哲学プラクティス長野大会雑感③ みんなで考える「べき」なのか、みんなで考え「たい」のか (original) (raw)

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10月4日(金)
子は朝起きると妻か私に「おやつセットおねがいします。すっぱいさとうとぉー、まだたべたことのないおかしこんくらい(ゆびを3、4本立てる)とー、ちっちゃいジュース」と要求する。我々はすっぱい砂糖(=塩)と3,4個さっと食べれるお菓子とピルクル的なヨーグルト飲料を渡してやる。そして子は我々の緑茶の入ったコップとヨーグルト飲料のグラスを合わせ「かんぱーい」と言う。平和な朝の一場面。だが今日は深夜の時点から子が明らかに発熱してホカホカしている。咳や鼻などほかの症状はないようだけど、保育園を休むなどのイレギュラーな対応に備えて早めに起きてパソコンを開いて少し事務仕事を進めた。いそいそ『哲学対話日記1.5』(仮)に新しく加わる執筆者の方が送ってくれた草稿を読ませてももらったり、執筆者のグループチャットを作ることで数日後に迫った締切への圧をかけたりする。

そう、文学フリマ福岡10に向けて『哲学対話日記』の続編『哲学対話日記1.5』を作ることになった。そして『哲学対話日記』の著者の方たちとも多く対面で集まれる哲学プラクティス連絡会で『哲学対話日記』について話す、は連絡会の私の裏テーマだった。そこで連絡会の公式機関誌『みんなで考えよう』の編集委員企画と位置付けて、夕方に「哲プラ系雑誌レビューまつり」と題した企画を打った。「哲プラ系雑誌」とは今回のために私が作った呼称で、哲学対話やそれにまつわる実践者の特集や哲学エッセイなどを主に載せている媒体をさしている。今回は、調査できる範囲で哲プ系雑誌を紹介・分類して示したうえで、「どうすれば書かれたものを通じて「みんなで考える」ことはできる?」という副題を参加者のみなさんと考える構成にしてみた。(渾身の発表資料はこちら→240928連絡会_哲プラ系雑誌レビュー祭り(小川他) - Google ドライブからご覧いただきたい。)

我々の報告後のディスカッションでは、Nさんが雑誌を自分でつくるときの価格設定の話から始めてくださり、そこからつながってGさんが言及してくれたのは、最新の『みんなで考えよう』の編集委員会による座談会**「こんにちは、編集委員会-「べき」と「したい」を行き交い、編み続けること-」**。タイトルにもあるように我々は哲プラ系雑誌を作り「作りたい」と思っているのか「作るべき」と思っているのかという話がでてきた。GさんやKさんは基本的に「べき」でしかこれまで書いてきていないらしい。これにはお人柄や書かれているものを見ていてもなんとなく納得するのだが、では私はどうか。ある意味で『哲学対話日記』は私がはじめて純粋に「したい」でしている活動とも言えそうだけれど、なんだかそのわりには妻の目線からは大変な仕事のように苦しんでいるように見られているのはなんでだろうか。さらに、ディスカッションの終わりには「みんなで考えよう」という言葉にも焦点が当たった。みんなで考えるべきだと思って機関誌をつくるのか、ただしたいからつくるのか、その点も実はあいまいで、でもそこを議論しながらつくっていくことで機関誌の企画や特集、原稿募集の仕方なども変わってきそうだ。

土曜日の連絡会で話したそんな話とリンクするような話が日曜日の学会のシンポジウムで話された。シンポジウム「土壌としての哲学」での楠本亜紀さんの発表では、楠本さんが「犬てつ」での活動を始められたばかりのころから、子どもたちの参加者のその場での過ごし方をどれくらい縛るかをめぐって、「みんなってだれ?」という問いに何度も突き当たってきたということが話されたと思う。それも受けつつ、コメンテーターのほんまなほさんは最後に「みんな」とか「日本」とか大きな集合で語るのはやめて、いまここにいる人たちと哲学や対話をすること、それでいいじゃないか、と言っていた。私たちはけっこう「みんな」という言い方が好きで、それはそのほうが「誰も置いていかない」感じがするし、「インクルーシブ」だし、自分の背後に多数の人がいることをイメージさせるからかもしれない。でもそもそも、みんなで考えたい、のか、みんなで考えるべきだと思っているのか。「みんなで考えよう」。この誘い文句はどちらの意味にもとれて、すごく絶妙で、タイトルとしてはなんの捻りもないのだけど、そのストレートさにいつでも立ち返って自分たちのあり方を問い直すことを迫る。

結局子は39度台の熱があり、保育園を休む。妻に一日子の看病をしてもらい、私は出勤。月曜日からの授業準備や事務仕事を進めた。家に帰ると子はぼーっとテレビを見ている。時折、思い出したようにいつものテンションでブンブンジャーについて語ったりするけれど、それもあまり体力が続かないみたいで心配。明日からは妻のご両親が福岡に遊びに来ることになっている。ホテルや夕食の予約もあるなかで、子の回復を願いつつ、妻と回復具合によってプランA,B,Cくらいを考えた。私はいつも悪い方向に先回りして話をするから妻に嫌がられる。天気予報を見てすぐ「雨降るね」と言ってしまう。はたしてどのプランが採用されるのか、そして雨は降るのか。

結局、奇跡的に回復し、福岡行けました