,5) 3
(4,6) 3
(4,7) 7
(4,8) 2
(4,9) 9
(4,T) 2
(4,J) 8
(4,Q) 3
(4,K) 6
(5,5) 1
(5,6) 2
(5,7) 9
(5,8) 4
(5,9) 7
(5,T) 3
(5,J) 5
(5,Q) 2
(5,K) 6
(6,6) 1
(6,7) 7
(6,8) 1
(6,9) 7
(6,T) 4
(6,J) 4
(6,Q) 3
(6,K) 8
(7,7) 7
(7,8) 9
(7,9) 10
(7,T) 6
(7,J) 9
(7,Q) 7
(7,K) 7
(8,8) 3
(8,9) 5
(8,T) 3
(8,J) 6
(8,Q) 2
(8,K) 6
(9,9) 7
(9,T) 8
(9,J) 8
(9,Q) 8
(9,K) 9
(T,T) 1
(T,J) 8
(T,Q) 4
(T,K) 8
(J,J) 7
(J,Q) 6
(J,K) 9
(Q,Q) 0
(Q,K) 7
(K,K) 7

このような結果になりました。(Q,Q)以外には0となる組が存在しないことがわかる。

(9,Q)の個数が8個もあるのが意外で9とQは一緒に使いやすいと言えそうである。

このままでは見づらいので、A~Kまでを含む組について個数の平均や標準偏差を考えます。

**表7.**A~Kを含むものの個数の平均値と標準偏差

| | 平均 | 標準偏差 | | | ----- | -------------------------------------------------------------------------------------- | ---- | | Aを含む組 | 7.38 | 1.39 | | 2を含む組 | 5.46 | 2.7 | | 3を含む組 | 8.15 | 1.34 | | 4を含む組 | 4.62 | 2.6 | | 5を含む組 | 4.46 | 2.4 | | 6を含む組 | 4.69 | 2.93 | | 7を含む組 | 7.92 | 1.32 | | 8を含む組 | 4.62 | 2.57 | | 9を含む組 | 8.08 | 1.38 | | Tを含む組 | 5 | 2.58 | | Jを含む組 | 7 | 1.63 | | Qを含む組 | 4.31 | 2.39 | | Kを含む組 | 7.31 | 1.03 |

ばらつきを考えると6が大きく,Qは4,8と同程度であるといえる。他の偶数と比べても目立ってばらつきがあるとは言えなさそうである……

考察的なもの

確かに素数大富豪の1,2,3枚出しにおいてQを含むものは少ない。場の枚数が1~3枚出しで進む環境の場合はQの使用頻度がやや少ないとは言えそうである。2枚出しではQが使いづらいとはいえるかもしれない。
仮説2のなかで調べた組について、特に一緒に出しやすい札が9,7,Kの順になっている。Kは切り札,7はグロタンカットに使えるなど、他の使い道があるのでもっと実践に即した評価がしたい。

ここまで書いてみて想像以上にQに偏りが少なくて焦ってます。(顕著にQが使いづらいっていいたかった……*4)

ということで思いついたことを列挙します。

今回の結果からではQの特徴をうまくとらえたとは言いがたく、他の偶数についても同じように使いづらいと言えてしまいそうである。さらなる分析が求められる。素数大富豪って難しい……

[おまけ]オススメのQの有効活用素数

ここまで長くQ使いづらさについて考察してきましたが、結局のところQはどうやって使うといいのかです。今回の考察はあんまり参考にしません。

2枚出し素数だとQ7,QKしかありません。特にQKはQを消費するための手というよりは手番を取りに行く手ですので安易には出せないと思います。少なくとも2枚だけでQを3枚以上処理するのはかなり難しいでしょう。

3枚出しでは仮説2の副産物的に(9,Q)という組が意外と素数が作りやすい組になっていることがわかります。ここを正確に覚えておくとと9があるときには高い確率でQで処理できると言えそうです。 また(T,Q)の組を含むQTA,QT7,QT9,QTKは使いやすくて強いので初心者にオススメしてる素数です。

4枚出しではだいぶQも使いやすくなります(パターンが増えるから?ここはよく考察したい)。つかいやすく覚えやすいものを列挙します。

QT6A,QT63,QT67

58Q9,65Q9,88Q9(5倍肉,惨い肉,やばい肉)

4QQK,5QQJ

QQQA,QQQJ

このあたりは有名なので覚えておきたいですね。

5枚以上になってようやくQを含む4つ子素数の登場です。

36Q1x

68Q5x

5枚ともなるとQを使った5枚9,10桁も多いので困らなくなると思います。

そのほか個人的におすすめの4つ子素数を紹介しますが実用性は不明です。

5QT73Qx

5Q4QK6x

7Q6J7Qx

9QT2TQx

523QQ6Qx

6Q2QTTQx

8QT2Q4Kx

などなど

まとめ

今回は頻度分析などをして、Qの使いづらさについて定量的に評価しようと試みました。こういう手法での素数大富豪の解析が流行って欲しいから何か身近なテーマで面白いこと言いたいという理由でQについて書きました。カッコよく「Qは〇〇なので使いづらい!!!」という言いきりたかったのですが予想以上に難しいということがわかりました。

これからの素数大富豪は頻度分析や、札間の相性、大小などから多角的に札・手札の分析が肝心であると思います。用語の整備がしたいです*7

このような評価をもっと上手にできる方が大勢おられるはずです。とにかく素数大富豪プレイヤーのなかにこのような分析を求めている人がいることが伝われば幸いです。
非常に拙くまとまりの薄い文章でしたが、ここまで読んでいただいてありがとうございました。

明日の記事はきのこさんによる「家族で楽しむ素数大富豪」です。楽しみですね。